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7.元上司が恋人になりました
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ぐっと圧迫され、ほぐされているとはいえ久しぶりでその感覚を忘れかけていた入口は、こじ開けられているかのように軋む。
痛いはずの場所からじわじわとせり上がってくる痺れに交るわずかなくすぐったさに、思わず身を捩った。
「夏依?」
逃げ腰だと思ったのか、彼の侵入が停止する。
「大丈夫か?」
そっと私の頬を撫でるその困り顔は、鬼と呼ぶにはあまりに可愛くて、ついその手に頬擦りしてしまった。
「痛いか? 自分でも引くくらい興奮してるのがわかるんだけど」
私に、私の身体に、興奮し、欲情してくれている。
それが嬉しくてつい口元が緩んだ。
それを見た篠井さんもまた、微笑む。
細い目がさらに細くなる。
大きく開いた足の先で彼の太ももを撫でると、それに反応したように勢いよく硬い熱が私の最奥を目指す。
「~~~っ!」
ぐんっと突き上げられて、私の背が弓形になり、苦しさに呼吸を忘れた。
「ヤバ……い」
篠井さんが私の胸に顔を埋め、苦しそうに呻く。
両腕でしっかりと肩を抱かれ、ぐりぐりと腰を押し付けられては、身動き一つできない。
彼の熱が自分の膣内で脈打つのを感じ、じわりと蜜が溢れた。
「痛いか?」
押し広げられているのはわかるが、痛みではない。
むしろ、じっと留まっているだけの時間に、気持ちが急く。
「うご……いて」
遠慮なんてしないでほしい。
篠井さんが気持ち良くなってくれたら、嬉しい。
私だって絶対、気持ちいい。
「ゆっくり……するから――」
「――どうして?」
「~~~っ!」
篠井さんが顔を上げて、私をじっと見下ろす。
「激しくしてほしいってことか?」
「――っ! そうじゃ――」
私を気遣って我慢してほしくなかっただけ。
決して、めちゃくちゃに激しく揺さぶられたいなんて思ったわけじゃない。
けれど、篠井さんは企画の予算をもぎ取った時のように勝ち誇った笑みで、私にキスをした。
「安心しろ。すぐに終わりそうだからな?」
どうして疑問形?
ずるりと下腹部を圧迫していた熱が引き抜かれ、あれ? と思うより早くぐぐっとまた奥まで挿し込まれる。
「は……っあ」
まるで違う場所を塞がれているのに、それがまるで気道かのように息が詰まる。
いちいち奥の奥まで挿し込まれ、読んで字の如く息つく間がない。
「ま――」
「――夏依っ!」
強く抱きしめられたまま、耳元で縋るように名前を呼ばれ、激しく腰を打ちつけられる。
息をするのも喘ぐのもままならないほど、私はただ彼にしがみつくので精一杯。
激しさを増し、それに伴って私の腰の位置が高くなり、足に力が入らなくなっていく。
腰を打ちつけられる弾みで膝が曲がるものの、それだけだ。
私の異変に気付いてくれたのか、篠井さんの動きがピタリと止まった。
ホッとしてゆっくりと呼吸を再開するも、彼の唇にそれを阻まれてしまう。
「んむっ――」
私の肩を抱いていた彼の手が解かれ、少しだけゆっくり呼吸する時間が欲しいと訴えようと、篠井さんの肩を押してみる。
が、びくともしない。
それどころか、彼の手が私の膝裏に副えられ、強制的に持ち上げられた。
「悪い。ちょっと激しくする」
え!? これ以上?!
既に疲労困憊だ。
だが、さすが鬼篠。
仕事は迅速かつ正確に、の手本となるべき私の元上司は、まさに迅速に疑う余地のない正確さで、私のイイトコロを激しく刺激し始めた。
そうなると、もう止められない。
止めるすべもない。
私は意味のある言葉を発することはおろか、人間の言語とも思えぬ、そう獣の唸り声のように喉を鳴らすことしかできなくなった。
女は、本当に最高に限界まで感じると、声帯に支障をきたすと知った夜だった。
痛いはずの場所からじわじわとせり上がってくる痺れに交るわずかなくすぐったさに、思わず身を捩った。
「夏依?」
逃げ腰だと思ったのか、彼の侵入が停止する。
「大丈夫か?」
そっと私の頬を撫でるその困り顔は、鬼と呼ぶにはあまりに可愛くて、ついその手に頬擦りしてしまった。
「痛いか? 自分でも引くくらい興奮してるのがわかるんだけど」
私に、私の身体に、興奮し、欲情してくれている。
それが嬉しくてつい口元が緩んだ。
それを見た篠井さんもまた、微笑む。
細い目がさらに細くなる。
大きく開いた足の先で彼の太ももを撫でると、それに反応したように勢いよく硬い熱が私の最奥を目指す。
「~~~っ!」
ぐんっと突き上げられて、私の背が弓形になり、苦しさに呼吸を忘れた。
「ヤバ……い」
篠井さんが私の胸に顔を埋め、苦しそうに呻く。
両腕でしっかりと肩を抱かれ、ぐりぐりと腰を押し付けられては、身動き一つできない。
彼の熱が自分の膣内で脈打つのを感じ、じわりと蜜が溢れた。
「痛いか?」
押し広げられているのはわかるが、痛みではない。
むしろ、じっと留まっているだけの時間に、気持ちが急く。
「うご……いて」
遠慮なんてしないでほしい。
篠井さんが気持ち良くなってくれたら、嬉しい。
私だって絶対、気持ちいい。
「ゆっくり……するから――」
「――どうして?」
「~~~っ!」
篠井さんが顔を上げて、私をじっと見下ろす。
「激しくしてほしいってことか?」
「――っ! そうじゃ――」
私を気遣って我慢してほしくなかっただけ。
決して、めちゃくちゃに激しく揺さぶられたいなんて思ったわけじゃない。
けれど、篠井さんは企画の予算をもぎ取った時のように勝ち誇った笑みで、私にキスをした。
「安心しろ。すぐに終わりそうだからな?」
どうして疑問形?
ずるりと下腹部を圧迫していた熱が引き抜かれ、あれ? と思うより早くぐぐっとまた奥まで挿し込まれる。
「は……っあ」
まるで違う場所を塞がれているのに、それがまるで気道かのように息が詰まる。
いちいち奥の奥まで挿し込まれ、読んで字の如く息つく間がない。
「ま――」
「――夏依っ!」
強く抱きしめられたまま、耳元で縋るように名前を呼ばれ、激しく腰を打ちつけられる。
息をするのも喘ぐのもままならないほど、私はただ彼にしがみつくので精一杯。
激しさを増し、それに伴って私の腰の位置が高くなり、足に力が入らなくなっていく。
腰を打ちつけられる弾みで膝が曲がるものの、それだけだ。
私の異変に気付いてくれたのか、篠井さんの動きがピタリと止まった。
ホッとしてゆっくりと呼吸を再開するも、彼の唇にそれを阻まれてしまう。
「んむっ――」
私の肩を抱いていた彼の手が解かれ、少しだけゆっくり呼吸する時間が欲しいと訴えようと、篠井さんの肩を押してみる。
が、びくともしない。
それどころか、彼の手が私の膝裏に副えられ、強制的に持ち上げられた。
「悪い。ちょっと激しくする」
え!? これ以上?!
既に疲労困憊だ。
だが、さすが鬼篠。
仕事は迅速かつ正確に、の手本となるべき私の元上司は、まさに迅速に疑う余地のない正確さで、私のイイトコロを激しく刺激し始めた。
そうなると、もう止められない。
止めるすべもない。
私は意味のある言葉を発することはおろか、人間の言語とも思えぬ、そう獣の唸り声のように喉を鳴らすことしかできなくなった。
女は、本当に最高に限界まで感じると、声帯に支障をきたすと知った夜だった。
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