【ルーズに愛して】私の身体を濡らせたら

深冬 芽以

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11.波乱の忘年会

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「へぇ、お洒落な店だね」

 忘年会のお店のサイトを見せると、鶴――駿介が言った。

「いつもは居酒屋なんだけどね? いつもより会費が余ってるのか、今回はここなんだって」

「何時に終わる?」

「え?」

 何時だろう、と考えた。



 いつもみたいに女子会に行くなら、日付は変わるよね。



「ごめん! 何でもない」

 すぐに駿介が質問を撤回した。

「束縛みたいで嫌だよね? ごめん」

「え? あ、そう? そこまで考えなかった」

「ホントに?」

「うん」

「それなら、いいんだけど。その、夜道は心配だから、迎えに行こうかな? とか思ってさ」

「ありがと。けど――」

『大丈夫だから』と言おうとして、考えた。

 鶴本くんの表情を見れば、本気で心配してくれているのがわかる。

「何時くらいになるかわかったら連絡するね。遅くなるようならタクシー使うから、それも連絡するから」

「わかった」

 鶴本くんが安心したようにふにゃっと笑う。それから、チュッとキス。

 鶴本くんは私にどこまでも甘い。

 毎日、先週の飲み会の後から、更に甘くなった。

 詳しく聞いていないけれど、駿介のことだから私のことを友達に話したろう。それで、何か言われたのかもしれない。

 とにかく、とにかく! 恥ずかしすぎてふやけてしまうくらい愛されている。

 駅から店までの道を歩いていると、クリスマス仕様にデコレーションされた木々や店の看板が目についた。

 駿介へのクリスマスプレゼントに悩んでいる私は、何かいいものがないかとガラス越しに店内に目を凝らしながら歩いていた。



 七年前って、恋人にどんなプレゼントしてたっけ……。

 そもそも、クリスマスに恋人がいたこと、何回あった?



 そんなことを考えながら歩いていると、ストールで首元を隠し、信号待ちをしている千尋を見つけた。



「千尋!」

 千尋がゆっくりと振り返る。

「麻衣」

「寒いねぇ」

 私は千尋の隣で信号が変わるのを待った。

「ホント。冬の飲み会って、店から出た瞬間に酔いが醒めるんだよね」

「ホント、ホント」

 二人で背中を丸めながら、本日の会場まで歩いた。

「いらっしゃいませ」

 ドアを開けると、ウェイターが颯爽と出迎え、深々と頭を下げる。

「OLCで予約が入っていると思うんですけど」と、私は言った。

「お待ちしておりました。コートをお預かりいたします。ポケットに貴重品がないかご確認ください」

 私と千尋は言われた通りにポケットを確認し、コートを脱いだ。預かりのトランプを渡される。

「どうしたんだろうね? こんなお洒落なお店なんて」

 私は店内を見回しながら言った。

「今回は会費なしじゃなかった?」

「居酒屋でコース頼めるくらいは余ってたはずだけど……」

 OLCは三、四か月おきに集まる。その都度、会費を一万円ずつ集め、ちょっとずつ余ったお金を貯めて、会費なしで飲み食いする。で、その次からはまた会費を払う。

 前回の幹事は千尋と陸。

「幹事が予算に合わせて選んでるから、大丈夫でしょ」

 私と千尋は、ウェイターの後に続いて奥のドアを抜けた。

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