【ルーズに愛して】私の身体を濡らせたら

17．濡れる身体、溺れる心

２

　唇同士が触れ合うのと、ブラのホックが外されたのはほぼ同時。

「除雪入ったら、帰っていいの？」

　鼻先と唇が触れ合ったまま、視線が絡む。まつ毛すら、触れそうだ。

「いいっていったら、帰っちゃうの？」

　露わになった胸を揉み上げられる。

「そんな可愛いこと言われたら、我慢できなくなるよ」

　駿介は目を閉じ、はあっと息を吐いた。その息は熱い。

　優しくしようとしてくれているのはわかる。ジーンズのファスナー部分が小高くなっていて、とても窮屈そうなのも。

「我慢、しなくていいよ」

　そう言って、私は彼のベルトに手をかけた。

「ストップ！」

　駿介が私の手を掴む。

「俺はいいから」

「どうして？」

「ホントに我慢できなくなるから」

「我慢しなくても――」

「――けどっ！」

　駿介が唇をキュッと結んだ。

　私が濡れなかったら、と言いたいのだろう。

「濡れなくても、挿れて？」

「え？」

「色々考えちゃって濡れなくても、シてるうちに濡れるかもしれないじゃない」

「けど――」

「――何も考えられなくなるくらい、駿介でいっぱいにして？」

　触れ合う肌越しに、彼の鼓動が花火のように重低音で跳ねたのがわかった。

　顔を真っ赤にして、瞳を潤ませて、熱い息を漏らす姿に、足の付け根が疼く。

　何度か、駿介と触れ合って思っていた。



　私、やっぱＳだ――。



「駿介は挿れたくない？」

「そんなわけ――」

「――じゃぁ……」

　誘惑に負けて緩んだ手を解き、今度こそとベルトをバックルから抜き、ファスナーに手をかけた時、もう一度手を掴まれた。

「ゴム、ないんだった」

「え？」

「こうなるなんて思ってなかったから、ゴム持って来てない」

　うちにあったかな、と少し考える。

　すぐには思い当たらない。

　けれど、止める気にもならない。

「いーよ」

「へっ！？」

「なくても」

「なんで！？」

「だって――」

「――……？」

　本当に意味がわからない様子の駿介を前に、私はその先を口ごもった。

　代わりに、グゥーーーッ、と盛大にお腹が鳴った。駿介の。

「――っ！　ごめんっ！」

　駿介が慌ててお腹を押さえた。

「今日、何も食ってなくて――」

「――そうなの？」

　俯いた駿介は、右手の甲を唇に押し当てた。

「カッコわり……」

　その仕草と表情に、私は思わず唾を飲んだ。



　かわいい……。



　私の中の、Ｓ心が刺激される。

　が、今は駿介の空腹を満たすのが先だ。

「私もお腹空いたから、コンビニでも行こっか」

「あ――、俺が行ってくるから」と、駿介がベルトを締め直す。

「なに、食べたい？」

「え？　一緒に――」

「――ダメだよ。ゴムも買って来るから。二人で行ったら、店員さんにそういう目で見られちゃうよ？」

　なるほど。

「それに、せっかく脱がしたんだから――」と駿介は、ベッド脇に放ってあったスウェットを私の頭から被せた。

「――このまま待ってて」

　チュッと音をたててキスを落とし、駿介は急くように部屋を出て行った。