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13.ずっと好きだった男性《ひと》
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私は持っていた缶を置き、膝の上で手を握り締めた。
「私ね、二年前に陸と――」
私は二年前のことを話した。
ずっと陸が好きだったこと、陸とセックスしたこと、それをなかったことにしたこと。なのに、本当は陸は憶えていて、それをさっき知って動揺してしまったこと。
怖くてあきらの反応は見れなかった。
あきらは黙って、最後まで聞いてくれた。
「――だから、『先に勝手をしたのは、麻衣だ』なんて言ってたんだ」
「え?」
「忘年会の後、陸さんが言ってたの」
勝手……。
確かに、そうだ。
陸が酔っていたことをいいことに、なかったことにした。証拠隠滅して、何もなかったように飲み会に参加して、何もなかったように結婚のお祝いを渡した。
記憶があった陸は、どう思ったろう。
そもそも陸は、どんな想いで私を抱いたのだろう。
考えもしなかった……。
「陸さんが鶴本くんを挑発するようなことをするから、勝手だって言ったの。そしたら、人のことを言えるのかって言い返されちゃった」
「……陸が?」
「うん。珍しく、かなり本気モードだった」
あきらはパリパリとポテトチップスを噛む。
「あと、『このままじゃ、友達にすら戻れない』とも言ってた」
二年前に自分がしたことが、今更ながら間違いだったのではと怖くなる。私がしたことのせいで、陸が悩み続けていたとしたら。それが離婚に繋がったのだとしたら、私はどう償ったらいいのか。
「麻衣は鶴本くん、好き?」
頷いたのは、無意識。
「陸さんよりも?」
頷けなかったのも、無意識。
「じゃあ、地球が滅亡する時、鶴本くんと陸さんのどっちと一緒に居たい?」
「そんなこと――」
「――って、なんで千尋はあんなこと言い出したんだろうね」
あきらがフッと笑う。
「いきなり、地球滅亡の時がどうとかって」
「ああ……」
「私、ハメられた気がする」
「え?」
「あれって、龍也に言わせるためのフリだったよね」
「そうなの!?」
言われて思い返してみれば、確かに龍也の好きな人の話の流れであの質問だ。実際、龍也は被り気味であきらの名前を口にした。
「千尋は知ってたの? その、あきらと龍也のこと」
「うん」
「そうなんだ……」
あきらが千尋に言ったのか、千尋が気づいたのかはわからないけれど、私には話してもらえなかったこと、気づけなかったことがショック。
「私、子供が産めないんだよね」
「――え?」
一瞬、言葉の意味が飲み込めなかった。
きっと、かなり間抜けな顔をしていると思う。
あきらは何でもないような顔で、口を開いた。
「四年前に、子宮を摘出したの。その後でずっと付き合っていた彼と別れて、どん底のところを龍也に救われたの」
子宮を摘出……?
「そんな……。身体はもう大丈夫なの?」
「うん」
龍也との関係以上に、そんな大事なことに気づいてあげられなかったことが悔やまれる。
四年前といえば、さなえが大斗くんを妊娠したころ。
どんな気持ちで祝福していたの――?
「私ね、二年前に陸と――」
私は二年前のことを話した。
ずっと陸が好きだったこと、陸とセックスしたこと、それをなかったことにしたこと。なのに、本当は陸は憶えていて、それをさっき知って動揺してしまったこと。
怖くてあきらの反応は見れなかった。
あきらは黙って、最後まで聞いてくれた。
「――だから、『先に勝手をしたのは、麻衣だ』なんて言ってたんだ」
「え?」
「忘年会の後、陸さんが言ってたの」
勝手……。
確かに、そうだ。
陸が酔っていたことをいいことに、なかったことにした。証拠隠滅して、何もなかったように飲み会に参加して、何もなかったように結婚のお祝いを渡した。
記憶があった陸は、どう思ったろう。
そもそも陸は、どんな想いで私を抱いたのだろう。
考えもしなかった……。
「陸さんが鶴本くんを挑発するようなことをするから、勝手だって言ったの。そしたら、人のことを言えるのかって言い返されちゃった」
「……陸が?」
「うん。珍しく、かなり本気モードだった」
あきらはパリパリとポテトチップスを噛む。
「あと、『このままじゃ、友達にすら戻れない』とも言ってた」
二年前に自分がしたことが、今更ながら間違いだったのではと怖くなる。私がしたことのせいで、陸が悩み続けていたとしたら。それが離婚に繋がったのだとしたら、私はどう償ったらいいのか。
「麻衣は鶴本くん、好き?」
頷いたのは、無意識。
「陸さんよりも?」
頷けなかったのも、無意識。
「じゃあ、地球が滅亡する時、鶴本くんと陸さんのどっちと一緒に居たい?」
「そんなこと――」
「――って、なんで千尋はあんなこと言い出したんだろうね」
あきらがフッと笑う。
「いきなり、地球滅亡の時がどうとかって」
「ああ……」
「私、ハメられた気がする」
「え?」
「あれって、龍也に言わせるためのフリだったよね」
「そうなの!?」
言われて思い返してみれば、確かに龍也の好きな人の話の流れであの質問だ。実際、龍也は被り気味であきらの名前を口にした。
「千尋は知ってたの? その、あきらと龍也のこと」
「うん」
「そうなんだ……」
あきらが千尋に言ったのか、千尋が気づいたのかはわからないけれど、私には話してもらえなかったこと、気づけなかったことがショック。
「私、子供が産めないんだよね」
「――え?」
一瞬、言葉の意味が飲み込めなかった。
きっと、かなり間抜けな顔をしていると思う。
あきらは何でもないような顔で、口を開いた。
「四年前に、子宮を摘出したの。その後でずっと付き合っていた彼と別れて、どん底のところを龍也に救われたの」
子宮を摘出……?
「そんな……。身体はもう大丈夫なの?」
「うん」
龍也との関係以上に、そんな大事なことに気づいてあげられなかったことが悔やまれる。
四年前といえば、さなえが大斗くんを妊娠したころ。
どんな気持ちで祝福していたの――?
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