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【番外編】最後の夜、最初の夜
最初の夜 -2
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「そんなに落ち込まなくても……」
駿介がバスルームのドアを閉めた後で、私は呟いた。
そして、自分が座っているベッドを見た。
糊の効いていた真っ白なシーツ、ふわっふわの掛け布団、手の込んだ刺繍が施されたベッドカバー。パンパンに膨らんだ枕。それらが、今は、シーツには皺が寄り、掛け布団とベッドカバーは半分ベッドから落ちていて、枕は凹んであちこちに転がっている。
「もうっ……」
私は少しだけ頬を膨らませて、枕の一つを思いっきりグーパンした。
バスローブの下の、足の付け根が少し不快だった。
蜜を溢れさせ、悦んで夫を咥えていたソコは、突然の事態に熱が引ききらない。
あからさまな使用前、使用後がわかる二台のベッドの間のテーブルに置かれたティッシュを二枚ほど抜き取り、潤んだソコを拭く。
十一時からの結婚式と披露宴の後、友達が開いてくれた二次会&三次会に参加して、式を挙げたホテルのブライダルスイートに戻って来たのは二十二時頃のこと。一緒にお風呂に入って、イチャイチャした。
心配になるほどお酒を飲んでいた駿介は、お風呂で私の身体を念入りに洗ってくれた。
そのままシようとした駿介を止めたのは、酔った上に逆上せたんでは、さすがに生命の危機を感じたからだ。
お風呂からベッドまで、駿介のソレはテンションが上がりっぱなしで、水分補給もままならないまま私の最奥に侵入してきた。
駿介がいつも以上に興奮して、激しかったのは、お酒のせいはもちろん、今夜が初夜だから。
婚姻届は提出済みだったが、あの時は初夜どころではなかった。だから、妊娠していないとわかって、届の提出を先走ったことに落ち込む彼に、私が言ったのだ。
『結婚式の夜は、忘れられない初夜にしてね』と。
だから、駿介同様に私も今夜を特別に思っていたし、期待していた。その為に、飲み過ぎないようにと何度も言った。が、彼の友達はもちろん、私の友達も次々と新郎のグラスにビールを注ぎ、こっそりと私が足元のバケツに捨てた以外は飲み干し続けた。
それでも、式から二次会までの間、駿介は少し休めていたし、たいして顔色も変わっていなかったから、私も油断して千尋たちと盛り上がってしまった。
ようやく異変を確認したのは、三次会が始まって何度目かわからない乾杯の時。
酔っ払いたちがキスコールを始め、それに応えようと駿介に抱き寄せられた時、焦点の合わない瞳にビール以外のきついアルコール臭で、これはマズいとわかった。
おふざけのキスのはずが、角度を変えて何度も繰り返した上に舌まで差し込んで来た時には、焦った。
帰り際に聞いたのだけれど、どうやら三次会の初めに陸が駿介を焚きつけて、ウイスキーを飲ませたのだという。
三次会を終えた時には、みんなへの挨拶もろれつが回らない状態だった。
そんな状態でホテルに戻り、お風呂に入ったのだから、ひっくり返っても無理はない。
『姐さん女房として、若い旦那の手綱はしっかりと握っておくんだよ』
明子さんの言葉を思い出す。
これからは、私がしっかりしなきゃ!
気合を入れたところで、ようやくバスルームから駿介が顔を出した。
「大丈夫?」
頷いた駿介の、うねった前髪から水滴が落ちた。
私は駆け寄ると、バスタオルで彼の髪を拭く。
「ドライヤー、してあげる」
彼の手を引いて乱れていない方のベッドに座らせ、新しいミネラルウォーターのペットボトルを渡すと、サニタリールームからドライヤーを持って来て、ベッド脇のコンセントに挿す。
駿介は大人しく、というよりも落ち込むあまり抵抗もなく、私に髪を乾かされていた。
「熱くない?」
少し距離を取って熱風を当てながら、手櫛で彼の髪をすく。
「気持ちいい」
かろうじて、駿介の声が聞こえた。
私はドライヤーを止めて、後ろから彼を抱き締めた。
「もう落ち込まないで?」
耳元で、わざとらしいほど甘い声で囁く。
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