【ルーズに愛して】私の身体を濡らせたら

深冬 芽以

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13.ずっと好きだった男性《ひと》

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 大和とさなえを見ていれば、早く結婚して子供が欲しいとも思う。

 相手が駿介だとすると、早く、は無理があるかもしれない。



 けれど、私さえしっかりしていれば――。



 そんなことまで考えるようになっていた矢先の、陸の言葉。



 なんで!?



 忘年会の後から、こんなことばかり考えている。

 仕事の忙しさと、なんとなく気まずくて、駿介を避けるようなことまでしてしまっている。



 絶対、気にしてるよね……。



 駿介に、陸のことをどう話していいかわからない。

 友達だと言い切るには、罪悪感。

 好きだった男性ひとと言えば、嫌な思いをさせるに決まっている。

 まして、陸のあの態度。

 絶対、色々疑われる。



 陸、なんで……。



 結局、そこに戻る。

「はぁぁぁ……」

 私は部屋中に響くほどの大きなため息をつき、膝を抱えた。

 クリスマスは来週だと言うのに、プレゼントも買えていない。



 どうしよ……。



 先週、一緒にクリスマスプレゼントを買いに出かけた。色々と見て歩いたけれど、お互いに『これ!』と思えるものが見つからず、買えなかった。あからさまに落ち込む駿介に、『クリスマスに思い入れもないし、無理にプレゼントを交換する必要ないよね』と言ったのは悩ませたくないからだったのに、余計に落ち込ませてしまった。

『初イベントだから……』と呟いた駿介に、私はそれ以上何も言えなかった。



 ホント、どうしよう……。



 私はブサカワな猫を抱いたまま、寝返りを打った。サイドチェストの上のスマホを手に取り、パスコードを打ち込む。

 未読のメッセージがあることを知らされた。


 陸からだった。

 グループではよく話しているけれど、個人では滅多にない。

『明日の夜、食事に行かないか?』

 今日は金曜日。

 ということは、明日は土曜日。

 いつもなら、週末は駿介と過ごしているのだけれど、最近は私が休日出勤しているから、先週も土曜の午後に会っただけ。日曜は、私が部屋の掃除や洗濯をしたいと言って、会わなかった。

 明日も午前は仕事。

 先週のことがあってか、今週は駿介からのお誘いはなかった。



 陸と食事……。



 確認のため、私は正直に聞いた。

『メンバーは?』

 送信と同時に既読が表示される。

『二人で』

 頭の中で、陸の声でそう言われた想像をしてしまう。



 陸と二人で食事……。



 いつもみんなと一緒だ。

 陸と二人きりなんて、あの夜以来。



 いや、ダメだよ。



 いくら友達でも、男の人と二人で食事に行くなんて、駿介に悪い。

 私が『それは』と入力した時、陸から更にメッセージが届いた。

『二年前の話をしよう』



 ……に……ねんま――!



 忘年会の帰りに耳元で囁かれた時以上に、心臓が早鐘を打ち、呼吸すらままならない。



 陸、憶えて――。



『午後六時に迎えに行く』



 拒否権なんてないんじゃない……。



 返事に困って、すごく他人行儀に『了解しました』とお辞儀をする猫のスタンプを送った。



 どうしよう……。


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