最後の男

深冬 芽以

文字の大きさ
上 下
50 / 212
7 彼女の素顔

しおりを挟む

 彩はぐったりとベッドに身体を預け、呼吸を整えようとするが、なかなか身体に酸素を取り込めない様子。

 俺が枕元のコンドームに手を伸ばすのにも気づかない。着けるのにも。

 彼女の足の間に蹲り、抵抗される前に顔を埋めた。

「なにっ――! や――!! やめて!」

「で? どうする?」

「なに――がっ……」

「晩飯」

「あ……、ああ……――」

 恥ずかしいなどと考える余裕がなくなるまで、感じさせたかった。

 我慢なんてするだけ無駄だとわかるまで、喘がせたかった。



 他の何も見えなくなるほど、俺を求めさせたい――。



「やめ……て……」

「喋ってたいんだろ?」

「そう……だけどっ――! ソコで喋らないで!」

「ワガママだな」

「そん……なっ――!!」

 言葉とは裏腹に、身体は快感に従順。イキ慣れた身体に、わずかな理性などないも同然で、彩が酸素を求めて口を開くたび、甘く甲高い声が漏れる。

「もうっ――! む……りぃ……」

 彩の身体が大きく跳ね、ベッドが軋む。

 顔を上げて、彼女の太腿を持ち上げ、待たされ続けて今にもはち切れそうなモノを、赤く濡れた入り口に押し当てた。

 指二本分ではまだ狭い。

 けれど、もう、我慢できない。

「力抜け」

「え……?」

 ゆっくりと押し込むと、彼女が下唇を噛んだ。

 切れる、と思った。

 キスしようと身を乗り出すと、彼女の熱を感じた。あまりの熱さに、奥に届く前にイキそうだ。

「ん……」

 彩の腕が俺の首に絡まり、強く引き寄せる。

「ひと思いにっ――やって!」

「は……?」

「大丈夫だから!」

 必死に俺にしがみつく彩の言葉に、思わず笑いがこみ上げる。

「くくく……」

「……?」

「ひと思いって……。雰囲気も何もねーな」

「だって!」

「お前、格好良すぎだろ」

「そんなこと――――っ!!」

 グンッと最奥まで一気に突き上げる。彩はその衝撃に声すら出せずに、目を見開いた。

 思わず目を閉じたのは、俺。

 熱く、キツく、柔らかく包まれて、身震いするほどの快感。

 むやみに動けば、すぐにイキそうだ。

 俺はゆっくりと息を吐き、目を開けた。

 彩と視線が交わる。

「大丈夫か?」

「ん……」

 ゆっくりと腰を引き、ゆっくりと突き上げ、ゆっくりと腰を引く。

 ヤバイ、と思った。



 やみつきになりそうだ――。



「痛くないか?」

「だいじょ……ぶ……」

「気持ちいいか?」

「聞かな……ぃで……」

 俺の方こそ、喋ってないとイキそうだ。

 こんな、ゆっくり、じっくりなんて、したことない。

 擦れる度に、彩が息を漏らす。

「彩……?」

「ん……」

「感想は?」

「え……?」

「元夫が『最後の男』でなくなった感想は?」

 彼女の最奥で動きを止めた。

 イク前に聞いておきたかった。

 彩は少し驚いた顔をして、それから笑った。

「サイコー」

 後はもう、イクまでのわずかな時間、夢中で腰を振った。

 喘ぐ彼女を見下ろしながら、ふと思った。



 彼女は『最後の男』に誰を選ぶのだろう。



 俺は最初でも、最後でもないかもしれない。



『途中の男』なんて、一番半端だな――。



 そう思うと、無性に腹が立った。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

イケメンエリート軍団の籠の中

便葉
恋愛
国内有数の豪華複合オフィスビルの27階にある IT関連会社“EARTHonCIRCLE”略して“EOC” 謎多き噂の飛び交う外資系一流企業 日本内外のイケメンエリートが 集まる男のみの会社 唯一の女子、受付兼秘書係が定年退職となり 女子社員募集要項がネットを賑わした 1名の採用に300人以上が殺到する 松村舞衣(24歳) 友達につき合って応募しただけなのに 何故かその超難関を突破する 凪さん、映司さん、謙人さん、 トオルさん、ジャスティン イケメンでエリートで華麗なる超一流の人々 でも、なんか、なんだか、息苦しい~~ イケメンエリート軍団の鳥かごの中に 私、飼われてしまったみたい… 「俺がお前に極上の恋愛を教えてやる 他の奴とか? そんなの無視すればいいんだよ」

【R18】鬼上司は今日も私に甘くない

白波瀬 綾音
恋愛
見た目も中身も怖くて、仕事にストイックなハイスペ上司、高濱暁人(35)の右腕として働く私、鈴木梨沙(28)。接待で終電を逃した日から秘密の関係が始まる───。 逆ハーレムのチームで刺激的な日々を過ごすオフィスラブストーリー 法人営業部メンバー 鈴木梨沙:28歳 高濱暁人:35歳、法人営業部部長 相良くん:25歳、唯一の年下くん 久野さん:29歳、一個上の優しい先輩 藍沢さん:31歳、チーフ 武田さん:36歳、課長 加藤さん:30歳、法人営業部事務

ミックスド★バス~家のお風呂なら誰にも迷惑をかけずにイチャイチャ?~

taki
恋愛
【R18】恋人同士となった入浴剤開発者の温子と営業部の水川。 お互いの部屋のお風呂で、人目も気にせず……♥ えっちめシーンの話には♥マークを付けています。 ミックスド★バスの第5弾です。

イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?

すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。 翔馬「俺、チャーハン。」 宏斗「俺もー。」 航平「俺、から揚げつけてー。」 優弥「俺はスープ付き。」 みんなガタイがよく、男前。 ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」 慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。 終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。 ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」 保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。 私は子供と一緒に・・・暮らしてる。 ーーーーーーーーーーーーーーーー 翔馬「おいおい嘘だろ?」 宏斗「子供・・・いたんだ・・。」 航平「いくつん時の子だよ・・・・。」 優弥「マジか・・・。」 消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。 太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。 「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」 「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」 ※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。 ※感想やコメントは受け付けることができません。 メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。 楽しんでいただけたら嬉しく思います。

地味系秘書と氷の副社長は今日も仲良くバトルしてます!

めーぷる
恋愛
 見た目はどこにでもいそうな地味系女子の小鳥風音(おどりかざね)が、ようやく就職した会社で何故か社長秘書に大抜擢されてしまう。  秘書検定も持っていない自分がどうしてそんなことに……。  呼び出された社長室では、明るいイケメンチャラ男な御曹司の社長と、ニコリともしない銀縁眼鏡の副社長が風音を待ち構えていた――  地味系女子が色々巻き込まれながら、イケメンと美形とぶつかって仲良くなっていく王道ラブコメなお話になっていく予定です。  ちょっとだけ三角関係もあるかも? ・表紙はかんたん表紙メーカーで作成しています。 ・毎日11時に投稿予定です。 ・勢いで書いてます。誤字脱字等チェックしてますが、不備があるかもしれません。 ・公開済のお話も加筆訂正する場合があります。

友情結婚してみたら溺愛されてる件

鳴宮鶉子
恋愛
幼馴染で元カレの彼と友情結婚したら、溺愛されてる?

同居離婚はじめました

仲村來夢
恋愛
大好きだった夫の優斗と離婚した。それなのに、世間体を保つためにあたし達はまだ一緒にいる。このことは、親にさえ内緒。 なりゆきで一夜を過ごした職場の後輩の佐伯悠登に「離婚して俺と再婚してくれ」と猛アタックされて…!? 二人の「ゆうと」に悩まされ、更に職場のイケメン上司にも迫られてしまった未央の恋の行方は… 性描写はありますが、R指定を付けるほど多くはありません。性描写があるところは※を付けています。

腹黒上司が実は激甘だった件について。

あさの紅茶
恋愛
私の上司、坪内さん。 彼はヤバいです。 サラサラヘアに甘いマスクで笑った顔はまさに王子様。 まわりからキャーキャー言われてるけど、仕事中の彼は腹黒悪魔だよ。 本当に厳しいんだから。 ことごとく女子を振って泣かせてきたくせに、ここにきて何故か私のことを好きだと言う。 マジで? 意味不明なんだけど。 めっちゃ意地悪なのに、かいま見える優しさにいつしか胸がぎゅっとなってしまうようになった。 素直に甘えたいとさえ思った。 だけど、私はその想いに応えられないよ。 どうしたらいいかわからない…。 ********** この作品は、他のサイトにも掲載しています。

処理中です...