最後の男

深冬 芽以

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7 彼女の素顔

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 胸から口を離し、彼女と目線を合わせた。同時に、痛いほど硬くなったモノを、彼女の太腿に押し当てた。

「コレで良ければ」

 彼女の意識が自分の中の指から、太腿に当たるモノへと移る。気が逸れて、指の締め付けが緩くなる。

「何を心配してんだか知らないけど、こっちは早くれたいのを我慢してんだから、集中しろ」

 指の関節を軽く曲げて、反応を見る。

 少しだけ目を細めたが、さほど痛そうではなかった。

 少し力を入れてみる。

「痛いか?」

「ど……して……」

「ん?」

「こんなこと……」

「いいから集中――」

「どうしていいかわからないから!」

 相当テンパっている。

 頭で考えることではないけれど、今はそう言っても素直に感じられないだろう。

「今まで、女と一緒にいて楽しいなんて思ったことなかったんだよな」

「……え?」

「けど、あんたと話すの、楽しいんだよ」

「んっ――!」

 膣壁を撫でると、指の滑りがよくなり、同時にキュッと締め付けられる。

「あんたは?」

「……え……?」

「どうして俺とこうしてる?」

 しまった、と思った。

 自分でも何を期待しているのか、わからない。わからないけれど、聞かなければ良かったと思った。

 彼女が答えを口にするより前に、キスで防ぐ。

 セックスの最中、こんなにキスをしたことがあったかな、と思った。

 セックスは好きだが、キスや前戯はあくまで女をその気にさせるための必要事項で、俺の目的はその後の挿入。だから、したくてする、というよりは、しなければならないからする。

 女の感じる姿を見れば興奮するし、満足感もあるけれど、それは男ならば誰もが抱く優越感。

 今もそうだ。

 彩の恥じらう仕草や、漏らす声、柔らかな肌には興奮する。初めての絶頂に導けたのも、俺の指の動きに身体を熱くする姿には満足もする。

 けれど、同時に怖くもなる。



 元夫が『最後の男』でなくなったら、俺は用済みじゃないのだろうか……?



「なんか……喋って」

「ん?」

「黙ってられると落ち着かないから」

「……」



 セックスしながら、何を話せと……?



「何でもいいから!」

「いや、集中しろよ」

「やだ!」



『やだ』って……。



 なんだか可愛いな、と思った。

「晩飯、何食う?」

「は?」

「運動の後だから、がっつり焼肉でも食うか?」と言いながら、胸に口づける。

「夜に備えて、でもいいけど」

「なに――っ!!」

 彼女が動揺した隙に、指を増やす。ぎゅうっと締め付けられる。

「何回シたら、慣れるかな」

「――っ!!」

「ほら、喋るんだろ?」

「もう……っ、いいから――」

「何が?」

「指っ――」

 彩の呼吸が浅く、早くなる。二本の指を交互に曲げると、仰け反り、全身に力が入る。
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