【ルーズに愛して】私の身体を濡らせたら

深冬 芽以

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【番外編】最後の夜、最初の夜

最後の夜 -6

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「けど、それで別居なんておかしくね? それに、ここ何年かは、セックスの相手もあんましてくんなくなったし。ヤキモチとか浮気の心配してんなら、逆に――」

「――女の気持ちと身体はフクザツなんです」

「は?」

 私はチャイナブルーを飲み干し、同じものをお代わりした。

 身体がポカポカしてきて、少し飲み過ぎかなと思ったけれど、お酒は美味しいし、コウの悩みが他人事のようには思えず、ペースを落とせない。

「三十代の私でさえ、二十代の頃とは色々違うと思うんだから、四十代になるともっとだと思うよ? 生理前の体調不良だったり精神的に不安定になったり。こうやってお酒を飲んだ翌日の疲れとかむくみとか、なかなか取れなかったりするし」

「はぁ」

「あと! その……感じ方? ……も変わってきたりするし」

「感じ方って、セックスの?」

 勢い余って言ってから後悔したけれど、コウがハッキリと聞き返すから、誤魔化せない。

「うん」

「どんな風に?」

「えっ……」

 さすがに具体的に言うのは恥ずかしいなと思ったけれど、目の前のコウは真剣そのもので、適当なことを言うのは失礼な気がした。

 羞恥心を忘れるために、アルコールを摂取する。

「うちさ、基本的に俺が誘わなきゃ平気で二、三か月はシなかったりすんだよね。もともと淡泊なのか、嫁さんから誘われることなくて。けど、付き合ってた頃にしょっちゅうシたがったら拒否られたことあって、俺的には気を遣ってたわけよ。次の日の仕事に響かないように、我慢したり、軽めにしといたり?」

「あ! それ、わかる!」

 見ると、マキがカズに人差し指を向けていた。

「うちも共働きだからさ。俺は疲れてる時ほどシたくなんだけど、嫁は嫌がるんだよ。疲れてる時は」

「男って疲れてる時ほど勃ちやすいってホントなんだ?」と、千尋も話に参加する。

「そ。で、拒否られると悶々として眠れねーの。隣では嫁がぐっすりでさ」

「虚しいよな、そういう時って」と、テツも遠い目で言った。

「男は男で大変ね」と、千尋。

「いや! 他人事じゃねーよ? ちひろのダンナもそうだぞ?」

「あー……、うん。けど、うちはハッキリ言われるし、極力協力するし」

「ダンナのシたい時にさせてやるってことか?」

「挿入しなくても、満足させてるから」

「うわっ! 羨まし過ぎ!」と言ったのは、カズ。

「デキた嫁だな」

「でしょ? その代わり、きっちり子育てに参加してもらってるから」

「あー……、なるほど。それを言われると、なぁ」と、カズが苦笑いする。

「うちは、ってかさなえんとこもだけど、職場も一緒だからできることなんだけどさ」

「確かに! 家事や育児を全部任されて、その上、その、夜の相手もって言われると、大変だと思う。うちも、その……、家事とか育児を手伝ってくれるようになったから、レスが解消できたの……あるし」と、さなえが恥ずかしそうに言った。

 大斗くんを妊娠した後、セックスレスになっていたさなえだけれど、勇斗くんを妊娠した時に、同じことにならないように大和と話し合ったらしい。お陰で、妊娠中も出産後も、適度なスキンシップは取れていると聞いている。

「そもそも! 家事や育児を『手伝う』って感覚が間違いよね。共働きなら条件は同じでしょ? 自分の生活、自分の子供なんだから、夫婦で分担するのが当然なのよ」

 比呂さんと結婚する前は、結婚しない宣言をしていた千尋の言葉とは信じられない。

 変われば変わるものだ。

 実際、比呂さんは積極的に子育てに参加している。未来ちゃんはパパっ子だし、千尋はかなり助かっていると言っていた。
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