【ルーズに愛して】私の身体を濡らせたら

深冬 芽以

文字の大きさ
上 下
69 / 179
9.彼女の嫉妬と元カレとの再会

しおりを挟む
 腰を抱いていた手で彼女の胸を持ち上げた時、ピロンッと甲高い機械音が鳴った。

 反射的に唇が離れる。

 カップの隣に置いた、俺のスマホがメッセージの受信を知らせたのだ。

 続けざまに三度。

 無視して続ける雰囲気でもなくなって、俺は彼女を逃がさないように片手は腰を抱いたままでもう片方の手を伸ばし、スマホを取った。

 メッセージを開く。

 大学の友達からだった。

「またか……」と、思わず呟く。

 俺は返信せずに、電源を切った。

「どうしたの?」

「ん? 飲み会の誘い。しつこくて」

 気を取り直して、麻衣さんの首筋にキスをする。

「行って来たら?」

「え?」

「行かないと、いつまでも元カノを引きずってるみたいじゃない?」

「別に……どう思われてもいい」

「けど、誘ってくれる友達は大事にした方がいいよ?」

 諭すような言い方に、イラっとした。

 麻衣さんの言いたいことはわかる。彼女も大学時代の仲間と今でも交流があり、近々忘年会をするという。俺が麻衣さんに夢中になり過ぎて、友達もいないのではと心配しているのも知っている。



 けど――。



「ちょうど忘年会シーズンだし――」

「――元カノ、来るけど!?」

「……けど、二人きりってわけじゃないんだし――」

「――つーか! 今のメッセも元カノだけど?」

 こういう時、年上の余裕と言うか、妬いて行くなとも言ってもらえないことに腹が立つ。そんなくだらないことで腹を立てている自分にも。

 で、それを麻衣さんにぶつけてしまった自分に、落ち込む。

「……ごめん」

 真綾相手に、こんなことはなかった。真綾は交友関係が広くて、いつも誰かと一緒だった。ランチだの飲み会だのにいちいち妬いているのが馬鹿らしくなるほど、じっとしていられない女。

 それが、今はどうだ。

 麻衣さんと一緒にいる男なら、顧客や同僚にまで妬いてしまう。

 一緒にいればいるほど、欲深になってしまう。

 俺だけを見ていて欲しい、と。

「ね、駿介」

「――っ!」

 耳元で名前を呼ばれ、鼓動が三倍速で跳ね始める。

「元カノに会いに行くわけじゃないし、友達に駿介が元カノに未練があると思われたままなのは、私も嫌かな?」

「……なんで疑問形?」

「そんなこと――」

「――ちゃんと恋人だったら、行くなって言ってくれた?」

「え?」

 言って、失敗したと思う。いつも。

 子供っぽい拗ねたことを言って嫌われたくないと思う反面、麻衣さんなら受け止めてくれると思うからつい言ってしまう。そうして、彼女の気持ちを確認する。

「俺は、麻衣さんが元カノと飲みとか、嫌だ」

「つ――駿介……」

 俺は麻衣さんの肩に額を押し付け、もたれかかった。

「彼女がいるって、言ってきていい?」

「……っ」

「可愛くて、優しくて、匂いだけで勃っちゃうくらい好きな、年上の彼女がいるって言っていい?」

「――最後のはダメ!」

「年上の?」

「勃っちゃうってとこ!」

「ホントのことだし……」と言って、俺は彼女の腰に、未だ元気なままの息子を押し付けた。

「ね?」

「……もうっ!」

 呆れたような、怒ったような、恥ずかしそうな顔で、またも唇を尖らせた麻衣さんが、それでも少し嬉しそうに見えるのは、俺の願望だろうか。

「好きだよ」

 麻衣さんの全身に触れ、キスをしても、挿れない。

 もっと、もっと、俺を好きになって欲しい。麻衣さんから求めてもらいたい。

 麻衣さんが濡れるか濡れないかは、彼女の気持ち次第だから。

 愛されてると安心できて、愛していると確信出来たら、きっと身体が求めてくれる。



 だから、その時までは挿れない。



 一緒にいればいるほど、愛してやまない女性ひとだから。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

ヤンデレエリートの執愛婚で懐妊させられます

沖田弥子
恋愛
職場の後輩に恋人を略奪された澪。終業後に堪えきれず泣いていたところを、営業部のエリート社員、天王寺明夜に見つかってしまう。彼に優しく慰められながら居酒屋で事の顛末を話していたが、なぜか明夜と一夜を過ごすことに――!? 明夜は傷心した自分を慰めてくれただけだ、と考える澪だったが、翌朝「責任をとってほしい」と明夜に迫られ、婚姻届にサインしてしまった。突如始まった新婚生活。明夜は澪の心と身体を幸せで満たしてくれていたが、徐々に明夜のヤンデレな一面が見えてきて――執着強めな旦那様との極上溺愛ラブストーリー!

偽装夫婦

詩織
恋愛
付き合って5年になる彼は後輩に横取りされた。 会社も一緒だし行く気がない。 けど、横取りされたからって会社辞めるってアホすぎません?

お酒の席でナンパした相手がまさかの婚約者でした 〜政略結婚のはずだけど、めちゃくちゃ溺愛されてます〜

Adria
恋愛
イタリアに留学し、そのまま就職して楽しい生活を送っていた私は、父からの婚約者を紹介するから帰国しろという言葉を無視し、友人と楽しくお酒を飲んでいた。けれど、そのお酒の場で出会った人はその婚約者で――しかも私を初恋だと言う。 結婚する気のない私と、私を好きすぎて追いかけてきたストーカー気味な彼。 ひょんなことから一緒にイタリアの各地を巡りながら、彼は私が幼少期から抱えていたものを解決してくれた。 気がついた時にはかけがえのない人になっていて―― 表紙絵/灰田様 《エブリスタとムーンにも投稿しています》

溺愛ダーリンと逆シークレットベビー

葉月とに
恋愛
同棲している婚約者のモラハラに悩む優月は、ある日、通院している病院で大学時代の同級生の頼久と再会する。 立派な社会人となっていた彼に見惚れる優月だったが、彼は一児の父になっていた。しかも優月との子どもを一人で育てるシングルファザー。 優月はモラハラから抜け出すことができるのか、そして子どもっていったいどういうことなのか!?

禁断溺愛

流月るる
恋愛
親同士の結婚により、中学三年生の時に湯浅製薬の御曹司・巧と義兄妹になった真尋。新しい家族と一緒に暮らし始めた彼女は、義兄から独占欲を滲ませた態度を取られるようになる。そんな義兄の様子に、真尋の心は揺れ続けて月日は流れ――真尋は、就職を区切りに彼への想いを断ち切るため、義父との養子縁組を解消し、ひっそりと実家を出た。しかし、ほどなくして海外赴任から戻った巧に、その事実を知られてしまう。当然のごとく義兄は大激怒で真尋のマンションに押しかけ、「赤の他人になったのなら、もう遠慮する必要はないな」と、甘く淫らに懐柔してきて……? 切なくて心が甘く疼く大人のエターナル・ラブ。

【ルーズに愛して】指輪を外したら、さようなら

深冬 芽以
恋愛
 インテリアデザイナーの相川千尋《あいかわちひろ》は、よく似た名前の同僚で妻と別居中の有川比呂《ありかわひろ》と不倫関係にある。  ルールは一つ。  二人の関係は、比呂の離婚が成立するまで。  その意味を深く考えずに関係を始めた比呂だったが、今となっては本気で千尋を愛し始めていた。  だが、比呂の気持ちを知っても、頑なにルールを曲げようとしない千尋。  千尋と別れたくない比呂は、もう一つのルールを提案する。  比呂が離婚しない限り、絶対に別れない__。 【ルーズに愛して】シリーズ ~登場人物~  相川千尋《あいかわちひろ》……O大学ルーズサークルOG                 トラスト不動産ホームデザイン部インテリアデザイン課主任                   有川比呂《ありかわひろ》……トラスト不動産ホームデザイン部設計課主任                千尋の同僚                結婚四年、別居一年半の妻がいる  谷龍也《たにたつや》……O大学ルーズサークルOB              |Free Style Production《フリー スタイル プロダクション》営業二課主任  桑畠《くわはた》あきら……O大学ルーズサークルOG               市役所勤務、児童カウンセラー  小笠原陸《おがさわらりく》……O大学ルーズサークルOB                 |Empire HOTEL《エンパイアホテル》支配人    小笠原春奈《おがさわらはるな》……陸の妻                   |Empire HOTEL《エンパイアホテル》のパティシエ  新田大和《にったやまと》……O大学ルーズサークルOB                新田設計事務所副社長                五年前にさなえと結婚  新田《にった》さなえ……O大学ルーズサークルOG  新田大斗《にっただいと》……大和とさなえの息子  亀谷麻衣《かめやまい》……O大学ルーズサークルOG               楠行政書士事務所勤務               婚活中  鶴本駿介《つるもとしゅんすけ》……楠行政書士事務所勤務

エリート課長の脳内は想像の斜め上をいっていた

ピロ子
恋愛
飲み会に参加した後、酔い潰れていた私を押し倒していたのは社内の女子社員が憧れるエリート課長でした。 普段は冷静沈着な課長の脳内は、私には斜め上過ぎて理解不能です。 ※課長の脳内は変態です。 なとみさん主催、「#足フェチ祭り」参加作品です。完結しました。

アダルト漫画家とランジェリー娘

茜色
恋愛
21歳の音原珠里(おとはら・じゅり)は14歳年上のいとこでアダルト漫画家の音原誠也(おとはら・せいや)と二人暮らし。誠也は10年以上前、まだ子供だった珠里を引き取り養い続けてくれた「保護者」だ。 今や社会人となった珠里は、誠也への秘めた想いを胸に、いつまでこの平和な暮らしが許されるのか少し心配な日々を送っていて……。 ☆全22話です。職業等の設定・描写は非常に大雑把で緩いです。ご了承くださいませ。 ☆エピソードによって、ヒロイン視点とヒーロー視点が不定期に入れ替わります。 ☆「ムーンライトノベルズ」様にも投稿しております。

処理中です...