【ルーズに愛して】私の身体を濡らせたら

10．結婚宣言

４

　そんな俺の気持ちもつゆ知らず、麻衣さんは俺に真綾も参加する飲み会に行けと言う。

　信頼されているのか、どうでもいいのか。

　とは言え、麻衣さんの言うことも一理ある。

　俺は、誘いがあった飲み会に参加することにした。

　麻衣さんは、来週末に大学時代の仲間との忘年会があると言っていた。

　それを聞いた時、本庄さんの言葉を思い出した。

『麻衣、まだ大学の時の仲間とつるんでる？』

　どういう意図で聞いたのだろう。



　大学の仲間と仲良すぎて、放っておかれたとか？



　俺はそんな子供染みた嫉妬はしない、とできもしないことを決意してみた。

「お前、ようやく来たな！」

　馬場ばばが相変わらずの大声で言った。

「元気そうだな！！」

「お前もな。そんなでけぇ声で、議員の秘書なんて勤まってんのかよ？」と言いながら、俺は馬場の隣に腰を下ろした。

「ばーか！　仕事中はひたすらオヤジの後ろで大人しくしてんだよ。その反動で、仕事終わったら喋りたくてたまんなくてよ」

「それは、まぁ、大変だな」

「周りはいい迷惑だけどな」と、向いに座っていた祥平しょうへいが言った。

「家が近いから、しょっちゅう飲みに付き合わされんだよ」

「いやー、持つべきものは独り身の友達だよな！」

　馬場が、ガハハッ、と大笑いする。

「彼女がいたって、構わず誘って来るんだろーが！」

「馬場に女が出来ない限り、付きまとわれんぞ」と、祥平の隣の倫哉みちやが言った。

「勘弁しろよ」

　また、馬場がバカ笑いする。

「安心しろ。倫哉は誘わねーから！　弘前ひろさきが怒ったら怖えーかんな」

「誰が怖いって！？」と、倫哉の横から弘前が馬場を睨みつける。

「なんなら、私が付き合ってやってもいーけど？　酔い潰れたら捨てて帰るけど！？　つーか、酔い潰すけど！？」

「んじゃ、次に馬場から連絡来たら、弘前に回すわ」と祥平。

「奈央なおが行くなら、結局俺も行く羽目になんじゃん」と、倫哉。

　倫哉と弘前は、唯一、大学時代から今も別れずにいる恋人。

　馬場は松田まつだと大学三年の一年間付き合って、別れた。理由まではわからないが、二人が別れたと聞いてすぐ、松田が九州の会社に就職が決まったと知った。

　馬場は父親が道議会議員で、跡を継ぐべく大学卒業後は秘書になることが決まっていた。

「いや、これからは駿介を誘うから大丈夫だ！」と言って、馬場が俺の肩に腕を回す。

「あ、俺、無理」

　俺は素っ気なく答え、目の前のビールに口をつけた。

「何だよ？　お前も家、近いだろ？　祥平に聞いたぞ？」

　俺と祥平は同じ高校の出身で、当時は互いの名前と顔を知っているくらいだったが、大学に入ってからつるむようになった。俺と真綾が別れた経緯を詳細に知っているのは、恐らく祥平だけで、卒業後も連絡を取り合っているのも祥平だけ。

　俺が麻衣さんを追っかけて引っ越したことを知ってるのも。