【ルーズに愛して】私の身体を濡らせたら

深冬 芽以

文字の大きさ
上 下
86 / 179
11.波乱の忘年会

しおりを挟む
「龍也がそこまで本気とはなぁ」と、大和が感慨深そうにビールを飲む。

「つーか、あきらは? 龍也のことどう思ってんだよ?」と、陸。

「好きでもない男とヤルような女じゃないだろ? お前」

 いくら親しい仲間内でも、いくらお酒の席だとは言っても、なんてことを聞くんだと口を開きかけた時、先に千尋が言葉を発した。

「そんなこと――」

「当たり前じゃないですか!」

 龍也が千尋を遮る。

「あきらはそんな女じゃないですよ。けど、素直じゃないからなかなか認めてくんないだけです」

「そんな、難しいことか?」

「それは――」

「そりゃ、そうよ。仲間内でデキちゃって、ダメんなったら、気まずくて堪んないじゃない」と、千尋。

 いつも冷静で、思ったことをハッキリと言うあきらが、何も言わず俯いている。

 あきらが龍也を好きなのは明白だけれど、素直になれない理由があるのだろう。

 高校の頃からの彼とは、十年近く付き合っていたはずだ。その彼と別れてから、あきらは恋人が出来ても数日や数週間で別れてしまっていた。

 龍也への気持ちに素直になれないのは、その辺の事情からだろうか。

 それに、私にはあきらのことでもう一つ、思い当たることがあった。

「それに、龍也の気持ちがこんだけ本気で、しかも結婚まで考えてるなら、悩まないはずないじゃない」

「えっ!? それって俺が重いってこと?」

「いや、重いってより重すぎだろ。死ぬまで、とか」と、大和。

「じゃあ、結婚してくんなきゃ死んでやる、とか?」

「あーーー……。あきら、じっくり考えろ?」と、陸がため息交じりに言う。

 私も同調した。

「うん、その方がいいよ。龍也がいい奴なのはわかってるけど、さすがに怖いわ」

 あきらの顔を覗き込むと、フッと表情が和らいだ。

「それに、恋愛と結婚は違うからね」

「そうだな。それで失敗した例がここにいるし、じっくり考えろ。週末に会うだけなら、お互いに格好つけていられても、一緒に暮らすとなるとそうはいかないからな」

 陸の言葉に、部屋の空気が冷える。酔いも醒めそうだ。

 内容が内容だけに、流しずらい。

「経験者の言葉、重すぎるよー」と、私はちょっとおどけて言った。

「ありがたいだろ?」と、陸がケラケラと笑う。

「ありがたくないよ!」

「そうよ。あきらが益々尻込みしたら、陸のせいだかんね」

「知るかよ! つーか、千尋と麻衣はどうなんだよ! いくらイギリスに行く前に結婚しろとは言っても、三人立て続けはきついぞ」

「確かに! うちは子供も増えるし、ご祝儀貧乏とかなりたくないぞ」と、大和。

「ああ。私はないない! ってか、そろそろ別れるし」と、千尋がブンブンと手を振って言った。

「はあっ!? なんで? お肌艶々効果がキレたか?」

「なんでよ! 私は前からお肌艶々です!!」

「じゃあ、なんでだよ?」

「もともとそんな真剣な付き合いじゃなかったのよ。私はあきらと違って、『いい男だなー』ってくらいの気持ちでヤレちゃう女なんで」

 その言葉に、ムッとした。

 千尋はそんな、男にだらしない女じゃない。

 私みたいに、男運がない癖に告白されたら断れない、ダメ女じゃない。

 私の大好きな千尋を、たとえ千尋自身でも悪く言って欲しくなかった。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

ヤンデレエリートの執愛婚で懐妊させられます

沖田弥子
恋愛
職場の後輩に恋人を略奪された澪。終業後に堪えきれず泣いていたところを、営業部のエリート社員、天王寺明夜に見つかってしまう。彼に優しく慰められながら居酒屋で事の顛末を話していたが、なぜか明夜と一夜を過ごすことに――!? 明夜は傷心した自分を慰めてくれただけだ、と考える澪だったが、翌朝「責任をとってほしい」と明夜に迫られ、婚姻届にサインしてしまった。突如始まった新婚生活。明夜は澪の心と身体を幸せで満たしてくれていたが、徐々に明夜のヤンデレな一面が見えてきて――執着強めな旦那様との極上溺愛ラブストーリー!

偽装夫婦

詩織
恋愛
付き合って5年になる彼は後輩に横取りされた。 会社も一緒だし行く気がない。 けど、横取りされたからって会社辞めるってアホすぎません?

お酒の席でナンパした相手がまさかの婚約者でした 〜政略結婚のはずだけど、めちゃくちゃ溺愛されてます〜

Adria
恋愛
イタリアに留学し、そのまま就職して楽しい生活を送っていた私は、父からの婚約者を紹介するから帰国しろという言葉を無視し、友人と楽しくお酒を飲んでいた。けれど、そのお酒の場で出会った人はその婚約者で――しかも私を初恋だと言う。 結婚する気のない私と、私を好きすぎて追いかけてきたストーカー気味な彼。 ひょんなことから一緒にイタリアの各地を巡りながら、彼は私が幼少期から抱えていたものを解決してくれた。 気がついた時にはかけがえのない人になっていて―― 表紙絵/灰田様 《エブリスタとムーンにも投稿しています》

溺愛ダーリンと逆シークレットベビー

葉月とに
恋愛
同棲している婚約者のモラハラに悩む優月は、ある日、通院している病院で大学時代の同級生の頼久と再会する。 立派な社会人となっていた彼に見惚れる優月だったが、彼は一児の父になっていた。しかも優月との子どもを一人で育てるシングルファザー。 優月はモラハラから抜け出すことができるのか、そして子どもっていったいどういうことなのか!?

禁断溺愛

流月るる
恋愛
親同士の結婚により、中学三年生の時に湯浅製薬の御曹司・巧と義兄妹になった真尋。新しい家族と一緒に暮らし始めた彼女は、義兄から独占欲を滲ませた態度を取られるようになる。そんな義兄の様子に、真尋の心は揺れ続けて月日は流れ――真尋は、就職を区切りに彼への想いを断ち切るため、義父との養子縁組を解消し、ひっそりと実家を出た。しかし、ほどなくして海外赴任から戻った巧に、その事実を知られてしまう。当然のごとく義兄は大激怒で真尋のマンションに押しかけ、「赤の他人になったのなら、もう遠慮する必要はないな」と、甘く淫らに懐柔してきて……? 切なくて心が甘く疼く大人のエターナル・ラブ。

【ルーズに愛して】指輪を外したら、さようなら

深冬 芽以
恋愛
 インテリアデザイナーの相川千尋《あいかわちひろ》は、よく似た名前の同僚で妻と別居中の有川比呂《ありかわひろ》と不倫関係にある。  ルールは一つ。  二人の関係は、比呂の離婚が成立するまで。  その意味を深く考えずに関係を始めた比呂だったが、今となっては本気で千尋を愛し始めていた。  だが、比呂の気持ちを知っても、頑なにルールを曲げようとしない千尋。  千尋と別れたくない比呂は、もう一つのルールを提案する。  比呂が離婚しない限り、絶対に別れない__。 【ルーズに愛して】シリーズ ~登場人物~  相川千尋《あいかわちひろ》……O大学ルーズサークルOG                 トラスト不動産ホームデザイン部インテリアデザイン課主任                   有川比呂《ありかわひろ》……トラスト不動産ホームデザイン部設計課主任                千尋の同僚                結婚四年、別居一年半の妻がいる  谷龍也《たにたつや》……O大学ルーズサークルOB              |Free Style Production《フリー スタイル プロダクション》営業二課主任  桑畠《くわはた》あきら……O大学ルーズサークルOG               市役所勤務、児童カウンセラー  小笠原陸《おがさわらりく》……O大学ルーズサークルOB                 |Empire HOTEL《エンパイアホテル》支配人    小笠原春奈《おがさわらはるな》……陸の妻                   |Empire HOTEL《エンパイアホテル》のパティシエ  新田大和《にったやまと》……O大学ルーズサークルOB                新田設計事務所副社長                五年前にさなえと結婚  新田《にった》さなえ……O大学ルーズサークルOG  新田大斗《にっただいと》……大和とさなえの息子  亀谷麻衣《かめやまい》……O大学ルーズサークルOG               楠行政書士事務所勤務               婚活中  鶴本駿介《つるもとしゅんすけ》……楠行政書士事務所勤務

エリート課長の脳内は想像の斜め上をいっていた

ピロ子
恋愛
飲み会に参加した後、酔い潰れていた私を押し倒していたのは社内の女子社員が憧れるエリート課長でした。 普段は冷静沈着な課長の脳内は、私には斜め上過ぎて理解不能です。 ※課長の脳内は変態です。 なとみさん主催、「#足フェチ祭り」参加作品です。完結しました。

アダルト漫画家とランジェリー娘

茜色
恋愛
21歳の音原珠里(おとはら・じゅり)は14歳年上のいとこでアダルト漫画家の音原誠也(おとはら・せいや)と二人暮らし。誠也は10年以上前、まだ子供だった珠里を引き取り養い続けてくれた「保護者」だ。 今や社会人となった珠里は、誠也への秘めた想いを胸に、いつまでこの平和な暮らしが許されるのか少し心配な日々を送っていて……。 ☆全22話です。職業等の設定・描写は非常に大雑把で緩いです。ご了承くださいませ。 ☆エピソードによって、ヒロイン視点とヒーロー視点が不定期に入れ替わります。 ☆「ムーンライトノベルズ」様にも投稿しております。

処理中です...