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18.私の身体が濡れたから
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「マジで!?」と、有川さんにまじまじと見つめられる。
「さすがに『ちゃん』は恥ずかしいから、呼び捨てでどうぞ」と、私から言った。
「マジか……。絶対、年下だと思ってた」
「よく言われます」
「そう言えば、なんでこのメンバー? サークルったっけ?」
「うん。O大学ルーズサークル」
「なにするサークル?」と聞いたのは、駿介。
そう言えば、駿介にも話したことがなかった。
「色々。私たちの代は大和が部長でね? キャンプしたり、スキーしたり、大学祭でお好み焼き作ったり、面白そうなことは何でもやるの」
「へぇ」と、駿介と有川さんの声が重なる。
「とにかく、思いつくこと何でもやったよな。ルーズなんて格好つけても、ようはダラダラとテキトーに遊んでただけでさ。今思えば、よくサークルとして認められてたよな」
「確かに!」
「また行きたいな、キャンプ」と、龍也が言った。
「いいな。またやるか? スマホ禁止キャンプ」と、陸。
「やったね、そんなの」と、私。
「着いたらいきなり回収されたんだよね」と、あきら。
「けど、次の日に解禁した瞬間に彼女に電話したの、大和だったよな」
「そうそう! あの時付き合ってた年上の彼女から鬼のような着歴があって、大和、真っ青な顔してた」
大和の引きつった作り笑いを、今も鮮明に覚えている。それを思い出すと、笑えた。
「あきらも彼氏にメッセ、送ってたよな?」
「そうだっけ?」
「そうだよ。んで、龍也がいじけた顔でそれを見てた。さっさと奪っちまえばいいのにって、思ったんだよな」
「あの頃の私たちは、こんな未来、想像も出来なかったよね」
さなえと龍也は、恋人のいる大和とあきらを見ていた。私は男運が悪くて、陸に守ってもらってばかりいた。千尋は男に興味がないって顔して、私たちの世話ばかり焼いていた。
くだらない遊びをして、笑って、怒って、泣いて。
卒業して疎遠になったけど、さなえと大和の結婚式で再会した時、つい昨日まで遊んでたみたいに距離を詰めて、また集まるようになって。
ずっと、こうやって繋がっていくんだと思っていた。
「麻衣?」
駿介に呼ばれて、瞬きをした瞬間、睫毛が濡れた。
「麻衣? どうしたの?」
心配そうなあきらの声。
「うーーー……」
「麻衣?」
駿介が私の顔を覗き込む。
ティッシュを差し出されたけれど、私は彼の胸にしがみついて、涙を拭った。
「どうしたの?」
「バラバラになるの……寂しい……」
陸のイギリス行きを聞いた直後に告白されて、龍也とあきらの釧路行きを聞いた直後に二人の結婚が決まって、ゆっくり別れを寂しがる暇がなかった。
「みんなと一緒に……いたい」
「麻衣……」
「鶴本くんと釧路に遊びに来てよ、麻衣さん。観光案内できるように、あきらとリサーチしておくから!」
「うん。待ってるよ、麻衣。それに! ちょくちょく帰って来るから」
「うん……」
「あ! おいっ! なに、麻衣を泣かせてんだよ!」
気づけばダイニングに移動していた大和が、言った。
「麻衣、どうした?」
「俺と離れるのが寂しいってさ」と、陸。
「限定しないでください!」と、駿介。
「俺がいるぞ、麻衣!」と、大和。
「お前はどうでもいいんだよ」
「なんでだよ!」
「さすがに『ちゃん』は恥ずかしいから、呼び捨てでどうぞ」と、私から言った。
「マジか……。絶対、年下だと思ってた」
「よく言われます」
「そう言えば、なんでこのメンバー? サークルったっけ?」
「うん。O大学ルーズサークル」
「なにするサークル?」と聞いたのは、駿介。
そう言えば、駿介にも話したことがなかった。
「色々。私たちの代は大和が部長でね? キャンプしたり、スキーしたり、大学祭でお好み焼き作ったり、面白そうなことは何でもやるの」
「へぇ」と、駿介と有川さんの声が重なる。
「とにかく、思いつくこと何でもやったよな。ルーズなんて格好つけても、ようはダラダラとテキトーに遊んでただけでさ。今思えば、よくサークルとして認められてたよな」
「確かに!」
「また行きたいな、キャンプ」と、龍也が言った。
「いいな。またやるか? スマホ禁止キャンプ」と、陸。
「やったね、そんなの」と、私。
「着いたらいきなり回収されたんだよね」と、あきら。
「けど、次の日に解禁した瞬間に彼女に電話したの、大和だったよな」
「そうそう! あの時付き合ってた年上の彼女から鬼のような着歴があって、大和、真っ青な顔してた」
大和の引きつった作り笑いを、今も鮮明に覚えている。それを思い出すと、笑えた。
「あきらも彼氏にメッセ、送ってたよな?」
「そうだっけ?」
「そうだよ。んで、龍也がいじけた顔でそれを見てた。さっさと奪っちまえばいいのにって、思ったんだよな」
「あの頃の私たちは、こんな未来、想像も出来なかったよね」
さなえと龍也は、恋人のいる大和とあきらを見ていた。私は男運が悪くて、陸に守ってもらってばかりいた。千尋は男に興味がないって顔して、私たちの世話ばかり焼いていた。
くだらない遊びをして、笑って、怒って、泣いて。
卒業して疎遠になったけど、さなえと大和の結婚式で再会した時、つい昨日まで遊んでたみたいに距離を詰めて、また集まるようになって。
ずっと、こうやって繋がっていくんだと思っていた。
「麻衣?」
駿介に呼ばれて、瞬きをした瞬間、睫毛が濡れた。
「麻衣? どうしたの?」
心配そうなあきらの声。
「うーーー……」
「麻衣?」
駿介が私の顔を覗き込む。
ティッシュを差し出されたけれど、私は彼の胸にしがみついて、涙を拭った。
「どうしたの?」
「バラバラになるの……寂しい……」
陸のイギリス行きを聞いた直後に告白されて、龍也とあきらの釧路行きを聞いた直後に二人の結婚が決まって、ゆっくり別れを寂しがる暇がなかった。
「みんなと一緒に……いたい」
「麻衣……」
「鶴本くんと釧路に遊びに来てよ、麻衣さん。観光案内できるように、あきらとリサーチしておくから!」
「うん。待ってるよ、麻衣。それに! ちょくちょく帰って来るから」
「うん……」
「あ! おいっ! なに、麻衣を泣かせてんだよ!」
気づけばダイニングに移動していた大和が、言った。
「麻衣、どうした?」
「俺と離れるのが寂しいってさ」と、陸。
「限定しないでください!」と、駿介。
「俺がいるぞ、麻衣!」と、大和。
「お前はどうでもいいんだよ」
「なんでだよ!」
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