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14.揺れる心

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 守るって、何?



 ベッドに寝転んだ私は、ブサかわ猫を抱き締めて考えていた。

 陸は確かに頼りになる。

 大学の頃から私を守ってくれていた。



 けど、それは大和も同じなんだよね。



 大和も、私を守ってくれていた。

 どちらかと言えば、カッとなって手を出してしまうのは大和で、陸はいつも大和がやり過ぎないように見張っていた。

 じゃあ、大和も私を好きで守ってくれていたのかと言えば、違う。完全に、友達想いなだけ。



 じゃあ、陸は……?

 陸は私を好きで守ってくれてたの?



 Barで飲んだのは、お互いに一杯ずつ。

 陸の言葉に俯いてしまった私から、帰ろうと促した。

「少し早いけど、クリスマスプレゼント」

 アパートの前でタクシーを待たせ、陸がそう言って私の首にシルバーのチェーンをかけた。

「うん。よく似合ってる」

 私は鎖骨と鎖骨の間に納まった粒に、指先で触れた。

「お前が俺とイギリスに行くと決めたら、お揃いの指輪を買いに行こう」

 私の返事を待たずに、陸はタクシーに乗り込んで、窓越しに手を振ると走り去った。

 ピンクサファイア、だった。

 姿見でその輝きに見惚れていたのは、五分か、十分か。



 友達……へのプレゼントじゃないよね。



 金額を知りたいような、知りたくないような。

 傷をつけないよう、外して箱に入れた。



 イギリス……か。



 陸のプロポーズとも思える告白は、素直に嬉しかった。

 陸と一緒に居ると楽しいし、安心できる。

 二年以上前なら、二つ返事でその腕に飛び込んでいたろう。

 けれど、今は二年前の罪悪感や、既に芽生えてしまった駿介への想いを忘れて、そうは出来ない。



 駿介……!



 心配しているかもしれない。

 私は少し前に帰ったことをメッセージで伝えた。

 電話がかかってくるかもしれないと、スマホを握り締めたままでいたが、鳴ったのは着信音ではなくて通知音だった。

『おやすみ』

 絵文字もないその四文字のメッセージに、なぜか胸が締め付けられた。

 今は、駿介の声が聞きたかった。

 ならば、自分から電話すればよかったのに、きっとしてきてくれると自惚れた。それで、電話がないことを寂しがるなんて、勝手だ。



 陸と二人で会うことを黙っていたくせに……。



 駿介への罪悪感はある。

 会っても、真っ直ぐ駿介の顔を見られないかもしれない。



 だけど、会いたい。

 会って、甘やかされたら、きっと陸への迷いなんてなくなる。



 私は猫がティーカップから顔を出しているスタンプを送り、その後にメッセージを入力した。

『明日、会える?』

 送信と同時に既読になり、十秒ほどで返事が表示された。

『ごめん。明日は俺が友達と約束しちゃった』

 自分でもびっくりするほどのショック。

 そして、それを悟られずに済むメッセージアプリとは、なんて便利なことか。

 私は、『わかったよ!』と文字の入った、猫のスタンプをタップした。
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