【ルーズに愛して】私の身体を濡らせたら

９．彼女の嫉妬と元カレとの再会

５

　恥ずかしさで死ねるなら、この数分で五回は死んでる。

「帰る……」

　まるで、子供ガキだ。

　半泣きで『お家に帰る』と、鶴本少年は言った。

「そんな顔、遠藤さんに見せたこと、ある？」

「え？」

　なぜか麻衣さんは少し嬉しそうに微笑んで、あろうことか顔を俺の股間に埋めた。同時に、身体の芯から痺れる快感が全身に広がった。

「ま……いさ……」

　麻衣さんが俺のモノを咥えてる。

　裏筋を舐め上げられ、尻の穴がキュッと締まった。

「あ……、ん……」

　熱のせいだ。

　恥ずかしいほど感じる声が我慢できない。

　彼女の唾液が俺を濡らし、柔らかい唇から出たり入ったり。その様を見ているだけで、恥ずかしくて嬉しくて、イキそうだった。

　麻衣さんもそれはわかっているようで、早くイかせようとしているらしい。

　ジュポッと卑猥な水音が部屋に響く。

　じゅうっと先端に吸い付かれ、あっけなく限界を迎えた。

「ん――っ！　ふっ……う……」

　思わず麻衣さんの頭を押さえつけ、喉の奥で出してしまった。すぐに気づいて手を離し、彼女の身体を起こす。

「ごめ――」

　麻衣さんの口端から、白く濁った液体が垂れる。俺はテーブルの上のティッシュの箱から素早く数枚を引き抜き、彼女の口に当てた。

「出して！」

　言われた通り、麻衣さんはティッシュの上で口を開いた。

「ごめん。麻衣さん、ごめん」

　麻衣さんはティッシュを丸めると、何も言わずに立ち上がった。洗面所で口をゆすいでいるのが、音で分かる。

　俺はパンツを穿いて、自己嫌悪に項垂れていた。



　こんなんで、好きになってとか……。



「鶴本くん。鍵を貸してくれたら部屋から着替えを持ってくるから、寝てて？」

　洗面所から戻ると、麻衣さんは言った。

「ついでに買い物してくるけど、何か食べたいものある？　あ、寝る前に薬飲んでね」

　テレビボードの引き出しから取っ手付きの透明な箱を出し、更に中から薬の箱を出す。

「あ……と、お水！」

　今度はキッチンに行って、ペットボトルの水を持ってくる。

「鶴本くん？」

　呆けている俺を、麻衣さんが心配そうに覗き込む。

　もう、何が何やらわからない。

「私が部屋に入るの、嫌？　やっぱり、帰る？」

　俺はフルフルと首を振る。

　脱ぎ捨てたジャケットの内ポケットからアパートの鍵を出して、手渡す。

「ベッドの上のスウェット、持って来て」

「ん」

　頭がふわふわする。

「鮭雑炊、食べたい」

「わかった」

　全身がズキズキする。

「麻衣さん……」

「ん？」

　声が震える。

「嫌いにならないで」

　記憶から消したい、弱音。

　けれど、麻衣さんから帰ってきたのは、記憶喪失になっても忘れないだろう一言だった。

「大好きだよ」

　麻衣さんのベッドで、麻衣さんのＴシャツを着て、麻衣さんの匂いに包まれて、麻衣さん愛用の猫を抱いて、眠った。朦朧とする意識の中で、幸せを噛みしめて眠った。