【ルーズに愛して】私の身体を濡らせたら

13．ずっと好きだった男性《ひと》

３

　だけど、私の中の陸の感触を忘れるなんて出来なくて、基弘に別れを告げるつもりで会いに行った。そこでプロポーズされたのは、本当に驚いたけれど、私は正直に浮気したことを明かして、謝った。何度も、謝った。

　基弘は、少し強引なところがあるけれど、いい人だった。

　家電好きで、デートは他店の偵察が多く、プレゼントも家電だった。そして、家電と同じくらいお尻が好きで、セックスの時は胸よりお尻を揉まれていた。体位もバック以外に興味はなく、基弘と付き合っていて困ったことと言えばその二点くらいだった。

　一目惚れしたと言って熱心にアプローチされて付き合い始めたからか、彼はとにかく優しく愛してくれた。

　だけど、陸に抱かれてしまった以上、それを隠して基弘のプロポーズを受けることなんてできない。

　それ以前に、その時の私は鶴本くんの指導係として仕事にやりがいを感じていたし、結婚自体考えていなかった。

　浮気したことと別れを告げた私に、基弘は今にも泣きそうな顔で『指輪、買う前で良かった』と言った。

　もっと責められる覚悟だった。

　怒鳴られて、罵られても仕方がないと思っていた。

　だけど、基弘はそうしなかった。

　二年ぶりに再会して、あの頃と変わらずに接してくれたことが、嬉しかった。



　嬉しかったなんて……思う資格もないのに……。



　二年経ち、基弘のことも陸とのことも過去に思えた頃、生意気な新人の指導係もそろそろお役御免となってきた。鶴本くんは外見と本人が言うよりずっと努力家で、優しくて、時々見せる男らしさにドキッとしたりした。

　それでも、彼は七歳も年下で、私は三十を過ぎて将来を考え始めていた。

　実のところ、誰にも内緒で婚活パーティーに参加したことがある。

　予想はしていたけれど、話をした男性に限らず、女性も私の年齢に驚いていた。

　そして、見事に誰とも連絡先を交換できずに帰って来た。

　さすがに誰もが結婚を意識して参加しているから、私をいやらしい目で見るような人はいなかったけれど、選んだパーティーの条件が悪かった。

　その時の私は三十二歳と三か月で、女性の年齢が三十五歳までという参加条件のあるパーティーを選んでしまった。

　条件はクリアしているのだから問題はない。が、問題は何歳からという条件がなかったこと。

　見るからに二十代の女の子がほとんどで、たまに同年代かなと思う人がいても、パーティーを楽しんでいる様子はなく、恐らくあちらも私を見て同じことを思っただろう。目のいい人なら、私の胸の名前と年齢が書かれたプレートが見えたはずだから。

　失敗を糧に次に選んだパーティーは、女性の年齢が三十歳から三十九歳までという条件だった。これならば、参加する女性は私と同年代か上のはずで、三十代前半の私には有利だと考えた。が、そうは単純な話ではなかった。