【ルーズに愛して】私の身体を濡らせたら

10．結婚宣言

７

「落ち着け、駿介。お前がベタ惚れなのはわかったから」

　祥平がタブレットを操作する。

「ま――遠藤が麻衣さんを悪く言うからっ――！」

「お、おう。わかった。なんか、人格変わっちまうほど惚れてんだな？」と、馬場。

「だな。遠藤と付き合ってた時と、キャラ違いすぎだろ」と、倫哉。

「どっちかってーと、こっちが素なんだよ」

「そうなのか？」

「多分」

「じゃあ、遠藤と付き合ってた時はなんだ――っ！　――ってぇ」

　空気を読めない馬場に、倫哉の蹴りが入る。

「馬場くん、今のは真綾に失礼だから！」と、弘前が睨みつける。

「わり……」

　馬場が素直に謝るも、真綾はツンとそっぽを向いてワイングラスを傾けた。

　付き合っている時は、赤ワインが似合ういい女だと思っていた。が、今は何だかお高く留まっているようにしか見えない。

　さっきの麻衣さんへの侮辱の言葉といい、こんな女だったのかと幻滅しかない。

　俺は頬杖を突き、真綾を見て言った。

「楽なんだよ。年下だし、給料も麻衣さんより低いし、まだまだ麻衣さんに教えてもらわなきゃわかんねー仕事もあるし、男としては情けないんだけど、背伸びする必要ないし、格好つける必要もないし」

「いや、けど、それでいいのか？　見下されて、遊ばれてんじゃね？」と、倫哉。

「だね。ヒモに近いじゃん」と、弘前。

「そんなんじゃねーよ！　なんつーか……、こう……、気遣いが上手いっつーか……。けど！　気を遣われてばっかでもないっつーか……」

「たとえば？」と、祥平。

「たとえば！　彼氏の元カノに、彼氏を貸して欲しいって言われてＯＫしちゃう、とか」

　真綾も同じように頬杖を突き、俺を見た。

「普通、彼氏を元カノと二人きりにはしないわよね。それが出来ちゃうなんて、よっぽど気遣い上手で余裕があるのか、それほど彼氏のことを好きじゃないのか」

「え？　マジ？　そんなことがあったのかよ？」

　俺と真綾に挟まれた馬場が、首を振って俺たちを交互に見る。

「偶然会った時、駿介と二人で話したい、って言ったら、どうぞ、って。普通は嫌がるわよね」

「ああ、確かに」

「年上の余裕？」

「そういう女性ひとなんだよ！　あの時だって、余裕な振りしてたけど妬いてくれてたし、今日だって、友達は大事にした方がいいって送り出してくれたけど――」

『元カノの隣には座らないでね？』

　麻衣さんの部屋を出る時、耳まで真っ赤にしてそう呟かれて、俺はたまらず抱き締めて、キスをして、もう飲み会なんて行かずにベッドに行きたくなった。もちろん、麻衣さんに諭されて渋々出て来たのだが。



　あの時の麻衣さんの恥ずかしそうな表情かお、思い出しただけで勃つ！