41 / 179
6.女子会
4
しおりを挟む
私はアイスティー、さなえはカフェオレを持ってテーブルに戻る。今度は千尋が席を立った。
「あきら、飲み物いいの?」
「千尋に頼んだ」
「そっか」
すぐに、千尋がアイスコーヒーのグラスを二つ、持って戻ってきた。
「それで? 鶴本くんもやっぱり大きい方が好きだって?」
「え?」
千尋がにやにやしながら、私の胸を見た。
淡いピンクのニットは胸が強調されるからあまり着ていなかったけれど、今日は女子会だしいいかなと思った。あんまりしまっておくと、傷んでしまう。
何となく、明るい色の服を着たい気分だったのは、鶴本くんが理由じゃない。
「千尋。顔がエロおやじみたいになってる」と、あきらがスパッと言った。
「ひどっ!」
「いいじゃない。大抵の男は大きい方が好きだろうし? 胸が好き、じゃなくて、胸も好き、なら問題ないよ」
さなえが飲み物と一緒に持って来たゼリーをちゅるんとすすった。
「それに、子供を産んだらしぼんじゃうんだから、綺麗なうちに堪能してもらったらいいよ」
私たち三人は、顔を見合わせた。
この前といい、今といい、どうもさなえらしくない。
「ねぇ、さなえ」
私とあきらが言葉を選んでいる間に、千尋が切り出した。こういう時は、やっぱり千尋だ。
「大和のこと、怒ってるの?」
「なんで?」
「この前の飲み会、さなえが帰った後に大和から話を聞いたけど、悩みっていうかストレス溜まってたりしない?」
「……そんなこと……」
さなえが目を伏せる。
「大和、さなえが隠れて泣いてたの、こたえたみたいよ」と、あきらが言った。
その声は、優しい。
「さなえに色々我慢させてるんじゃないかって、気にしてたよ」と、私。
「たまには愚痴を言って、家事ボイコットしてやったらいいんだよ」と、千尋。
さなえの肩が小刻みに震え、泣いているような気がした。
「さなえ?」
「大斗を妊娠してから……シてないの……」
グズッと、さなえが鼻をすすった。
「もうずっと、キスも――」
「え!?」
大学時代の大和とさなえは、仲が良かった。見てる私たちが恥ずかしくなるくらい、いつもひっついていた。
私は、さなえが羨ましかった。
そういう印象が強すぎて、いつまでも変わらない関係なんてないとわかっていても、驚いた。
私はバッグからミニタオルを取り出し、さなえに手渡した。さなえがそれで涙を拭う。
「大和から誘われたりしないの?」
日曜のランチタイムに堂々と話せることではなく、千尋は少し小声で聞いた。
さなえが無言で首を振る。
「さなえからは?」
首を振る。
「寝室は? 一緒?」と、あきらが聞いた。
首を振る。
「大斗の夜泣きとか、私以外を受け付けない時期があって、寝室を別にしたの。それから、ずっと別で……」
「え!? そうなの?」と、思わず声を弾ませてしまった。
「最近の夫婦には多いみたいよ? 寝室を別にして、戻せないままレスになるって」
さなえは興味津々に聞いている。
「あきら、飲み物いいの?」
「千尋に頼んだ」
「そっか」
すぐに、千尋がアイスコーヒーのグラスを二つ、持って戻ってきた。
「それで? 鶴本くんもやっぱり大きい方が好きだって?」
「え?」
千尋がにやにやしながら、私の胸を見た。
淡いピンクのニットは胸が強調されるからあまり着ていなかったけれど、今日は女子会だしいいかなと思った。あんまりしまっておくと、傷んでしまう。
何となく、明るい色の服を着たい気分だったのは、鶴本くんが理由じゃない。
「千尋。顔がエロおやじみたいになってる」と、あきらがスパッと言った。
「ひどっ!」
「いいじゃない。大抵の男は大きい方が好きだろうし? 胸が好き、じゃなくて、胸も好き、なら問題ないよ」
さなえが飲み物と一緒に持って来たゼリーをちゅるんとすすった。
「それに、子供を産んだらしぼんじゃうんだから、綺麗なうちに堪能してもらったらいいよ」
私たち三人は、顔を見合わせた。
この前といい、今といい、どうもさなえらしくない。
「ねぇ、さなえ」
私とあきらが言葉を選んでいる間に、千尋が切り出した。こういう時は、やっぱり千尋だ。
「大和のこと、怒ってるの?」
「なんで?」
「この前の飲み会、さなえが帰った後に大和から話を聞いたけど、悩みっていうかストレス溜まってたりしない?」
「……そんなこと……」
さなえが目を伏せる。
「大和、さなえが隠れて泣いてたの、こたえたみたいよ」と、あきらが言った。
その声は、優しい。
「さなえに色々我慢させてるんじゃないかって、気にしてたよ」と、私。
「たまには愚痴を言って、家事ボイコットしてやったらいいんだよ」と、千尋。
さなえの肩が小刻みに震え、泣いているような気がした。
「さなえ?」
「大斗を妊娠してから……シてないの……」
グズッと、さなえが鼻をすすった。
「もうずっと、キスも――」
「え!?」
大学時代の大和とさなえは、仲が良かった。見てる私たちが恥ずかしくなるくらい、いつもひっついていた。
私は、さなえが羨ましかった。
そういう印象が強すぎて、いつまでも変わらない関係なんてないとわかっていても、驚いた。
私はバッグからミニタオルを取り出し、さなえに手渡した。さなえがそれで涙を拭う。
「大和から誘われたりしないの?」
日曜のランチタイムに堂々と話せることではなく、千尋は少し小声で聞いた。
さなえが無言で首を振る。
「さなえからは?」
首を振る。
「寝室は? 一緒?」と、あきらが聞いた。
首を振る。
「大斗の夜泣きとか、私以外を受け付けない時期があって、寝室を別にしたの。それから、ずっと別で……」
「え!? そうなの?」と、思わず声を弾ませてしまった。
「最近の夫婦には多いみたいよ? 寝室を別にして、戻せないままレスになるって」
さなえは興味津々に聞いている。
0
お気に入りに追加
269
あなたにおすすめの小説
お知らせ有り※※束縛上司!~溺愛体質の上司の深すぎる愛情~
ひなの琴莉
恋愛
イケメンで完璧な上司は自分にだけなぜかとても過保護でしつこい。そんな店長に秘密を握られた。秘密をすることに交換条件として色々求められてしまう。 溺愛体質のヒーロー☓地味子。ドタバタラブコメディ。
2021/3/10
しおりを挟んでくださっている皆様へ。
こちらの作品はすごく昔に書いたのをリメイクして連載していたものです。
しかし、古い作品なので……時代背景と言うか……いろいろ突っ込みどころ満載で、修正しながら書いていたのですが、やはり難しかったです(汗)
楽しい作品に仕上げるのが厳しいと判断し、連載を中止させていただくことにしました。
申しわけありません。
新作を書いて更新していきたいと思っていますので、よろしくお願いします。
お詫びに過去に書いた原文のママ載せておきます。
修正していないのと、若かりし頃の作品のため、
甘めに見てくださいm(__)m
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
Sweet Healing~真摯な上司の、その唇に癒されて~
汐埼ゆたか
恋愛
絶え間なく溢れ出る涙は彼の唇に吸い取られ
慟哭だけが薄暗い部屋に沈んでいく。
その夜、彼女の絶望と悲しみをすくい取ったのは
仕事上でしか接点のない上司だった。
思っていることを口にするのが苦手
地味で大人しい司書
木ノ下 千紗子 (きのした ちさこ) (24)
×
真面目で優しい千紗子の上司
知的で容姿端麗な課長
雨宮 一彰 (あまみや かずあき) (29)
胸を締め付ける切ない想いを
抱えているのはいったいどちらなのか———
「叫んでも暴れてもいい、全部受け止めるから」
「君が笑っていられるなら、自分の気持ちなんてどうでもいい」
「その可愛い笑顔が戻るなら、俺は何でも出来そうだよ」
真摯でひたむきな愛が、傷付いた心を癒していく。
**********
►Attention
※他サイトからの転載(2018/11に書き上げたものです)
※表紙は「かんたん表紙メーカー2」様で作りました。
※※この物語はフィクションです。登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。
お見合いから始まる冷徹社長からの甘い執愛 〜政略結婚なのに毎日熱烈に追いかけられてます〜
Adria
恋愛
仕事ばかりをしている娘の将来を案じた両親に泣かれて、うっかり頷いてしまった瑞希はお見合いに行かなければならなくなった。
渋々お見合いの席に行くと、そこにいたのは瑞希の勤め先の社長だった!?
合理的で無駄が嫌いという噂がある冷徹社長を前にして、瑞希は「冗談じゃない!」と、その場から逃亡――
だが、ひょんなことから彼に瑞希が自社の社員であることがバレてしまうと、彼は結婚前提の同棲を迫ってくる。
「君の未来をくれないか?」と求愛してくる彼の強引さに翻弄されながらも、瑞希は次第に溺れていき……
《エブリスタ、ムーン、ベリカフェにも投稿しています》
冷徹上司の、甘い秘密。
青花美来
恋愛
うちの冷徹上司は、何故か私にだけ甘い。
「頼む。……この事は誰にも言わないでくれ」
「別に誰も気にしませんよ?」
「いや俺が気にする」
ひょんなことから、課長の秘密を知ってしまいました。
※同作品の全年齢対象のものを他サイト様にて公開、完結しております。
ウブな政略妻は、ケダモノ御曹司の執愛に堕とされる
Adria
恋愛
旧題:紳士だと思っていた初恋の人は私への恋心を拗らせた執着系ドSなケダモノでした
ある日、父から持ちかけられた政略結婚の相手は、学生時代からずっと好きだった初恋の人だった。
でも彼は来る縁談の全てを断っている。初恋を実らせたい私は副社長である彼の秘書として働くことを決めた。けれど、何の進展もない日々が過ぎていく。だが、ある日会社に忘れ物をして、それを取りに会社に戻ったことから私たちの関係は急速に変わっていった。
彼を知れば知るほどに、彼が私への恋心を拗らせていることを知って戸惑う反面嬉しさもあり、私への執着を隠さない彼のペースに翻弄されていく……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる