最後の男

深冬 芽以

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7 彼女の素顔

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「もう、無理!」

 彩が涙目で言った。

 俺を追い出そうと、手足をバタつかせる。

「なんで? 気持ち良くないのかよ」

「そういう問題じゃない!」

 昨日、ラブホテルで初めて彩を抱いてからの三十時間余りで、もう何度抱いたかわからない。

 セックスを覚えたての高校生ガキのように、盛りのついた犬猫のように、飯を食う以外はベッドで過ごした。

 自分の精力に驚いていた。

 他の女とのセックスとの違いにも。

 俺は拒む彩の両手に自分の指を絡ませ、ベッドに押し付けた。

 キスをして、ゆっくりと彼女を揺さぶる。

「んんんっ――!」

 彼女の身体は、感じている。

 しっとりと濡れた膣内なかは、言葉とは裏腹に俺を温かく包み込んでくれている。

 スローセックスなんて柄じゃないと思っていた。

 少し激しいくらいが女も喜ぶと思っていたし、実際今まではそうだった。

 けれど、彩は違う。

 最初は身体を気遣ってゆっくりとしていたけれど、次第に、それがクセになった。

 ゆっくりすればするほど、神経が快感に集中して、危うくイキかける。

 限界まで我慢して、しきれなくなって達した瞬間ときの良さは言葉に出来ない。

 彩がイッた刺激で導かれるのなら、それはまた格別。

 それから、もう一つ。

「いい加減、呼べよ」と、俺は動きを止めて言った。

「……」

「意外と頑固だな。呼ぶまでこのままだぞ」

 何度も言っているのに、彩はなかなか俺の名前を呼ばない。

「会社で……間違えたら困るでしょう」

「俺は別に困らないけど?」

「私は困る!」

「そんなに気になるか?」

「本物の……恋人じゃないんだから……」

「じゃあ、本物の恋人になるか? どうせ、お前の家族にはそう思われてるんだろう?」

 昨日の、彩と妹の電話での会話は、狭くて静かな車内では筒抜けだった。元気な兄弟の声も。

「やってることは恋人そのものなんだから、別に問題ないだろう?」

「大アリでしょ」

 勢いよく押し飛ばされて、彼女と身体が離れた。そのままの勢いで、今度は彼女が俺に跨った。

「彩?」

 温かな彼女の膣内なかから追い出されて寒くなったモノが、再び彼女の膣内なかに引き寄せられる。

 ゆっくりと。深く。

「ん……」

 彩は快感に背筋を伸ばした。胸が突き出されて、触って欲しそうに見えた。

 俺は手を伸ばし、彼女の胸を掌で包み込むように揉み上げた。

 垂れているから、と起き上がっては見せようとしなかったけれど、そこまで気にするほどではないと思った。

 若くて出産経験がなくても、垂れている女はいる。垂れるほど大きくない女も。

 彩の胸は柔らかくて、乳首も舐めやすくて、俺は好きだ。

「は……、あっ――」

 彩がゆっくりと腰を揺らし始め、自分のイイトコロを探すように押し付ける。その動きが、いちいち俺のイイトコロを刺激する。

 これまで、セックスで女に主導権を渡したことはない。

 女を悦ばせている、という陶酔感。それは、男なら誰もが感じるもので、必要な感情。

 けれど、彩とのセックスは違う。

 最初から。

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