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【番外編2】甘いひと時
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「何回でも連れて来てやるよ」
彩もまんざらじゃなくなって、舌を入れてきた。
年甲斐もなく、と自分でも思う。
けれど、いくつになっても好きな女を抱き締めてキスをすれば、そりゃ勃ちもする。まして、風呂だ。
だが、冬の露天風呂で実行するほど見境なくもなく。
それは、彩も同じ。
けれど、キスはやめられない。
もう、どうにでもなれと彼女の胸に触れた時、ピロリロリンッ、とスマホが鳴った。
俺より先に反応したのは彩で、ザバッと湯から出ると、さっさと部屋に戻って行った。
彩って、結構容赦ないとこあるよなー。
暗闇に取り残された俺は、特大の白い息を吐いた。
明かりがついた部屋では、バスタオルを巻いただけの彩がスマホを耳に当てながら浴衣を着ようと奮闘している。
ふっと彼女と目が合い、逸らされた。
第六感。
俺は即座に湯を出た。
ビンゴ!
彩が慌てて俺から遠ざかる。
俺はパッと身体の水分を拭き取って、逃げる彩を追いかけた。浴衣の袖を通すのに悪戦苦闘している彼女に手を貸すと、気まずそうに俺を見た。
「えっ!? あ、ありがとうございます。……え、あ――」
千堂だな、とわかった。
「貸せ」
俺は彩の手からスマホを奪い取った。
「ちょ――!」
奪い返そうとする彩の身体からバスタオルを外す。彼女は無防備になった身体を隠そうと、浴衣に袖を通して帯を探した。
「いいとこなんだから、邪魔すんな」
『あ、溝口さん? やっぱり一緒にいたんだ』
やはり、千堂だった。
なんでタメ口なんだよ! と思った。
『ま、あれだけ言って引き下がったら、男じゃないですよね』
「はあ?」
『貸し、ですから』と、フフンと鼻を鳴らす勢いで言った。
ほくそ笑む千堂が目に浮かぶ。
「――んなモンねーよ」
『堀藤さんに聞いてください』
「はあ!?」
『あ、それから、堀藤さんは来週の金曜までで帰してください。再来週の月曜からは風間を行かせます』
「一か月じゃねーのかよ!」
『そんなに置いといたら、堀藤さんを妊娠させられそうなんで、ダメです』
今日はやけに上から話す。ムカつく。
『じゃ、そういうことで!』
なにやらテンションが高いまま、電話を切られた。
「なんだよ、あいつ!」
「え? 電話、終わったの?」と言いながら、彩が浴衣を差し出した。
彩はきちんと浴衣を着て、きっちり帯も締めていた。
俺はスマホを彩に返し、身震いした。焦るあまり、腰にタオルを巻いたままだった。
彩が浴衣を広げ、俺は袖を通した。
夫婦っぽくね? と思った。
いや、今はそんなことより――。
「貸し、ってなんだよ?」
「え?」
「つーか、お前あと一週間で帰んのかよ?」
「あ、うん」
「なんで――」
部屋のベルが鳴り、次いでノック。
「はい!」
俺はドアを開けた。夕食の時間なのはわかっていた。
ドアの前にはお膳を載せたワゴンと、和服の女性。
「お夕食をお持ち致しました」
彩もまんざらじゃなくなって、舌を入れてきた。
年甲斐もなく、と自分でも思う。
けれど、いくつになっても好きな女を抱き締めてキスをすれば、そりゃ勃ちもする。まして、風呂だ。
だが、冬の露天風呂で実行するほど見境なくもなく。
それは、彩も同じ。
けれど、キスはやめられない。
もう、どうにでもなれと彼女の胸に触れた時、ピロリロリンッ、とスマホが鳴った。
俺より先に反応したのは彩で、ザバッと湯から出ると、さっさと部屋に戻って行った。
彩って、結構容赦ないとこあるよなー。
暗闇に取り残された俺は、特大の白い息を吐いた。
明かりがついた部屋では、バスタオルを巻いただけの彩がスマホを耳に当てながら浴衣を着ようと奮闘している。
ふっと彼女と目が合い、逸らされた。
第六感。
俺は即座に湯を出た。
ビンゴ!
彩が慌てて俺から遠ざかる。
俺はパッと身体の水分を拭き取って、逃げる彩を追いかけた。浴衣の袖を通すのに悪戦苦闘している彼女に手を貸すと、気まずそうに俺を見た。
「えっ!? あ、ありがとうございます。……え、あ――」
千堂だな、とわかった。
「貸せ」
俺は彩の手からスマホを奪い取った。
「ちょ――!」
奪い返そうとする彩の身体からバスタオルを外す。彼女は無防備になった身体を隠そうと、浴衣に袖を通して帯を探した。
「いいとこなんだから、邪魔すんな」
『あ、溝口さん? やっぱり一緒にいたんだ』
やはり、千堂だった。
なんでタメ口なんだよ! と思った。
『ま、あれだけ言って引き下がったら、男じゃないですよね』
「はあ?」
『貸し、ですから』と、フフンと鼻を鳴らす勢いで言った。
ほくそ笑む千堂が目に浮かぶ。
「――んなモンねーよ」
『堀藤さんに聞いてください』
「はあ!?」
『あ、それから、堀藤さんは来週の金曜までで帰してください。再来週の月曜からは風間を行かせます』
「一か月じゃねーのかよ!」
『そんなに置いといたら、堀藤さんを妊娠させられそうなんで、ダメです』
今日はやけに上から話す。ムカつく。
『じゃ、そういうことで!』
なにやらテンションが高いまま、電話を切られた。
「なんだよ、あいつ!」
「え? 電話、終わったの?」と言いながら、彩が浴衣を差し出した。
彩はきちんと浴衣を着て、きっちり帯も締めていた。
俺はスマホを彩に返し、身震いした。焦るあまり、腰にタオルを巻いたままだった。
彩が浴衣を広げ、俺は袖を通した。
夫婦っぽくね? と思った。
いや、今はそんなことより――。
「貸し、ってなんだよ?」
「え?」
「つーか、お前あと一週間で帰んのかよ?」
「あ、うん」
「なんで――」
部屋のベルが鳴り、次いでノック。
「はい!」
俺はドアを開けた。夕食の時間なのはわかっていた。
ドアの前にはお膳を載せたワゴンと、和服の女性。
「お夕食をお持ち致しました」
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