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16.ひとりの夜に想うのは……
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しおりを挟むずっと、何度も電話したりメッセージを送っても、スルーされてきた。なのに、ようやくかけて来てくれたと思ったら、まさか陸と一緒の時だなんて。
どうしようかと三秒ほど考え、マナーモードに切り替えた。
『電話に出られません』というメッセージは流したくなかった。
「出なくていいのか?」
陸に聞かれ、私はスマホをバッグに戻す。
バッグの中に入れていてもバイブ音は響くもので、気になって食事どころではない。
もちろん、話どころでも。
延々と震えるスマホが不憫に思えてくる。
「出ろよ」
パスタを噛みながら、陸が言った。
その途端、スマホが大人しくなる。
ホッとしていたら、今度は短く二回、震えた。
メッセージだろう。
私は再びバッグからスマホを拾いあげた。
ポップアップで表示されている短いメッセージに、思わず声を上げた。
「えっ――?」
メッセージ画面を開いて、続きを読む。
駿介からのメッセージ。
『麻衣さんの友達のちひろさんがいなくなったって、知ってますか?』
『昨日、ちひろさんの恋人の有川さんに会って、ちひろさんの行方を捜して欲しいと麻衣さんに伝えて欲しいと頼まれました』
『会社も辞めて、引っ越したようです』
画面に次々に表示されるメッセージ。
リアルタイムで既読が付く。
「なに、これ……」
「麻衣?」
「千尋が仕事辞めたって、知ってる?」
私はスマホを握り締めて、陸に聞いた。
「は? 千尋? なんで??」
「駿介が――」
「――は? なんであいつが千尋のこと知ってんの?」
「わかんない……」
私は握り締めたスマホを差し出す。
陸がそれを見て、眉間に皺を刻んだ。
「なんだよ、これ……」
陸がスマホを私に戻し、自分のスマホを取り出す。画面を何度かタップして、耳に当てる。が、すぐに下ろした。
「着拒か?」
そうだ!
まずは、千尋に――。
私も千尋の番号を呼び出して発信したが、『お客様の都合により――』というアナウンスが流れた。
次にメッセージを送ってみる。
『電話して!』
陸も同じことをしているようだった。
「麻衣、彼氏に電話して、詳しく話を聞いてくれ」
「うん」
私は気まずさなんて忘れて、駿介の番号に発信した。
『麻衣さん?』
「駿介? メッセ、どういうこと? 千尋がいなくなったって、本当?」
『はい。有川さんはそう言ってました』
「なんで? なんでいなくなったか、わかってるの!?」
『それは――』
不意にスマホが宙に浮いた。陸が私の手から抜き取って、自分の耳に当てる。
「ちょ――」
「どこかで会って、詳しく話を聞きたいんだけど。……ああ、うん。……いや、外より――」と言いかけると、陸が私を見た。
「麻衣の部屋は? 彼氏も知ってるだろ?」
「え? あ、うん。いいけど――」
「じゃ、麻衣の部屋で。三十分後に来てくれ。……よろしく。じゃ」
腕時計を見ながらそう言った陸は、既に通話が切れているスマホを私に返した。
「行こう」
結局、一口もピザを食べられず、陸とも話が出来ないまま、店を出た。
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