キミという花びらを僕は摘む

さいはて旅行社

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第2章 波乱含みの

2-20 愛しい愛しい女王様 ◆ケチャ視点◆

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◆ケチャ視点◆

 のこのこやってきたティフィも魔王様らに連れて行かれた。
 私は戦力にはならないのにー、とそんな大声出せるんだーと思うほどの叫び声を残して。
 魔王様もティフィを一度はイベントに引っ張りまわしたかったらしい。
 毎晩、居酒屋でダベっているだけでは辛かろうと、気を使ったのだろうけど。
 ティフィには傍迷惑だったに違いない。

 客どころか店員もいない居酒屋。
 いつもの黒マントを羽織って、ズィーが居酒屋に来た。
 そのままストンと丸イスに座って、女王様談議をはじめてしまった。
 お前、この状況、目に入っているのか?と会話中に何度も尋ねたかったが、注文を取りに来ないのも関係なくお喋りするズィー。

 居酒屋に誰もいない状況は、さすがに目に入っていたようで良かった。

「ほい、女王様」

 テーブルにズィーのためのワイングラスを置いた。
 ものすごく嫌そうな顔をする。

 そして、店員が誰もいないので、俺がズィーの黒マントを剥ぎ取って、壁掛けにかけてやる。

「ケチャ、お前なあ、この黒いマント、そんなに似合ってないか?」

「お前の女王様なツラを隠されて何が嬉しいんだ?」

「女王様じゃないもーん」

「俺はお綺麗な顔を眺めていたいんだ」

「ティフィの方が綺麗じゃーん」

 ブー。
 ほっぺが膨らんだ。

 可愛いが、仕草が可愛すぎるが、、、ズィーはまだお酒一滴も飲んでいない。
 ちなみにいくら酒を飲ませてもザルである。
 せいぜい顔を赤らめる程度である。
 魔王様もコイツも酒には強すぎるのである。
 飲み比べなんかやった日には、俺の方が先に潰れる。
 魔王様とコイツの飲み比べの場合は、勝負の最中でもズィーが起きてしまうので勝負が続かない。不戦勝とは言わないところが魔王様の良いところ。


 するりとズィーの頬に触れる。
 手のひらで触れてから、手の甲で。

「おう、ウロコが冷たくて気持ちいいな」

 すぐに解放する予定だったのに。
 スリ、、、とズィーの頬が俺の手の甲を離さない。

「そういうことを無自覚でやるから女王様って言われるんだぞ」

「女王様は手酌しない」

 ズィーは自分のグラスにダバダバと俺の赤ワインを注ぐ。
 そして、グビグビと飲んだ。

「良いワインは優雅に飲め」

「俺、酒の良し悪しわからないもーん」

 女王様じゃなくて駄々っ子になった。

 それでも、愛おしい。
 酔っているわけではないズィーを背中から抱き締める。

「ケチャ、」

 振り返ろうとした顔をつかまえ、口づけする。
 濃厚なヤツを。
 舌を絡ませ合う。

 嫌なら魔法で吹き飛ばされているはずだが、抵抗の色がまったくない。
 ズィーはされるがままにキスされる。
 、、、一応酔っているのかな?
 それとも、ティフィの肉体にいると勘違いしているのか?

 それなら、まさしく好都合。

「ん、、、」

 広いとはいってもこの居酒屋には今、俺たち二人しかいない。
 ここにもズィーを狙っているヤツは多いが、実際に手を出そうとは思っていない。
 死にそうな目に自ら進んで遭いたいヤツなんて、ここにはそこまでいない。

 こんなにすんなりとカラダを許そうとするのは、ティフィのおかげか。
 いや、完全にティフィのせいだ。
 おそらく、今のズィーなら誰にだって許しそうだ。

 テーブルの上の空のグラスが転がり落ちる。
 ワインボトルもだ。
 都合が良い世界では、割れることはない。

 口づけを交わしたままズィーをテーブルの上に仰向けにさせる。
 押し倒したという表現の方が正しいか。

「あ、、、はぁ、、、ん」

 ズィーの服のなかに手を滑らせ愛撫する。
 敏感な部分をより重点的に攻める。
 ズィーのモノは俺の手で硬くなる。
 俺のモノももれなく硬くなる。

「ズィー、挿れていいか?」

「うん、、、」

 仰向けにしたのはズィーの表情を見たいから。
 後ろから攻めたら、ズィーの顔が見れない。この顔を赤らめ、喘ぐこの男を見ることができない。
 ズィーの服を脱がし、脚を広げさせる。
 居酒屋で全裸になる機会があるとは思っていなかった。
 全裸になっている連中はほどほどにいるが、俺は暑いときにせいぜい上半身までだ。
 竜人族は酒を飲むと全員が真っ裸になるというのは都市伝説だ。

 ズィーを抱く機会が訪れるとは思ってもみなかった。

「ん、、んんっ」

 ゆっくりと挿れるが、コレはズィーである。
 仮想現実なので本人の本物の肉体でもないが、すべての感情も感覚も連結されている。

 ズィーは瞼を閉じているが、眉間にシワが寄っている。
 異物感の方が大きいか。
 竜人族のモノは総じて人族よりも大きい。
 魔王様はきっともっと立派なモノをお持ちだろうが。
 今は俺のモノだけを感じてほしい。

「ゆっくり動くぞ」

「、、、あ、、激しくして」

 ゾクリとした。

 ズィーは薄く目を開け、再び閉じた。
 やや涙目の色っぽさが激情に拍車をかける。

 とめられるわけもない。

 俺は理性が完全に吹っ飛び、叫び声のような喘ぎを何度も何度もズィーが発した。




「無茶させた」

 テーブルの上でズィーを抱きしめている。
 お互い全裸のままで。

「いや、気持ち良かった。ケチャの肌も何もかも」

 と言って、ズィーが薄く笑い、指で俺の腕をなぞるのは反則ではないか。
 ウロコの感触を味わっているのはわかるが、再燃する。

 まるで新婚時のように歯止めがきかない。

 魔族は長寿の種族ほど性欲がなく、種族が絶滅する危惧を背負う。
 竜人族もほどほどに長寿だ。
 エルフ族と寿命は同等と言われている。
 個体差はそれぞれあるだろうが、竜人族は性欲が強いと言われている。
 ただ回数をしたところで子供は産まれにくい。
 どんなに番と愛し合っても、長い生涯で一人か二人、子供に恵まれれば良い方だ。

 竜人族の結婚は初日がお披露目の宴会であるが、その夜から夫婦となった二人は短くても三日三晩はヤり続ける。
 誰も若い二人を邪魔しない。
 そのくらい性欲が強いと思っていただきたい。
 一回や二回じゃ全然足りないのである。
 しかも、この街で多少イベントで女性との触れ合いの場を設けてもらっても、この人ではないという思いがより募ってしまうだけだった。

 抱きたいのは、ズィーになってしまっていた。

 跡を残したところで、彼自身のカラダには残らないというのに。
 恐ろしいほどの所有印をつけてしまった。
 首筋だけでなく、誰も見ないようなところまでありとあらゆるところに。

「かなり噛み跡のこしたな。食べられるかと思ったぞ」

「おいしく食べただろ」

 ズィーの肩口を甘噛みする。
 コイツのカラダは正規の三十八歳の肉体ではない。
 魔王をカラダに封印したズィーは、死なれると魔王や俺が解放されてしまうと考えたヤツらから秘術を施されてしまった。
 本人の意志とは関係なしに。

 土葬で本人の肉体を傷つけないように埋葬すれば問題がなかったようなのだが。
 というわけで、二十五歳あたりだろうか、秘術がかけられてしまった年齢が。
 ズィーが魔王を封印してから数年後のことだ。
 すでに俺も封印されていた。

 普通に四十路のカラダじゃないのに、四十路のフリをする。
 その年齢で、ズィーのようにかなりの日数を徹夜できるわけもないのに。
 魔法を使ってもカラダが限界になる。

「ああ、そうか。食べられたのか」

 ニマっと笑うコイツが可愛いと思うのだから、もう逃れられないのだ。
 ズィーが秘術を施されて良かったと思うほどに。
 生涯、共に過ごせることが幸せだと思えるほどに。

「なら、お前も俺も、酒を普通に飲みながら、このテーブルを見て思い出すんだ。今晩の食事を」

 そういうところが女王様なんだよ。

「ん、、、」

 ズィーの口を塞ぐ。
 もう一度、俺はズィーに覆い被さった。

「じゃあ、お前にもっと刻みつけないとな」

 忘れられない夜にするために。








 後日、勇者イベントから帰ってきた魔王様から殴られました。
 抜け駆けするなって。

 抜け駆けって、そういうわけでもないのだが。

 俺、ズィーに愛の告白を今までけっこうしていたんだけどなあ。
 魔王様、聞いてなかったの?
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