【ルーズに愛して】私の身体を濡らせたら

深冬 芽以

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8.彼の嫉妬と元カノとの再会

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 そりゃ、もう、色々な考えが頭を巡り、とにかく一旦落ち着くべきだと結論が出た。

 私は両手で彼の肩を押し、唇が離れた瞬間大きく息を吸い込む。けれど、呼吸が整うまで時間がかかり、その間に鶴本くんはその場に跪いた。

 私を見上げ、コーデュロイのガウチョを両手で下ろす。

「鶴本くんっ!」

 私は慌ててガウチョを掴み、勢いよく引き上げた。

 なんとか、ベージュのガードルは見られずに済み、ニットの裾を直す。

「ちょっと、落ち着こう」

「無理」と即答すると、鶴本くんは再びガウチョに手をかけた。

「無理って、なんで!?」

「なんでも」

「いや、ちょ――」

 ガウチョの引っ張り合いの結果は、あっけなく私の負けに終わった。が、やっぱりベージュのガードルを見られるのは恥ずかしくて、私はガウチョと一緒にしゃがみこんだ。

「そんなに、嫌?」

 私のガウチョウに手をかけたまま、私の顔を覗き込む彼は、まさに捨て犬のような寂し気な表情。

 ヒートテックのガードルをお尻半分曝け出した状態の私が、寂しがりの恋人に待てを強いているようで、心苦しい。けれど、女としての沽券にかかわる状況に追い込まれているのは私の方。

 さらに、今日の下着がシームレスのセットアップだと思い出した。しかも、ベージュ。

「嫌、とかじゃなくて……」

 私の持っている下着は、半分がシームレス。着け心地がいいし、大きいサイズも揃っている。そして、そのシームレスは全てベージュ。服の色を選ばないし、この二年は下着を見られる心配もなかったから油断していた。

「ごめん……」

 叱られた子犬のように俯く鶴本くんの頭に、耳まで見えてくる。

「だから、嫌なんじゃなくて……場所……が……」

 鶴本くんがすくっと立ち上がり、玄関ドアの鍵をかけた。それから、ネクタイを緩める。

「ごめん。焦り過ぎだな」と言うと、靴を脱いだ。

「お邪魔します」

 鶴本くんが背を向けた隙に、私はお尻を隠して立ち上がった。

 何をそんなに焦っているのかはわからなかったけれど、鶴本くんが落ち着いてくれたことに安堵した。

 私もサンダルを脱いで、彼の後に続いてドアを抜け、リビングに入った。

「ご飯、まだだよね? 簡単なものだけど――」

 身体をキッチンに向けた途端、背後から抱き締められた。

「ベッド、行こう?」

 耳元で囁く彼の声は、甘く熱っぽい。

 両手で胸を持ち上げられ、ブラのワイヤーが所定の位置からずれた。

「鶴本くん、どうしたの!?」

「なにが?」

「だって――」

「寂しくて堪んなかった」

 耳朶を咥えられ、舌先で舐められ、息を吹きかけられ、次第に頭がボーっとしてくる。

「麻衣さんは寂しくなかった?」

「そういう……わけじゃ……」

「こんなに会えないんじゃ、一年なんてあっと言う間だろ……」
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