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7.噂
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「王道ショートケーキ」
理人がぷっと小さく吹き出した。
「王道なのか」
「やっ! そういう名前だったの」
「じゃあ、それを食え」
「でも――」
「――力登がもっと食べたいと言ってもこれ全部は多いし、違うのも美味しいって教えてやったらいい。我慢も、な」
理人が笑いながら、自分のブランデーケーキを取り出すと、お皿にのせた。
「ほら、皿。イチゴが落ちるぞ」
「え、やだ」
慌ててお皿をケーキの下に差し出す。
無事に、イチゴがのったまま着地した。
「やだ、だって。可愛いのな」
彼は自分のブランデーケーキを取り出すと、お皿にのせた。
「あとはしまっておくぞ」
蓋をして、箱を冷蔵庫に持って行く。
その姿を見て、涙が出そうになった。
些細な、ことだ。
好きなケーキを聞かれた。好きなケーキを食べろと言われた。
ただ、それだけ。
それだけなのに、胸が苦しい。
嬉しすぎて、苦しい。
「ママ、まだぁ?」
力登の声に、冷蔵庫を閉めた理人が振り返る。
当然、彼を見つめていた私と、視線が絡む。
「りと?」
「食べようか」
うまく笑えているだろうか。
自信がなくて、彼に背を向けた。
ケーキを持って力登の隣に座り、くまの顔を息子に向けてお皿を置いた。
「ママ、あーん」
いつもは自分で食べたがる力登が、私に向かって口を開ける。
「やっぱり、寂しかったんだな」
理人がポツリと言うと、ケーキにフォークを入れた。
無意識に頬が緩む。
あっさり出かけていったから、私の方が寂しかった。
くまのチョコプレートを避けてフォークでケーキの端を掬い、息子の口に運んだ。
力登はパクッと口を閉じ、私はフォークを引き抜く。
「う~っ!」
瞳を大きく開くと、唸り出す。
モグモグというより、クチャクチャと音を立てて、口の中で舌を動かしているらしい。
そして、ぴょんっと立ち上がると、私の膝に跨る。
「んまっ!」
「気に入った?」
「おう! あーんっ」
もうひと掬いして、口に入れる。
「りき、食べすぎると虫歯になるぞ?」
理人がテーブルに肩肘で頬杖をついて私たちを見ている。
その姿がCMやドラマのワンシーンのようで、思わずドキッとした。
「あーん!」
「力登、ママが食べられないだろ。俺んとここい」
「やっ! ママ、あーん」
「なんだよ、さっきまで俺から離れなかったくせに」
少しだけ唇を尖らせる理人に、ふふっ笑ってしまう。
「じゃ、ママはこっち」
彼のフォークが私のショートケーキの尖った部分を掬い、それが私の口元に差し出された。
「ほら、あーん」
そう言われて、素直に口を開けるはずもない。
「自分で――」
「――力登に食べさせてやるので手が塞がってるだろ?」
「や、でも――」
「――早くしないと俺が食うぞ」
「ママ! りきも」
片方からはケーキを食べるように催促され、片方からは食べさせろと催促される状況に、どうしたらいいものかと考える余裕もない。
「マ~マ!」
痺れを切らした力登が、私の腕を掴む。
もうっ!
私はやけくそで、素早く理人のフォークを口に入れると、ケーキを舌にのせた。
そして、空になったフォークを口から出し、今度は自分のフォークで力登のケーキを掬う。
力登の幸せそうな表情を見ていたら、私は嬉しくなる。
それはいいのだが、理人の言った通りハマッたら大変だ。
理人がぷっと小さく吹き出した。
「王道なのか」
「やっ! そういう名前だったの」
「じゃあ、それを食え」
「でも――」
「――力登がもっと食べたいと言ってもこれ全部は多いし、違うのも美味しいって教えてやったらいい。我慢も、な」
理人が笑いながら、自分のブランデーケーキを取り出すと、お皿にのせた。
「ほら、皿。イチゴが落ちるぞ」
「え、やだ」
慌ててお皿をケーキの下に差し出す。
無事に、イチゴがのったまま着地した。
「やだ、だって。可愛いのな」
彼は自分のブランデーケーキを取り出すと、お皿にのせた。
「あとはしまっておくぞ」
蓋をして、箱を冷蔵庫に持って行く。
その姿を見て、涙が出そうになった。
些細な、ことだ。
好きなケーキを聞かれた。好きなケーキを食べろと言われた。
ただ、それだけ。
それだけなのに、胸が苦しい。
嬉しすぎて、苦しい。
「ママ、まだぁ?」
力登の声に、冷蔵庫を閉めた理人が振り返る。
当然、彼を見つめていた私と、視線が絡む。
「りと?」
「食べようか」
うまく笑えているだろうか。
自信がなくて、彼に背を向けた。
ケーキを持って力登の隣に座り、くまの顔を息子に向けてお皿を置いた。
「ママ、あーん」
いつもは自分で食べたがる力登が、私に向かって口を開ける。
「やっぱり、寂しかったんだな」
理人がポツリと言うと、ケーキにフォークを入れた。
無意識に頬が緩む。
あっさり出かけていったから、私の方が寂しかった。
くまのチョコプレートを避けてフォークでケーキの端を掬い、息子の口に運んだ。
力登はパクッと口を閉じ、私はフォークを引き抜く。
「う~っ!」
瞳を大きく開くと、唸り出す。
モグモグというより、クチャクチャと音を立てて、口の中で舌を動かしているらしい。
そして、ぴょんっと立ち上がると、私の膝に跨る。
「んまっ!」
「気に入った?」
「おう! あーんっ」
もうひと掬いして、口に入れる。
「りき、食べすぎると虫歯になるぞ?」
理人がテーブルに肩肘で頬杖をついて私たちを見ている。
その姿がCMやドラマのワンシーンのようで、思わずドキッとした。
「あーん!」
「力登、ママが食べられないだろ。俺んとここい」
「やっ! ママ、あーん」
「なんだよ、さっきまで俺から離れなかったくせに」
少しだけ唇を尖らせる理人に、ふふっ笑ってしまう。
「じゃ、ママはこっち」
彼のフォークが私のショートケーキの尖った部分を掬い、それが私の口元に差し出された。
「ほら、あーん」
そう言われて、素直に口を開けるはずもない。
「自分で――」
「――力登に食べさせてやるので手が塞がってるだろ?」
「や、でも――」
「――早くしないと俺が食うぞ」
「ママ! りきも」
片方からはケーキを食べるように催促され、片方からは食べさせろと催促される状況に、どうしたらいいものかと考える余裕もない。
「マ~マ!」
痺れを切らした力登が、私の腕を掴む。
もうっ!
私はやけくそで、素早く理人のフォークを口に入れると、ケーキを舌にのせた。
そして、空になったフォークを口から出し、今度は自分のフォークで力登のケーキを掬う。
力登の幸せそうな表情を見ていたら、私は嬉しくなる。
それはいいのだが、理人の言った通りハマッたら大変だ。
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