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11.婚約パーティー
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しおりを挟む「――名誉? 未成年に手を出したり、子供がいることを黙って結婚しようとした男に名誉があるとでも?」
クリスティーナさんがゆっくりと滝田社長に近づく。
「ティーナ、騙されるな。こんなこと――」
「クリスティーナ・山崎さん。お渡しした封筒の中をご覧ください」
理人の声に、クリスティーナさんは弾かれたようにビリッと勢いよく封筒の上部を破り、中に手を入れる。
そして、取り出したA4サイズの写真を見て、滝田社長の足元に放る。
「婚約は破棄。私の家からの事業資金の援助はなし。当然、慰謝料も請求します。弁護士からの連絡を待っていなさい」
「なにっ!?」
滝田社長が、紙を拾い上げる。
その時、少し厚手のその紙が写真らしいとわかった。
「なんだ、これは! ふざけるなっ! こんなもの――っ!」
滝田社長が紙を破り捨てる。
「データはいただけますのよね?」
クリスティーナさんが只野さんに聞く。
「お望みでしたら、ええ。うんざりするほど」
「なっ――!」
「その前に、そのスクリーン映してくださらない? お集まりの皆さまも気になりますでしょう? 滝田がここまで狼狽えるネタがなにか」
「やめろっ!」
会場内がスクリーンに注目する。
映し出されたのは、先ほど見た女性と男の子と滝田社長の姿だが、女性のお腹が大きい。
「しっ、親戚の――」
「それをあの男の子の前でも言えますの?」
「只野さんが聞く」
「お前は俺の子ではない、と」
「――――っ!」
「只野さん。あなたと滝田の離婚原因は隠し子ですか? それとも、鹿子木ユリアですか?」
クリスティーナさんの言葉に、只野さんは微笑み、ゆっくりと首を捻って、鹿子木さんを見た。
鹿子木さんは驚愕の表情でスクリーンを見上げている。
きっと、唇が半開きなことにも気づいていない。
「滝田の不貞が原因でしたが、相手まではわかりませんでした。調査結果を受け取る前に、お願いしていた調査員が事故に巻き込まれてしまって。轢き逃げでした」
事故……って。
只野さんがわざわざ轢き逃げだと言ったせいか、やけに意味深だ。
きっと、そう思ったのは私だけではないはず。
「セーラー服が可愛らしいわ。私に見向きもしないのは当然ですわね」
ニコリと笑った元妻と、青ざめる愛人。
そして、娘以上に青ざめて、というか、瞬きすら忘れ、今にも卒倒しそうなほど唇を震わせているのは父親。
「ユリア……。これはどういう――」
「――……」
もう、父親への言い訳も思いつかないらしい。
「鹿子木さん。あなた、滝田との不倫関係もそうですけれど、他にも自分の魅力で籠絡した男性を脅迫し、犯罪行為を強要したことをお父様が知ったらと思うことはありませんでしたの?」
「はん……ざい?」
只野さんは背筋を伸ばし、ゆっくりと、優雅な足取りで鹿子木さんの前に立つ。
鹿子木さんが瞬きをすると、涙が頬を伝った。
その涙に込められた感情は、恐怖なのか、後悔なのか、それとも憤慨なのかは、わからない。
「男性たちに、その方が知り得る極秘情報を盗ませたのは、滝田の指示ですか? それとも、あなたの意思ですか?」
「極秘情報……?」
消え入りそうな声で問うた鹿子木さんの父親に、只野さんは一瞬だけ眉をひそめたが、すぐに彼の目を真っ直ぐ見て言った。
「壁際のお二人は、勤めていた会社の取引企業のデータを盗んだ罪で、解雇されました」
鹿子木さんの父親が壁際を見る。
気の弱そうな男性二人が、俯きがちに立っていた。
「お二人はデータを盗む前、お嬢さまと交際していました。そして、盗んだデータをお嬢さまにお渡ししたそうです」
「そんなものを、ユリアはどうして――」
「――滝田の為でしょう」
「……は!?」
「違いますか? ユリアさん」
只野さんの問いに、鹿子木さんは自身が持っている封筒の上部をビリビリに破き、中の紙を取り出した。
そして、紙を見て、笑い出す。
「くっ……くくくっ。あっはははははは!」
会場内に響く鹿子木さんの声。
残りの封筒には何が入っているのか。
私は、理人がくれた封筒をぎゅっと胸に抱いた。
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