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13.ずっと好きだった男性《ひと》
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昔っから、陸は私にあれこれ指図したり、世話を焼いてくれていた。
バイト先の店長の目つきが気に入らないからやめろ、とか、街灯が少なくて危ないからあの道は通るな、とか、斜め掛けのショルダーバッグは胸が強調されるから禁止、とか。
私だけに……。
私はそういう陸が好きだった。
「で? 陸さんと食事に行くこと、鶴本くんにはなんて言うの?」と言って、あきらが缶に口をつけて渋い顔をした。
「ぬる――」
あきらが新しい缶を取りに立ち上がる。
私は柿の種の袋を指で突き、それから手に取った。
やっぱり、言った方がいいよねぇ。
けど――。
最近、仕事を理由に避けていたから、他の男と食事に行くなんて報告、しにくくて堪らない。
けど、黙ってるのも良くないよね……。
無意識にため息が出る。袋が上手く開かなくて、胸の前で両手に力を込める。
「麻衣」
「ん?」
ようやく袋が開く。
あきらが元の場所に座り、缶を差し出す。
「チューしていい?」
「――は?」
「可愛すぎでしょ」
「缶半分で酔ったの!?」
ハハハッと笑ってから、あきらは缶を開けて勢いよく喉に流し込んだ。
「地球滅亡はオーバーだけどさ」
「うん?」
私も缶を開け、一口飲む。冷たくて美味しい。レモンサワーの炭酸の刺激と酸っぱさに、思わず目を瞑った。
「夜、独りで眠る時に誰を思い出す?」
「え――」
「きっと、そんな単純なことなんだよ」
夜、眠る前――。
さっきまでと打って変わって穏やかな表情のあきらを見ていたら、あきらが眠る前に思い出すのは龍也なんだとわかった。
私は――?
久々にあきらと話をした。
龍也のこと、陸のこと、駿介のこと、千尋のこと、大和とさなえのこと。
たくさん話して、たくさん飲んで、ふと沈黙が訪れ、寝落ちた。目が覚めて、お互いのボロボロの顔に笑った。
「年だなぁ……」とあきらが呟く。
「……だね」と、私が同調した。
それから、ため息交じりに言った。
「干乾びる前に幸せにならなくちゃね」
あきらが大笑いして、頷いた。
バイト先の店長の目つきが気に入らないからやめろ、とか、街灯が少なくて危ないからあの道は通るな、とか、斜め掛けのショルダーバッグは胸が強調されるから禁止、とか。
私だけに……。
私はそういう陸が好きだった。
「で? 陸さんと食事に行くこと、鶴本くんにはなんて言うの?」と言って、あきらが缶に口をつけて渋い顔をした。
「ぬる――」
あきらが新しい缶を取りに立ち上がる。
私は柿の種の袋を指で突き、それから手に取った。
やっぱり、言った方がいいよねぇ。
けど――。
最近、仕事を理由に避けていたから、他の男と食事に行くなんて報告、しにくくて堪らない。
けど、黙ってるのも良くないよね……。
無意識にため息が出る。袋が上手く開かなくて、胸の前で両手に力を込める。
「麻衣」
「ん?」
ようやく袋が開く。
あきらが元の場所に座り、缶を差し出す。
「チューしていい?」
「――は?」
「可愛すぎでしょ」
「缶半分で酔ったの!?」
ハハハッと笑ってから、あきらは缶を開けて勢いよく喉に流し込んだ。
「地球滅亡はオーバーだけどさ」
「うん?」
私も缶を開け、一口飲む。冷たくて美味しい。レモンサワーの炭酸の刺激と酸っぱさに、思わず目を瞑った。
「夜、独りで眠る時に誰を思い出す?」
「え――」
「きっと、そんな単純なことなんだよ」
夜、眠る前――。
さっきまでと打って変わって穏やかな表情のあきらを見ていたら、あきらが眠る前に思い出すのは龍也なんだとわかった。
私は――?
久々にあきらと話をした。
龍也のこと、陸のこと、駿介のこと、千尋のこと、大和とさなえのこと。
たくさん話して、たくさん飲んで、ふと沈黙が訪れ、寝落ちた。目が覚めて、お互いのボロボロの顔に笑った。
「年だなぁ……」とあきらが呟く。
「……だね」と、私が同調した。
それから、ため息交じりに言った。
「干乾びる前に幸せにならなくちゃね」
あきらが大笑いして、頷いた。
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