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7.元上司が恋人になりました
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「ヤバイな。お前にねだられるなんて、挿入なくてもイキそうだ」
涙で何も見えないながらに目を開けると、すぐ間近に篠井さんの顔があった。
目が開いているかはわからないけれど、眉をひそめて笑っている。
その顔が離れていき、胸の上の手も、膣内の指も離れ、私はようやくゆっくりと呼吸できた。
汗でベタベタの手で涙を拭う。
はぁはぁと肩や胸を上下させながら浅く速い呼吸を繰り返す。
「大丈夫か?」
彼が何をしているのかは見えないが、恐らくコンドームを着けているのだろう。
いつも持っているのかなとか、元カノとするために買ったものかなとか、ぐるぐる考えたらまた涙が出てきた。
「夏依!? ホントに大丈夫か? 辛いなら――」
「――っ!」
ぶんぶん首を振る。
「じゃあ、どうした?」
篠井さんの手が私の涙を拭う。
「コンドームっていつも持ってるものですか?」
「え?」
いざ挿入って時に、なんとも面倒くさいことを聞いた自覚はある。
この状況でそんなこと聞くなよ、と私が男でも思うはず。
いつ、誰のために用意したものかなんてどうでもいいだろ、と。
でも気になった。
あの夜、元カノの浮気現場を見た時から持っていたものかなと。
あの夜、元カノが浮気してなければ元カノのために使うはずのものだったのかなと。
私、こんなに面倒くさい女だったんだ――。
「買って置いといたのだけど……。どうかしたか?」
「え?」
「あ~~~……。なんか、狙ってましたって感じで気持ち悪いよな」
「狙って――?」
「ん? 夏依、なにが聞きたいんだ?」
私の反応が思っていたのと違ったらしく、篠井さんが不思議そうに私の顔を覗き込む。
「そのゴム、元カノ用だったのかな……って思っ――」
「――そういうことか! 違う違う。これはおでん食った次の日に買ったやつ」
「え?」
篠井さんがホッとしたように笑うと、私の肩と腰を抱き起こした。
力が入らなくて、私はなされるがままに彼の足の上に座り、くたりと身体を彼に預けた。
「あの日、お前との電話で男の声が聞こえたからさ? なんか……焦って? いや、願掛け? に買っておいた」
篠井さんの大きな手が私の髪を梳く。
「一緒に暮らし始めてすぐに、お前に惚れそうな気はしたんだ。でも、しばらく女はいらないって言った手前、な?」
篠井さんの肩に頭を預け、その頭を撫でられていたら、自然と瞼が重くなる。
「けど、あの電話でそんなこといってらんねーなと……。夏依?」
ヤバい、寝そうだ。
ここまでシて寝落ちなんて、あり得ない。
それはさすがに私でもわかる。
「挿れて……」
「がっつきすぎたか……」
耳元で篠井さんがため息交じりに言った。
その声は、怒ってるとか呆れてるとかじゃなく、なんだか楽しそうで、少しだけホッとした。
明日は、もっと早く挿れてもらわなきゃ……。
そう思って完全に瞼を閉じた時、ピロピロピロッと甲高い電子音が鳴り響いた。
さすがに、ハッと目を開ける。
「なに!?」
「あ、俺のだ」
「あ、電話? でも――」
こんな時間に?
暗くて時計は見えないが、体感では日が変わる少し前。
そして、篠井さんは電話を取ろうとしない。
あ、暗いから――。
「篠井さん。電気――」
「――いや、いい」
「え?」
「それより、挿れていいか?」
「あ――」
答えるより先に、私の身体は抱きしめられたまま背を布団に押し付けられた。
彼に跨っていた私の足は大きく開かれ、蜜口には硬い熱が押し当てられている。
「篠井さ――」
涙で何も見えないながらに目を開けると、すぐ間近に篠井さんの顔があった。
目が開いているかはわからないけれど、眉をひそめて笑っている。
その顔が離れていき、胸の上の手も、膣内の指も離れ、私はようやくゆっくりと呼吸できた。
汗でベタベタの手で涙を拭う。
はぁはぁと肩や胸を上下させながら浅く速い呼吸を繰り返す。
「大丈夫か?」
彼が何をしているのかは見えないが、恐らくコンドームを着けているのだろう。
いつも持っているのかなとか、元カノとするために買ったものかなとか、ぐるぐる考えたらまた涙が出てきた。
「夏依!? ホントに大丈夫か? 辛いなら――」
「――っ!」
ぶんぶん首を振る。
「じゃあ、どうした?」
篠井さんの手が私の涙を拭う。
「コンドームっていつも持ってるものですか?」
「え?」
いざ挿入って時に、なんとも面倒くさいことを聞いた自覚はある。
この状況でそんなこと聞くなよ、と私が男でも思うはず。
いつ、誰のために用意したものかなんてどうでもいいだろ、と。
でも気になった。
あの夜、元カノの浮気現場を見た時から持っていたものかなと。
あの夜、元カノが浮気してなければ元カノのために使うはずのものだったのかなと。
私、こんなに面倒くさい女だったんだ――。
「買って置いといたのだけど……。どうかしたか?」
「え?」
「あ~~~……。なんか、狙ってましたって感じで気持ち悪いよな」
「狙って――?」
「ん? 夏依、なにが聞きたいんだ?」
私の反応が思っていたのと違ったらしく、篠井さんが不思議そうに私の顔を覗き込む。
「そのゴム、元カノ用だったのかな……って思っ――」
「――そういうことか! 違う違う。これはおでん食った次の日に買ったやつ」
「え?」
篠井さんがホッとしたように笑うと、私の肩と腰を抱き起こした。
力が入らなくて、私はなされるがままに彼の足の上に座り、くたりと身体を彼に預けた。
「あの日、お前との電話で男の声が聞こえたからさ? なんか……焦って? いや、願掛け? に買っておいた」
篠井さんの大きな手が私の髪を梳く。
「一緒に暮らし始めてすぐに、お前に惚れそうな気はしたんだ。でも、しばらく女はいらないって言った手前、な?」
篠井さんの肩に頭を預け、その頭を撫でられていたら、自然と瞼が重くなる。
「けど、あの電話でそんなこといってらんねーなと……。夏依?」
ヤバい、寝そうだ。
ここまでシて寝落ちなんて、あり得ない。
それはさすがに私でもわかる。
「挿れて……」
「がっつきすぎたか……」
耳元で篠井さんがため息交じりに言った。
その声は、怒ってるとか呆れてるとかじゃなく、なんだか楽しそうで、少しだけホッとした。
明日は、もっと早く挿れてもらわなきゃ……。
そう思って完全に瞼を閉じた時、ピロピロピロッと甲高い電子音が鳴り響いた。
さすがに、ハッと目を開ける。
「なに!?」
「あ、俺のだ」
「あ、電話? でも――」
こんな時間に?
暗くて時計は見えないが、体感では日が変わる少し前。
そして、篠井さんは電話を取ろうとしない。
あ、暗いから――。
「篠井さん。電気――」
「――いや、いい」
「え?」
「それより、挿れていいか?」
「あ――」
答えるより先に、私の身体は抱きしめられたまま背を布団に押し付けられた。
彼に跨っていた私の足は大きく開かれ、蜜口には硬い熱が押し当てられている。
「篠井さ――」
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