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17.濡れる身体、溺れる心
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しおりを挟む「ブーちゃんのこと、教えて?」
駿介の手が、私のシャツのボタンを一つずつ外していく。
「元は野良猫だったんだけど、私が大学二年……か三年の時に、家の庭で弱ってたのをお父さんが見つけたの」
肩からシャツが滑り落ち、グレーのヒートテックのタンクトップが露わになる。
「怪我もしてたし、最初は全然懐いてくれなくて、おっかない顔で睨んでて、おっかない声で唸ってた。その顔が本当にブサイクで。だから、ブーちゃん」
「そのまんまだね」と、駿介が笑う。
彼の手がタンクトップの裾をワイドパンツから引き抜き、そのまま持ち上げた。私はそれが当然かのように、両手を上げる。タンクトップが私の顔を撫でながら上っていく。
いつもなら恥ずかしくて見せられないベージュのシームレスブラだけれど、今はどうでも良かった。
「俺たちも、いつか猫飼う?」
肩にキス。それから、鎖骨。
『俺たち』と、すごく自然に二人セットでまとめられたことに、嬉しくなる。
「ううん」
「どうして?」
「生き物を飼うのって大変だし、こうしていなくなっちゃうと悲しいし。それに――」
駿介の唇が胸に下りていく。ブラに覆われていない部分へのキスだけで、ホックに手を伸ばさない。それが、焦れったい。
「それに……?」
キスをしながら視線を上げた彼と目が合って、急に恥ずかしくなった。
私は視線を逸らし、気づいた。
「雪……」
窓の外は真っ白。
大粒の雪が真っ直ぐに落ちていく。
まだ陽は高いはずなのに、降る雪は真っ白いはずなのに、次第に部屋が薄暗くなっていく。真っ白なカーテンをしているのと同じ。
一粒一粒はゆっくりなのに、次から次へと途切れることなく落ちていくと、視界全体が白銀に覆われて、なんだかやけに感傷的になってしまう。
世界に独りぼっち、みたいな。
雪が降って、大はしゃぎしていたのは、いつの頃までだったろう。
「積もりそうだね」
駿介も窓の外に目を向けて、言った。
こんな風に、柔らかだけど大粒の雪が一番積もりやすい。
もそもそと、ひたすらに積み上がっていくと、あっと言う間に膝の高さくらいに達する。
この調子で降り続くと、深夜を待たずに除雪車が出動するだろう。
「ヤダなぁ」
駿介が呟いた。
「どうして?」
私は彼の肩に頭を載せた。
「こういう雪って歩くの疲れるでしょ。ジーンズも靴もべちゃべちゃになるし。冬靴って乾くの遅いしさ。部屋の中で乾かそうとしたら、めっちゃ臭うし。明日は日曜だから、歩道の除雪は明日の夜か明後日の朝になりそうだよな」
「除雪入ってから帰れば?」
駿介の耳朶を軽く食む。
「除雪入るまで、いていいってこと?」
駿介の腕が私の腰を抱く。
「ううん」
彼の首に腕を回し、顎や頬に口づける。
「除雪入るまで、いて欲しいってこと」
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