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第2章 波乱含みの
2-27 聖剣の墓場
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ジニア聖教国、聖都にある大教会の奥深い地下。
そこには聖剣の墓場と呼ばれる領域がある。
場所自体は聖職者だけでなく信者にも広く知られている。
長年、神のために尽くしてきた聖剣を、使えなくなろうとも無闇に捨てることなどせず、供養する場所なのだと。
話はまったく違うのだが。
その真実はジニア聖教国でもごく一部の者しか知らない。
「また聖剣の数が増えたんじゃないのか?」
俺はため息を吐く。
「ああ、俺たちが世話する聖剣様の数は増える一方だ」
俺の言葉に返答したのは、この地下に住まう魔法鍛冶師。
聖剣を扱える魔法鍛冶師は数少ない。
教会は魔法鍛冶師の一族を外には出さない。永遠に外と接触させない。
生かさず、殺さず、聖剣の世話だけを続けさせる。
ジニア聖教国が聖剣のメンテナンスができる魔法鍛冶師を独占しているため、他国は一応ジニア聖教国の要望をある程度聞いてきたのであるが。
ここは地下ではあるが、魔法で拡張された空間でもある。
恐ろしくだだっ広い墓地のような風景だ。
広がる地面に無数の聖剣が突き刺さっており、魔法鍛冶師は一本一本メンテナンスを続ける。
毎日がその繰り返しだ。
「誰も使えない聖剣をメンテナンスし続けるなんて、馬鹿みたいじゃないのか?」
「いやー、メンテナンスしなければ聖剣様たちも怒るしー」
この土地に並ぶ聖剣は綺麗に磨かれ美しいものである。
それもそのはず、誰にも剣として使われなくなったからだ。
武器として使われないのなら綺麗なままにも見える。
が、それでも彼らは綺麗にしてもらいたいらしい。
この膨大な量の聖剣を毎日全部磨けというわけではない。
順番に一本ずつ丁寧に磨きあげ、綺麗にしていくのがここにいる魔法鍛冶師の役目。
聖剣をメンテナンスもせずに放置しているとどうなるか。
この大教会を吹っ飛ばすくらいの爆発はする。
それをさせないために、ジニア聖教国は遠い昔から魔法鍛冶師に聖剣を世話させているのである。
「聖騎士になりたい者がこの光景を見たら泣くんだろうな」
「、、、ある意味で、泣くんでしょうね」
俺がぽつりと言った言葉に、彼は手を動かしながら答えた。
そう、この世界では聖剣の数は本当に少ないと思われている。
聖騎士になれるのは聖剣を握れる者だけ。
ほんの一握り。
けれど、ここには山ほどの聖剣が存在しているのである。
「人に握られることを拒否した聖剣がこんなにもあるということを知ったら」
彼らは二度と人に握られることを拒んだ聖剣である。
そりゃ、当たり前だ。
自分が選んだ聖剣の所持者を利益や欲のためにバカバカ殺されたら、二度と人のために力を貸してやろうとなんて思わない。
そーんな聖剣を山ほど製造してしまったジニア聖教国。
この事実を隠しながら、これらの聖剣を表に出すことも嫌ったジニア聖教国は、表向きが供養の場を作ったわけである。
メンテナンスしている彼の手際は見事だ。
聖剣も、このままニートしてるー、快適ー、と言っている。
人に力を貸すより、ここでのんびりしている方が聖剣だって幸せである。
昔はここにいる魔法鍛冶師にとんでもない要求をする聖職者もいた。
表に出せるよう聖剣を説得しろ。
一年に十本以上、世に戻せ、と。
もしできないのなら、、、家族を人質にとられる例が多かったようだ。
その聖職者だけでなく、大教会自体が聖剣によって壊滅的な破壊をもたらされることになったが。
ま、ジニア聖教国は世間にはその聖職者の腐敗を神が怒ったからだと公表したが。
トカゲの尻尾切りである。
確かにその聖職者は腐敗していたのが、大きく腐敗しているのはもちろんその聖職者だけではない。
それでも、止まらないジニア聖教国の聖職者たち。
神の名を利用する者たち。
聖剣の墓場。
人に力を貸すことをやめた聖剣の行きつく先。
彼らは意外とお喋りだ。
彼らの声は聖剣を世話できる魔法鍛冶師と、聖騎士にしか聞こえないという。
魔法鍛冶師というのは魔剣を鍛えられる者のことを言うが、聖剣を扱える者はその中でもごく一部しかいない。
その魔法鍛冶師たちがこの地に縛られながらも多くのことを知っているのは聖剣がお喋りしているからだ。
外の知識を誰もこの地に入れていないはずなのに、と考えるのは聖剣と意志疎通できない聖職者たちだ。
ここには恐ろしいほどの知識が埋まっている。
人族が生まれたときより前に存在していた聖剣も多い。
聖剣は人が作ったものではない。
誰が作ったものなのか、それは永遠の謎なのである。
「しっかし、うるさいなあ。人同士の会話がしにくい」
「聖剣様たちも客人が珍しいからでしょう」
この地下に入るには警備が厳重だし、客など一人も入れたことはない。
俺はジニア聖教国にとっては招かざる客なのである。
聖剣たちは自分の話を聞けーと大歓迎のようであるが。
「ま、あまり変わりがなくて良かった」
「新しい聖剣様が来ると、けっこう変化はあるんですけどねえ」
うん、目に見える変化はないな。
聖剣たちは聖剣たちで勝手にやっておいてくれ。
俺は立ち上がる。
「もう行くんですか?」
「また来るよ」
「あっ、そうだ、叔父から次のお土産候補のお菓子メモを預かっていたんだった、、、はい」
ごそごそと丸めたゴミ、、、ではなくメモを渡された。
小さい切れ端に小さい文字でビッシリと書かれている。
この地では紙も自由にはできない。
「可能な範囲で手に入れて来るよ」
お土産がお菓子指定なのは、お菓子が消え物だからである。
もしものときは慌てて頬張れるお菓子が良いと言ったのは彼らだ。
証拠隠滅しやすいらしい。
教会が支給した以外の物を魔法鍛冶師が持っていたら問題だ。
外部との接触を疑われたら、ここの警備がより厳重になりかねない。
聖剣らも大声で喚いているが。
「聞こえなーい。お前らどれだけの数いると思っているんだっ」
お土産をそれぞれ買ったら俺が破産する。
どうしても欲しいなら、ジニア聖教国に貢いでもらえ。
「貴方も聖剣の声が聞こえるのなら、聖剣を振るえるでしょうに」
「俺は魔導士だから聖騎士にはなれないよ」
ここの聖剣がすべて動けば、軽く聖騎士の軍隊でも作れそうだ。
「聖魔導騎士とか」
聖剣たちが大賛成しているが。
何それー。ウケるー。
聖剣の墓場。
それは人間が作り出した罪の結果。
レインと出会う前のお話。
そこには聖剣の墓場と呼ばれる領域がある。
場所自体は聖職者だけでなく信者にも広く知られている。
長年、神のために尽くしてきた聖剣を、使えなくなろうとも無闇に捨てることなどせず、供養する場所なのだと。
話はまったく違うのだが。
その真実はジニア聖教国でもごく一部の者しか知らない。
「また聖剣の数が増えたんじゃないのか?」
俺はため息を吐く。
「ああ、俺たちが世話する聖剣様の数は増える一方だ」
俺の言葉に返答したのは、この地下に住まう魔法鍛冶師。
聖剣を扱える魔法鍛冶師は数少ない。
教会は魔法鍛冶師の一族を外には出さない。永遠に外と接触させない。
生かさず、殺さず、聖剣の世話だけを続けさせる。
ジニア聖教国が聖剣のメンテナンスができる魔法鍛冶師を独占しているため、他国は一応ジニア聖教国の要望をある程度聞いてきたのであるが。
ここは地下ではあるが、魔法で拡張された空間でもある。
恐ろしくだだっ広い墓地のような風景だ。
広がる地面に無数の聖剣が突き刺さっており、魔法鍛冶師は一本一本メンテナンスを続ける。
毎日がその繰り返しだ。
「誰も使えない聖剣をメンテナンスし続けるなんて、馬鹿みたいじゃないのか?」
「いやー、メンテナンスしなければ聖剣様たちも怒るしー」
この土地に並ぶ聖剣は綺麗に磨かれ美しいものである。
それもそのはず、誰にも剣として使われなくなったからだ。
武器として使われないのなら綺麗なままにも見える。
が、それでも彼らは綺麗にしてもらいたいらしい。
この膨大な量の聖剣を毎日全部磨けというわけではない。
順番に一本ずつ丁寧に磨きあげ、綺麗にしていくのがここにいる魔法鍛冶師の役目。
聖剣をメンテナンスもせずに放置しているとどうなるか。
この大教会を吹っ飛ばすくらいの爆発はする。
それをさせないために、ジニア聖教国は遠い昔から魔法鍛冶師に聖剣を世話させているのである。
「聖騎士になりたい者がこの光景を見たら泣くんだろうな」
「、、、ある意味で、泣くんでしょうね」
俺がぽつりと言った言葉に、彼は手を動かしながら答えた。
そう、この世界では聖剣の数は本当に少ないと思われている。
聖騎士になれるのは聖剣を握れる者だけ。
ほんの一握り。
けれど、ここには山ほどの聖剣が存在しているのである。
「人に握られることを拒否した聖剣がこんなにもあるということを知ったら」
彼らは二度と人に握られることを拒んだ聖剣である。
そりゃ、当たり前だ。
自分が選んだ聖剣の所持者を利益や欲のためにバカバカ殺されたら、二度と人のために力を貸してやろうとなんて思わない。
そーんな聖剣を山ほど製造してしまったジニア聖教国。
この事実を隠しながら、これらの聖剣を表に出すことも嫌ったジニア聖教国は、表向きが供養の場を作ったわけである。
メンテナンスしている彼の手際は見事だ。
聖剣も、このままニートしてるー、快適ー、と言っている。
人に力を貸すより、ここでのんびりしている方が聖剣だって幸せである。
昔はここにいる魔法鍛冶師にとんでもない要求をする聖職者もいた。
表に出せるよう聖剣を説得しろ。
一年に十本以上、世に戻せ、と。
もしできないのなら、、、家族を人質にとられる例が多かったようだ。
その聖職者だけでなく、大教会自体が聖剣によって壊滅的な破壊をもたらされることになったが。
ま、ジニア聖教国は世間にはその聖職者の腐敗を神が怒ったからだと公表したが。
トカゲの尻尾切りである。
確かにその聖職者は腐敗していたのが、大きく腐敗しているのはもちろんその聖職者だけではない。
それでも、止まらないジニア聖教国の聖職者たち。
神の名を利用する者たち。
聖剣の墓場。
人に力を貸すことをやめた聖剣の行きつく先。
彼らは意外とお喋りだ。
彼らの声は聖剣を世話できる魔法鍛冶師と、聖騎士にしか聞こえないという。
魔法鍛冶師というのは魔剣を鍛えられる者のことを言うが、聖剣を扱える者はその中でもごく一部しかいない。
その魔法鍛冶師たちがこの地に縛られながらも多くのことを知っているのは聖剣がお喋りしているからだ。
外の知識を誰もこの地に入れていないはずなのに、と考えるのは聖剣と意志疎通できない聖職者たちだ。
ここには恐ろしいほどの知識が埋まっている。
人族が生まれたときより前に存在していた聖剣も多い。
聖剣は人が作ったものではない。
誰が作ったものなのか、それは永遠の謎なのである。
「しっかし、うるさいなあ。人同士の会話がしにくい」
「聖剣様たちも客人が珍しいからでしょう」
この地下に入るには警備が厳重だし、客など一人も入れたことはない。
俺はジニア聖教国にとっては招かざる客なのである。
聖剣たちは自分の話を聞けーと大歓迎のようであるが。
「ま、あまり変わりがなくて良かった」
「新しい聖剣様が来ると、けっこう変化はあるんですけどねえ」
うん、目に見える変化はないな。
聖剣たちは聖剣たちで勝手にやっておいてくれ。
俺は立ち上がる。
「もう行くんですか?」
「また来るよ」
「あっ、そうだ、叔父から次のお土産候補のお菓子メモを預かっていたんだった、、、はい」
ごそごそと丸めたゴミ、、、ではなくメモを渡された。
小さい切れ端に小さい文字でビッシリと書かれている。
この地では紙も自由にはできない。
「可能な範囲で手に入れて来るよ」
お土産がお菓子指定なのは、お菓子が消え物だからである。
もしものときは慌てて頬張れるお菓子が良いと言ったのは彼らだ。
証拠隠滅しやすいらしい。
教会が支給した以外の物を魔法鍛冶師が持っていたら問題だ。
外部との接触を疑われたら、ここの警備がより厳重になりかねない。
聖剣らも大声で喚いているが。
「聞こえなーい。お前らどれだけの数いると思っているんだっ」
お土産をそれぞれ買ったら俺が破産する。
どうしても欲しいなら、ジニア聖教国に貢いでもらえ。
「貴方も聖剣の声が聞こえるのなら、聖剣を振るえるでしょうに」
「俺は魔導士だから聖騎士にはなれないよ」
ここの聖剣がすべて動けば、軽く聖騎士の軍隊でも作れそうだ。
「聖魔導騎士とか」
聖剣たちが大賛成しているが。
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レインと出会う前のお話。
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