15年目のホンネ ~今も愛していると言えますか?~

深冬 芽以

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番外編*十五年目の煩悩

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「お母さん、痩せた?」

 週末、和葉が言った。

「え? そうかなぁ」と、柚葉が嬉しそうに頬に手を当てた。

「髪型が変わったから?」

「う~ん。普通に、なんかそんな気がする」

「そう? 後で体重計に乗ってみようっと」

 そんな他愛のない会話をする妻と娘が微笑ましい。

 家庭円満な証拠だ。

 二人から視線を逸らすと、息子と目が合った。

 やはり不機嫌で、すっくと立ちあがる。

「俺はっ! お母さん、変わってないと思う!」

 そう言うと、リビングを出て行った。

「なんだ、あれ……」

「いつまであんなん言ってんだろうねぇ」と、和葉がため息をつく。

「愛華が言ってたんだけどね? 愛華のママに赤ちゃんが出来てから、パパがママにべったりなんだって。で、嵐くんがお兄ちゃんに言ったみたい。親がベタベタしてんのが恥ずかしい、とか」

「それで、なんであんなん?」

「最近、お父さんとお母さんが仲良しだからじゃない?」

「えっ!? 変わんないよ? いつもと」

「お母さん、ずーっと楽しそうじゃん。お父さんも、お母さんばっかみてるし」

「ええっ!?」

 声を揃えて、俺と柚葉は顔を見合わせる。

 恥ずかしすぎる。

 年頃の娘にそこまで見られているとは。

「お父さん、帰って来るのも早いし」


 それは、残業を減らすように会社に言われたからだが。



「よくお母さんに触ってるし」



 いつ見られた!?



「お兄ちゃん、お母さんをお父さんに取られたみたいでふてくされてんでしょ? ほーんと、こっども~」

 言いたいことを言って、和葉も部屋に上がっていく。

 柚葉と顔を見合わせ、なんとなく気まずくて視線を逸らす。



 世の中の子供を持つ夫婦は……。



 誰かに聞きたいが誰にも聞けない問いに頭を悩ませながら、俺はため息をついた。


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