キミという花びらを僕は摘む

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第1章 突然の

1-21 爛れた関係

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 ティフィの爛れた男性関係を続けている。
 この肉体は抱かれると喜ぶ。歓喜する。

 ティフィになってまだ二週間しか経っていないのに、男にどれだけ抱かれたのか。
 レインが夜勤ではない日は、レインと毎晩交わった。

 レインはティフィとはそういう関係ではなかったが、中身が元に戻ったら今後どうなるだろう。


 そんなことに思いを馳せるのが不思議だ。
 トワイト魔法王国では魔法研究だけで日々が過ぎ去っていったのに。
 ティフィになってから、魔法研究はほぼ進んでない。
 悲しいほどに。
 このティフィの魔力量があれば、世界征服までできそうな気がするのに。しないけど。
 俺に魔力量があればやってみたかった魔法実験は山ほどあったのに。
 元に戻るまでの六か月の間に、やらなければ二度とできないのに。

 ただ、俺にとってはものすごく濃い二週間だった。
 いろいろと思い出しながら、作業を続ける。
 薬屋に客が来ないことは、病人や怪我人が出ていないことだから平和だと思うのだが、意外と日常業務がある。
 常備しておかなければならない薬は適度に作り置きしておかなければならないし、薬の材料も発注しておかなければならない。
 トワイト魔法王国と違うのは、この国ではすぐには手に入らないということだ。
 必要なときに薬の材料を手配したのでは遅すぎるのである。
 足りない材料は、魔法で効果を足せばいい、ということでもない。

 今は夏場だが、冬や来年のことを考えながら仕入する。
 乾燥している薬草等は消費期限も長い。そういうものは大量に出回っているときに購入しておくに限る。


 暑い昼間は病人も怪我人も出歩かない。
 看病や世話している人たちもである。自分たちが熱中症でやられる。

 たった二週間でどれだけ暑くなるんだ思うほど、暑くなってきた。
 夏本番はこれ以上暑くなるんだそうな。。。
 魔法が使えるようになって本当に良かった。使えなかったら、わりと涼しい薬屋でも俺はへたばっていたように思う。
 この暑さ、魔法なしでは生きられない。
 南国に憧れていたはずなのに、本当の南国では魔法なしでは生きられないことがわかる。
 若い頃はさらに南の国で暑さにもう少し耐えられていたような気がするのだが。。。

 あれ?
 コレってティフィ自身が暑いところが苦手なのか?
 いや、苦手ならまずこんな暑い国に来ないよな。
 まさか気合いだけで何とかしていたのか?
 そんなわけないと思うけど。


 常備薬の在庫を揃えた後、カウンターにあるカルテを整理する。
 気怠い時間。
 あくびをしそうになったところで。

 カランカラン、と扉が開いた。

「こんにち、、、」

 お客かと思って挨拶しようと、そこには黒髪黒目の見覚えのあるイケメンが立っていた。

「愛するティフィ、私は王子をやめてきた。今度こそ二人で幸せになろう」

「は?」

 カウンター越しに手を取られ、豪華な花束を渡された。

「あ、いや、その、ルアン・ジルノア第一王子殿下?」

「怒っているのか、ティフィ。他人行儀はやめてほしい。前と同じようにルアと呼んでくれ」

 優しい笑顔で語るのは、俺が呼んだ通りルアン・ジルノア第一王子その人だ。
 ジルノア王国はトワイト魔法王国のお隣の国である。

 というわけで、魔導士序列六位の俺は挨拶をしたことがある。
 、、、あ、俺か。ティフィではない。
 コレは俺の記憶だ。

 ルアン第一王子がティフィと知り合いだったとは。
 俺が会ったことがある人物と会うと、本当に微妙だなーと思う今日この頃。

 中身が違うってどう説明すればわかりやすいのか。


 しかも。
 俺の聞き間違いでなければ、恐ろしいことを聞いた。

 王子をやめてきた、と。

 ジルノア王国の第一王子は有望株である。
 魔法や剣に才能が有り、頭脳明晰、容姿端麗、天から二物三物を当たり前のように与えられた人物である。
 国王夫妻である両親から愛され、世間からも次期国王として期待されていた。

 ただ、婚約自体を先延ばしにしており、結婚してから王太子となり国王となるジルノア王国ではなかなかの晩婚と言われてしまう二十四歳となってしまった。
 ちなみにレインは二十三歳。この王子の一歳年下だね。
 どちらにしても、どちらも俺よりも若いってことだ。

 んで、ティフィの年齢というのは、、、この子はハーフエルフだ。
 見た目年齢ではないことをこの場では言っておこう。
 ついこの子って言っちゃったけど。
 精神年齢が若いんだよね。ティフィって。
 直接会ったことはないけどさあ。


 つまり、この将来有望な第一王子が、なぜ婚約自体を先延ばしにしていたのか。
 その理由がティフィなのか。

 おそらく、同性であるティフィが婚約者になることは国王夫妻が認めない。
 どんなに自由恋愛してもいいと言われていたとしても、王子の相手は異性で、子供を儲けねばならない。
 それが国王を継ぐということ。

 だから、王子をやめてきた、となるのか。
 ティフィと結ばれるためには。

 愛に生きる男だ。




 、、、でもさ。
 わざわざ中身がティフィじゃないときに、来ないでくれるかな?
 困るんだよ、反応に。
 どう説明するか。
 冷静になってくれれば、この王子に理解できないことではないはずだ。

「ルアン王子殿下、」

「ルアと呼んでくれ」

「申し訳ございませんが、それはできません。なぜなら、俺は」

 倒れてから記憶が曖昧で、という説明を続けようとしたのだが。
 カウンター越しにグイッと引き寄せられ、熱い口づけをされた。

「、、、あ、ル」

 言葉を紡ごうとしても塞がれる。
 舌をなぶられたり強く絡まれたり、思考が中断されそうになる。

 このまま流されたい気もするが。

「、、、聞いて、く、、、れ」

 息も絶え絶え訴える。
 このまま抱かれれば、頭を抱えるのはルアン王子の方だ。
 唇が解放された。
 ほんの少し。

「ティフィ、一人にしてすまなかった。記憶が怪しいということは街で聞いた。大丈夫だ、私が思い出させてやる」

 ええっと、魔法でも使う気ですかね?
 魔法を使っても、俺の記憶はあるので無駄だ。
 ティフィの記憶はこの肉体にあるが、俺が覗かないだけだ。
 赤裸々な男性関係なんて、他人に覗かれたら嫌だろう?
 嫌じゃない人がいれば、、、うん、見せるのが楽しいそういう性癖な人だけだ。

「そういうことではなく、、、」

 ルアン王子がさっと身を翻して、カウンターを飛び越えてきた。
 そして、また熱い口づけを繰り返す。
 今度はティフィの肉体を彼の腕が離さない。

 説明する口を塞がれたまま。
 彼は奥の休憩室に続く扉を開け、そのまま俺を連れ込む。

 思い出させてやるというのは、魔法とかではなく、確実にカラダを使って、ということである。
 毎晩抱かれていたのなら、嫌でも思い出すだろ、という強気な思考だ。

「や、やめ」

 抵抗虚しく、、、というより、深くまさぐられてティフィの肉体が感じないわけがない。
 ティフィのカラダはこの手を、この熱を知っている。
 身をよじり、肉体はより深くにその指を招き入れている。

「んっ、、、ふっ、、、」

 休憩室の壁に背中を押しつけられ、口を塞がれているのに、喘ぎが漏れる。

「愛している」

「、、、あっ、んっ」

 すでにズボンも下着も脱がされ、片脚を持ち上げられ、深くまで硬いものを挿れられる。
 強く、早く、何度も奥まで。

 お前はティフィを追ってきたのなら、中身もティフィ本人かどうか、きちんと確認しろよ。

 あまりにも気持ち良く触れられ、微かに残る思考を手放した。
 もう快楽を味わうことしか考えられなくなる。
 この行為が後で後味の悪い結末にしかならなくとも。

 口が塞がれなくても、もはや俺の口からは説明の言葉ではなく喘ぎ声しか溢れてこなかった。




 何度も何度も欲しがり、何度も何度も快楽を貪った。
 そして、彼はようやく一息つく。

 今、俺もルアン王子も休憩室で一糸まとわぬ姿だ。衣服はそこら辺に散らばっている。
 二人とも、お互いの体液まみれ。
 それでも、カラダを綺麗にする魔法を使う前に俺はイスに座る。

 ルアン王子もイスに座ろうとした、が。

「正座しろ」

「え?」

「俺はとめたよな。俺はティフィじゃない」

 俺は説明を省き、とりあえず結論を言った。
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