サレたふたりの恋愛事情

深冬 芽以

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7.元上司が恋人になりました

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 正直、セックスはあまり好きではなかった。

 学生時代の初めての恋人とは、それが原因で別れた。

 初めてのセックスが痛くて、その後も全然気持ち良くなれなくて。

 卓と初めてシた時、私が学生の頃振りだと言ったからすごく優しく念入りにほぐしてくれて、痛みはあまりなかった。が、さほど気持ち良くもなかった。

 世の中にはそういう女性もいるとネットで見て、ああそうなのかと思ったくらいのことだけれど、卓が気持ちいいかを頻りに聞いてきたから、気持ち良さそうにしなければと思うと、なかなかに面倒だった。

 これもネットで読んだことだが、どうやら私の相手は二人とも、自分本位のセックスをする傾向にあったようだ。

 お互いにハジメテ同士の学生時代の彼はさておき、卓には当てはまる。

 半同棲状態になってからは特に、ぐっすり眠るためのルーティンのようになっていて、生理の時は舌打ちされたし、期間中二度は口でしていた。

 これは冷静な自己分析の結果だが、私がお風呂だけは一人で入りたかったのは、唯一卓から離れられる時間だったからだと思う。

 なぜそう思ったのか。

 それは、篠井さんにお風呂に入りたい趣旨のことを言った時『一緒に――』と言いかけられて、嫌だと思わなかったから。

 お風呂に入りたいと言ったのは、もちろん身体を綺麗にしたかったし、汗臭さや足の匂い、ムダ毛の生息状況の確認がしたかったから。

 だから、困る、とは一瞬思ったけれど、嫌だ、とは思わなかった。

 結局、この流れでお風呂中断はさすがにナイだろうと大人として総合判断し、口呼吸をお願いすることで行為続行を決めたが。

 とにかく、篠井さんが望めば一緒にお風呂もやぶさかではない。

 さらに、セックス自体についてだが、これも私の中の考えが大きく変わった。

 いくら自分本位とはいえ、卓も私の胸を揉んだし乳首も舐めた。が、同じ行為であるにも関わらず、篠井さんにされてみてその違いに驚いた。

 気持ち良かった。

 何が違うのか。

 そう考えたのは一瞬で、すぐにどうでもよくなった。

「篠井さんっ!」

 自分の口から、自分が聞いたことのない甲高い甘えた声が出る。

「あっ、は――っん」

 私の膣内なかで暴れる指に、腰から太ももがびくびく跳ねて止まらない。

 抜き挿しされるたびにぐちゅぐちゅと水音が響いて、恥ずかしい。なのに、当然だが止められない。

 お尻を伝ってシーツを濡らす蜜が、冷たい。

「あっ! だめっ! また――」

 篠井さんの唇に吸い込まれた言葉は、きっとキスで遮られなくても言えなかったはず。

「~~~っ!」

 寝室に来てどのくらい経ったのか、何度達したのかわからない。

 ただ、わかっていることはふたつ。


 篠井さん、絶対口呼吸してない!


 私の舌に吸い付いたり、甘噛みしながら口呼吸ができたら、その方法を教えてほしい。

 そして、もうひとつは。


 セックスって気持ちいいんだ……。


 三十一年生きてきて知った、本当の快感。

 触られても撫でられても口づけられても、気持ちいい。

「はっ、ん」

「夏依」

 篠井さんに名前を呼ばれるたびに、はしたないおねだりが口をつきそうになる。

「夏依」

「やっ、あ――」

 耳元で囁かれ、耳たぶを食まれ、指でクリを捏ねられ、太ももに彼の硬い熱を押し当てられたら、もう抗えない。

「いれ――てぇ」

 さらなる快感が欲しい、というよりはイキ疲れて朦朧としてきたから。

 意識があるうちに、ちゃんと彼を受け入れたい。

 美人でナイスバディな元カノに張り合って騎乗位してもいいなんて言ってはみたが、実際には自力で起き上がる力も残っていない。
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