【ルーズに愛して】私の身体を濡らせたら

深冬 芽以

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12. 湧き上がる不安

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 我ながら、心配性と言うか過保護と言うか、独占欲の塊と言うか。

 麻衣を見送って二時間後には、店の近くのファストフード店にいた。コーヒーとポテトで一時間ほど居座って、二次会に流れたのかなと思って店を出た時に、メッセが届いた。

『これから帰ります』

 俺はすぐさま返信し、店に向かって歩き出した。

『すぐ近くにいるから、迎えに行くね』

 とはいえ、メッセから三分で到着するのは、さすがに引かれないだろうか。そう思って、速度を落とした。が、せいぜい数十秒の違い。

 まぁ、俺の麻衣への過保護っぷりは今更だし、取り繕う意味はあまりない。

 店を視界に捉えた時、ちょうどドアが開いた。出て来た女性に見覚えがあり、ホッとした。

「あの――」

 女性は俺を見て、すぐに思い出してくれたようだった。

「鶴本くん」

 一度会っただけなのに、名前まで覚えていてくれるなんて、ありがたい。

 が、俺の方はうろ覚え。



 なんか、男っぽいカッコいい名前だったはず……。



「こんばんは」

「こんばんは。麻衣を迎えに来たの?」

「はい」

「今、呼ぶね。中で酔った友達を介抱してて――」

「あきら!」



 そうだ、『あきら』!



 勢いよく飛び出してきた男性にも見覚えがあった。あきらさんと一緒に居た人だ。

「あれ? 鶴本くん?」

 この人の名前は覚えている。

 龍也、さん。

 俺のじいちゃんの名前が『たつ』だったから、覚えていた。

「あ、麻衣?」

「はい」

「ちょっと待って。――あ! あきら、勝手に帰んなよ」

 龍也さんはあきらさんを指さしてそう言うと、店に戻った。すぐに再び出てくる。麻衣と一緒に。

「駿介」

 麻衣はわかりやすく、酔ってます、という赤い顔で、気の抜けた笑顔を見せた。

「早かったね。どこにいたの?」

「あ……、うん。あっちの本屋」と、適当なことを言う。

「帰る?」

「ちょっと待ってね。千尋が――友達が潰れちゃったから、彼氏が迎えに来るまで――」

「麻衣、マフラー忘れてるぞ」

 次に店から出て来たのは男性で、酔い潰れた女性に肩を貸していた。更にもう一人、男性が出てくる。手には、麻衣のマフラー。

「ありがと」と言って、麻衣がマフラーを受け取る。

 女性を抱えた男性と目が合った。

「あ! もしかして、麻衣の男?」

 俺を指さしたのは、マフラーを手渡した方の男性だった。

「ヤベ! 若い!」

 明らかに酔った口調で、ずいっと俺に近づいた。

「どーも! 新田大和です。麻衣がお世話になってます」

「あ、鶴本駿介です」と言って、俺はペコッと頭を下げた。
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