【ルーズに愛して】私の身体を濡らせたら

深冬 芽以

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11.波乱の忘年会

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 そういうことか。

 各席に置かれたドリンクメニューを見ると、名前だけでは想像もつかないような横文字満載。私は、何とか馴染みのありそうな名前を探した。

「あきら、何飲む?」

「いつもの」と、即答。

「梅酒、どこに書いてあるの?」

「麻衣。私にわかると思う?」

 あきらと顔を見合わせて、思わず吹き出してしまった。

「飲みたいお酒があるのか聞くのは、恥じゃないよね」

「とりあえず、ビールか?」と、陸。

「だね」と、千尋。

「大和とさなえもビールでいいかな?」と、私はメニューを見ながら言った。

「あ、さなえは来れるかわかんないって。昨日、大和さんからメッセきたんだけど、最近体調悪いから、って」と言いながら、龍也がスマホを操作する。

「欠席のメッセはきてないけど」

「インフルとか流行ってるもんね」と、あきら。

「お前は? 鼻声じゃね? 大丈夫か?」

 龍也が身を乗り出してあきらに言う。

 あきらが素っ気なく顔を背ける。

「大丈夫」

 大学時代、龍也があきらを好きだったのは知ってる。

 龍也はあからさまにあきらだけ特別扱いだったから。けれど、あきらには長く付き合っていた彼氏がいたから、誰もそれを口にしなかった。

 再会して、こうして飲むようになっても、やっぱり龍也はあきらにだけ特別優しい。



 今でも、好きなのかな……?



 コンコン、とノックの後で、ドアが開いた。

「わり、遅れたか?」と、大和が息を切らして顔を出した。

「まだ、ドリンク選んでたとこ。さなえは?」と、千尋が聞いた。

 ウェイターが大和の後から入って来て、ドアの前に立つ。

 大和は空いている龍也と千尋の間に座った。

「さなえは欠席で。やっぱ調子悪くて」

「置いてきちゃって大丈夫なの?」

「ああ。みんなに顔出せなくて悪い、って伝えてくれって」

 お揃いでしたら、とウェイターがポケットから端末を出した。

 とりあえず、と全員ビールを注文した。

 すぐさま、サラダが運ばれてくる。全員に用意された頃、ビールが届けられた。

「んじゃ!」と、龍也が立ち上がり、グラスを持ち上げた。

「今年もお疲れさまでした! かんぱーい!」

「乾杯!」

 品の良いグラスビールが、それぞれの喉に勢いよく注ぎ込まれる。

 それを見越してか、すぐに二杯目のビールが運ばれてきた。

「ビール以外のご注文はございますか?」とウェイター。

「梅酒、ありますか?」と、あきら。

「ございます」

「サワーで」

「かしこまりました」

「私はフルーツのサワーがいいな」と、私。

「ストロベリーがお勧めです」

「それをお願いします」

「かしこまりました」

 そうこうしている間に、次の料理が運ばれてくる。刺身の盛り合わせ。

「美味しそう!」

「龍也。さなえの分の料理、テイクアウトできないの? 刺身は無理だろうけど――」

「あー、いい、いらない」と、大和。

「どうせ食べらんないから」

「え?」

「つわり、でさ」

「え?」

「え!?」

「マジ!?」

 各自、驚きの声を上げる。

「うそ! おめでとう!!」

 私は興奮のあまり、立ち上がってしまった。

「やった!」
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