【ルーズに愛して】私の身体を濡らせたら

深冬 芽以

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18.私の身体が濡れたから

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「あー、それは千尋にも言われた。『陽気だけど軽くはない』って」と、有川さんが苦笑いをする。

「陸が『インテリ』ってのも納得いかないんだけど」

「いや、納得だろ。第一印象は最悪だったけど、人を見る目はあるな」と、陸が頷く。

「どこがだよ。龍也を好青年って言ったらしいぞ」

「うわ、それはないわぁ」

「どうして? 龍也は好青年じゃない」と、私は言った。

「ばっかだな、麻衣。大学ん時からあきら狙いで、なのに彼氏から奪うことも出来なくて他の女を代わりにするような男だぞ? 彼氏と別れて弱ってるあきらにつけ込んでヤッちまうような男のどこが好青年だよ」

 珍しく、辛口。

 龍也は瞬き多めで視線を逸らす。

 有川さんは意外そうに龍也を見ていた。

「そう考えると、なんかムカつくよな。俺たちに黙って好き勝手やって、最後は公開プロポーズでキメてくれやがって」

「男のひがみはみっともないわね」と、あきらが呟いた。

「はぁ? なんで俺が――」

「――悔しかったら、金髪碧眼の美女でも連れて帰って来てよ」

「言われなくても連れてくるさ。いやっ! その前に、なんで俺が悔しいんだよ!」

「独りだからだろ」と、大和が追い打ちをかける。

「結婚がそんなに偉いかよ!」

「失敗したくせに」と、更にあきらが止めの一言。

「陸、インテリの皮が剥げてんぞ」

「うるせーよ!」と、陸が残りのビールを飲み干す。

「失敗と言えば、有川の離婚の原因って千尋か?」

 ゴフッと口に含んだビールを吹き出しかけたのは、有川さんではなくて駿介。

「大和さん。いくらなんでも――」

「違う……けど――」と、有川さん。

「――けど?!」と、思わず身を乗り出してしまったのは、私。

 失礼なのは承知の上だけれど、秘密主義な千尋の恋バナに通ずる話題となれば、そりゃあ、聞き逃すわけにはいかない。

「原因は違うけど、決め手は千尋かな」

「どういう意味!?」

「麻衣、食いつき過ぎだから」と、あきらが呆れ気味に言った。

「だって! 千尋ってば何にも話してくれないんだもんっ!」

「だもん、って……」

 ハハハッ、と有川さんが笑った。

「麻衣ちゃんって可愛いな」

「へっ!?」

 驚きのあまり、声がひっくり返る。

「千尋の友達って言うから、あきら? みたいなの想像してたんだけど、麻衣ちゃんもさなえちゃんも全然タイプが違って――」

「――おい! なに人の嫁を『ちゃん』づけとかしてんだよ!」と、大和。

「じゃあ、呼び捨て?」と、有川さんは悪びれもせずに言った。

「もっとダメだろ!」

「大和、お前、そんなちっせいぇことばっか言ってたら、さなえに愛想尽かされるぞ」と、陸が二本目のビールを開ける。

「うっせぇ!」

「つーか、有川。知ってるか知らねーけど、麻衣はお前より年上だぞ?」

「へっ?!」

 有川さんが間抜けな声を出した。

 いつものことだけれど、私は実年齢よりも若く見られることが多い。

 駿介と一緒に居れば、なおのことだろう。
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