【ルーズに愛して】私の身体を濡らせたら

15．賭け

１

　すっかり寝過ごして、お誘いメッセが遅くなったのは、馬場と祥平に付き合って朝まで飲んでいたからだ。

「で？　年上彼女とはどーよ！」

　まだ一杯目だと言うのに、馬場は既にテンションが高い。

「結婚式の招待状はまだか？」

「そんな簡単じゃねーんだよっ」と投げやりに言って、ジョッキを煽る。

「写メとかないのかよ？　お前がそんなに夢中になってる女、見てー」

「勿体ないから見せない」

「は？　なに、それ。キモイんだけど」

「キモくて結構。見た目だけで判断されたくないし、おかずにもされたくないからな」

「どんだけ巨乳なんだよ。ますます見たいんだけど」

　人目も気にせずに大声で笑う馬場に、祥平は呆れ顔。

「馬場、お前は焼き鳥でも焼き豚でも食ってろ」と言って、馬場の前に皿を並べる。

　それから、テーブルに身を乗り出して言った。

「で？　本当のところはどうなんだよ？」

　肉を頬張る馬場にはハッキリと聞こえないように、少し声が小さい。

「あんま……上手くいってない」と、俺も小声で言った。

「ライバル登場」

「ライバルって？」

「昔っからの友達っつーか……」

「マジかぁ……」と、祥平がため息をつきながら項垂れる。

「いや、でも、まだ時間はある！　クリスマスがチャンスだ！！」

「は？　何の時間だよ！？」

　祥平に、お試し期間のことは話していない。

「いやっ？　深い意味はねーよ？　とにかくっ！　俺はお前が年上彼女と上手くいくことを願ってるからな！」

　いつになく熱い祥平に、違和感を持つ。

「クリスマスの予約はしたか？　ちょっといいレストランで飯食って、ちょっといいホテルでプロポーズなんかしたら、間違いない！」

「いや、仕事だから会えるかどうかも――」

「――ばかやろう！　クリスマスは恋人たちの一大イベントだぞ！　仕事なんてクソくらえだ！！」

　馬場がビシッと人差し指を俺に向ける。

「絶対にプロポーズを成功させろ！」

「はぁ？　なんでお前にそんなん言われなきゃなんねーんだよ。そもそも、プロポーズなんて――」

「――まぁまぁ」と、祥平が大袈裟に手を振る。

「プロポーズはともかく、俺と馬場はお前の幸せを願ってるんだよ」

「なんだよ、気持ち悪りぃな」

　そんなことを言いながら、競うようにジョッキを空にしていった。

　最初に潰れたのは、馬場。

　珍しい。

「松田が帰って来るんだと」と、テーブルに突っ伏して眠る馬場を横目に、祥平が言った。

「色々、思うことがあるんだろ」

「別れた原因て、松田の就職だったんだろ？」

「ああ。馬場は親父さんの秘書をやりながら地盤継ぐ準備をするって決まってたし、松田は第一志望の会社から内定をもらって、行かない選択肢はなかったからな」

「そうか」