【ルーズに愛して】私の身体を濡らせたら

深冬 芽以

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14.揺れる心

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 陸は憶測であれこれ言わない。

 大和なら、『何か事情があるんだろう』とか『よく見たら指輪じゃなくてボルトかなんかかもしれないぞ?』とか言って、励ましてくれると思う。

 龍也なら、話を変えて気を紛らわしてくれそう。

 けど、陸は違う。

「どんな事情があっても、俺たちは千尋の味方でいような」

「うん」

 陸のこういうところが、好きだ。

 もちろん、友達として。

「あきらとは?」

「……」

 大袈裟に口をもぐもぐさせて、返事を考える。



 正直に言う?

 適当に誤魔化す?

 いや、陸相手に適当とか誤魔化すなんて無理じゃない?



「話した」

「龍也の愛は報われそう?」

「うん」

「お? 断言?」

「うん。すぐに、かはわからないけど、絶対あきらは龍也を受け入れるよ。気持ちは固まってるんだから」

 願いを込めて、大きく頷いた。

「そっか」と微笑む陸は、安心したような、嬉しそうな穏やかな雰囲気を纏っていた。

「で?」

「ん?」

「俺たちのこと、話したのか?」

「――っ!」

 大きく目を見開き、大袈裟なほどパッチリと瞬きをしてしまう。

 自分でも素直過ぎるほどのリアクションをしてしまった。

「あきら、怒ってたろ」

「……うん」

「ちょっと、言い過ぎたしな」

 陸が少し寂しそうに言った。

「あきらは応援してくんないかな」

「応援……って……」

「自分でも勝手なのはわかってるよ。けど、俺も引けないからさ」

「陸っ――」

「今回は、絶対に引けないから」

 決意表明のように、真っ直ぐに見つめられて、一瞬呼吸を忘れる。

「けど、お前を追い詰めたいわけじゃない。苦しかったらあきらにでも千尋にでも頼れ。あきらにボロクソに言われて、麻衣が俺を拒んでも恨んだりしねーから」

「十分……追い詰められてるよ……」

「食事に誘っただけだろ」

「けど……」

 そうだ。

 友達と食事に来ただけ。

 けれど、駿介に相手が陸であることや二人きりであることを伝えていない時点で、追い詰められている。



 でも、言わずに自分の首を絞めてるのは私。



「麻衣。彼氏に言えよ」

「え?」

「二年前のことも、今のことも」

「……そんなこと……」

「彼氏に俺と会うなって言われて、お前がその通りにするなら、それでもいい。いくら彼氏に言われたからって、お前が付き合いの長い俺との関係を簡単に切るとは思っていないしな。それでもそうしようと思ったなら、それは麻衣にとって俺より彼氏の方が大切だってことだろ?」

「そう……だけど……」

 陸のこういうところが、好きじゃない。

 私がバカだからなのかもしれないけれど、外堀から埋められているというか、そうは言っても私が陸との関係を断ち切れるなんて思っていないような自信を感じる。

 つまり、口が上手い。



 ずるいよ……。


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