54 / 179
8.彼の嫉妬と元カノとの再会
2
しおりを挟む
そりゃ、もう、色々な考えが頭を巡り、とにかく一旦落ち着くべきだと結論が出た。
私は両手で彼の肩を押し、唇が離れた瞬間大きく息を吸い込む。けれど、呼吸が整うまで時間がかかり、その間に鶴本くんはその場に跪いた。
私を見上げ、コーデュロイのガウチョを両手で下ろす。
「鶴本くんっ!」
私は慌ててガウチョを掴み、勢いよく引き上げた。
なんとか、ベージュのガードルは見られずに済み、ニットの裾を直す。
「ちょっと、落ち着こう」
「無理」と即答すると、鶴本くんは再びガウチョに手をかけた。
「無理って、なんで!?」
「なんでも」
「いや、ちょ――」
ガウチョの引っ張り合いの結果は、あっけなく私の負けに終わった。が、やっぱりベージュのガードルを見られるのは恥ずかしくて、私はガウチョと一緒にしゃがみこんだ。
「そんなに、嫌?」
私のガウチョウに手をかけたまま、私の顔を覗き込む彼は、まさに捨て犬のような寂し気な表情。
ヒートテックのガードルをお尻半分曝け出した状態の私が、寂しがりの恋人に待てを強いているようで、心苦しい。けれど、女としての沽券にかかわる状況に追い込まれているのは私の方。
さらに、今日の下着がシームレスのセットアップだと思い出した。しかも、ベージュ。
「嫌、とかじゃなくて……」
私の持っている下着は、半分がシームレス。着け心地がいいし、大きいサイズも揃っている。そして、そのシームレスは全てベージュ。服の色を選ばないし、この二年は下着を見られる心配もなかったから油断していた。
「ごめん……」
叱られた子犬のように俯く鶴本くんの頭に、耳まで見えてくる。
「だから、嫌なんじゃなくて……場所……が……」
鶴本くんがすくっと立ち上がり、玄関ドアの鍵をかけた。それから、ネクタイを緩める。
「ごめん。焦り過ぎだな」と言うと、靴を脱いだ。
「お邪魔します」
鶴本くんが背を向けた隙に、私はお尻を隠して立ち上がった。
何をそんなに焦っているのかはわからなかったけれど、鶴本くんが落ち着いてくれたことに安堵した。
私もサンダルを脱いで、彼の後に続いてドアを抜け、リビングに入った。
「ご飯、まだだよね? 簡単なものだけど――」
身体をキッチンに向けた途端、背後から抱き締められた。
「ベッド、行こう?」
耳元で囁く彼の声は、甘く熱っぽい。
両手で胸を持ち上げられ、ブラのワイヤーが所定の位置からずれた。
「鶴本くん、どうしたの!?」
「なにが?」
「だって――」
「寂しくて堪んなかった」
耳朶を咥えられ、舌先で舐められ、息を吹きかけられ、次第に頭がボーっとしてくる。
「麻衣さんは寂しくなかった?」
「そういう……わけじゃ……」
「こんなに会えないんじゃ、一年なんてあっと言う間だろ……」
私は両手で彼の肩を押し、唇が離れた瞬間大きく息を吸い込む。けれど、呼吸が整うまで時間がかかり、その間に鶴本くんはその場に跪いた。
私を見上げ、コーデュロイのガウチョを両手で下ろす。
「鶴本くんっ!」
私は慌ててガウチョを掴み、勢いよく引き上げた。
なんとか、ベージュのガードルは見られずに済み、ニットの裾を直す。
「ちょっと、落ち着こう」
「無理」と即答すると、鶴本くんは再びガウチョに手をかけた。
「無理って、なんで!?」
「なんでも」
「いや、ちょ――」
ガウチョの引っ張り合いの結果は、あっけなく私の負けに終わった。が、やっぱりベージュのガードルを見られるのは恥ずかしくて、私はガウチョと一緒にしゃがみこんだ。
「そんなに、嫌?」
私のガウチョウに手をかけたまま、私の顔を覗き込む彼は、まさに捨て犬のような寂し気な表情。
ヒートテックのガードルをお尻半分曝け出した状態の私が、寂しがりの恋人に待てを強いているようで、心苦しい。けれど、女としての沽券にかかわる状況に追い込まれているのは私の方。
さらに、今日の下着がシームレスのセットアップだと思い出した。しかも、ベージュ。
「嫌、とかじゃなくて……」
私の持っている下着は、半分がシームレス。着け心地がいいし、大きいサイズも揃っている。そして、そのシームレスは全てベージュ。服の色を選ばないし、この二年は下着を見られる心配もなかったから油断していた。
「ごめん……」
叱られた子犬のように俯く鶴本くんの頭に、耳まで見えてくる。
「だから、嫌なんじゃなくて……場所……が……」
鶴本くんがすくっと立ち上がり、玄関ドアの鍵をかけた。それから、ネクタイを緩める。
「ごめん。焦り過ぎだな」と言うと、靴を脱いだ。
「お邪魔します」
鶴本くんが背を向けた隙に、私はお尻を隠して立ち上がった。
何をそんなに焦っているのかはわからなかったけれど、鶴本くんが落ち着いてくれたことに安堵した。
私もサンダルを脱いで、彼の後に続いてドアを抜け、リビングに入った。
「ご飯、まだだよね? 簡単なものだけど――」
身体をキッチンに向けた途端、背後から抱き締められた。
「ベッド、行こう?」
耳元で囁く彼の声は、甘く熱っぽい。
両手で胸を持ち上げられ、ブラのワイヤーが所定の位置からずれた。
「鶴本くん、どうしたの!?」
「なにが?」
「だって――」
「寂しくて堪んなかった」
耳朶を咥えられ、舌先で舐められ、息を吹きかけられ、次第に頭がボーっとしてくる。
「麻衣さんは寂しくなかった?」
「そういう……わけじゃ……」
「こんなに会えないんじゃ、一年なんてあっと言う間だろ……」
1
お気に入りに追加
269
あなたにおすすめの小説
ヤンデレエリートの執愛婚で懐妊させられます
沖田弥子
恋愛
職場の後輩に恋人を略奪された澪。終業後に堪えきれず泣いていたところを、営業部のエリート社員、天王寺明夜に見つかってしまう。彼に優しく慰められながら居酒屋で事の顛末を話していたが、なぜか明夜と一夜を過ごすことに――!? 明夜は傷心した自分を慰めてくれただけだ、と考える澪だったが、翌朝「責任をとってほしい」と明夜に迫られ、婚姻届にサインしてしまった。突如始まった新婚生活。明夜は澪の心と身体を幸せで満たしてくれていたが、徐々に明夜のヤンデレな一面が見えてきて――執着強めな旦那様との極上溺愛ラブストーリー!

禁断溺愛
流月るる
恋愛
親同士の結婚により、中学三年生の時に湯浅製薬の御曹司・巧と義兄妹になった真尋。新しい家族と一緒に暮らし始めた彼女は、義兄から独占欲を滲ませた態度を取られるようになる。そんな義兄の様子に、真尋の心は揺れ続けて月日は流れ――真尋は、就職を区切りに彼への想いを断ち切るため、義父との養子縁組を解消し、ひっそりと実家を出た。しかし、ほどなくして海外赴任から戻った巧に、その事実を知られてしまう。当然のごとく義兄は大激怒で真尋のマンションに押しかけ、「赤の他人になったのなら、もう遠慮する必要はないな」と、甘く淫らに懐柔してきて……? 切なくて心が甘く疼く大人のエターナル・ラブ。
お酒の席でナンパした相手がまさかの婚約者でした 〜政略結婚のはずだけど、めちゃくちゃ溺愛されてます〜
Adria
恋愛
イタリアに留学し、そのまま就職して楽しい生活を送っていた私は、父からの婚約者を紹介するから帰国しろという言葉を無視し、友人と楽しくお酒を飲んでいた。けれど、そのお酒の場で出会った人はその婚約者で――しかも私を初恋だと言う。
結婚する気のない私と、私を好きすぎて追いかけてきたストーカー気味な彼。
ひょんなことから一緒にイタリアの各地を巡りながら、彼は私が幼少期から抱えていたものを解決してくれた。
気がついた時にはかけがえのない人になっていて――
表紙絵/灰田様
《エブリスタとムーンにも投稿しています》

溺愛ダーリンと逆シークレットベビー
葉月とに
恋愛
同棲している婚約者のモラハラに悩む優月は、ある日、通院している病院で大学時代の同級生の頼久と再会する。
立派な社会人となっていた彼に見惚れる優月だったが、彼は一児の父になっていた。しかも優月との子どもを一人で育てるシングルファザー。
優月はモラハラから抜け出すことができるのか、そして子どもっていったいどういうことなのか!?
アダルト漫画家とランジェリー娘
茜色
恋愛
21歳の音原珠里(おとはら・じゅり)は14歳年上のいとこでアダルト漫画家の音原誠也(おとはら・せいや)と二人暮らし。誠也は10年以上前、まだ子供だった珠里を引き取り養い続けてくれた「保護者」だ。
今や社会人となった珠里は、誠也への秘めた想いを胸に、いつまでこの平和な暮らしが許されるのか少し心配な日々を送っていて……。
☆全22話です。職業等の設定・描写は非常に大雑把で緩いです。ご了承くださいませ。
☆エピソードによって、ヒロイン視点とヒーロー視点が不定期に入れ替わります。
☆「ムーンライトノベルズ」様にも投稿しております。


【完結】溺愛予告~御曹司の告白躱します~
蓮美ちま
恋愛
モテる彼氏はいらない。
嫉妬に身を焦がす恋愛はこりごり。
だから、仲の良い同期のままでいたい。
そう思っているのに。
今までと違う甘い視線で見つめられて、
“女”扱いしてるって私に気付かせようとしてる気がする。
全部ぜんぶ、勘違いだったらいいのに。
「勘違いじゃないから」
告白したい御曹司と
告白されたくない小ボケ女子
ラブバトル開始
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる