【ルーズに愛して】私の身体を濡らせたら

深冬 芽以

文字の大きさ
上 下
34 / 179
5.濡れない身体

しおりを挟む
「気持ち良くない?」

 気持ちいいとは思う。

 思うけれど、小説や漫画のように頭が真っ白になるとか、わけが分からなくなるほどではない。

 意地になっているのか、鶴本くんの舌の動きが加速する。ペロペロと舌先だけで舐めていたのが、舌の表面で大きく舐め上げられたり、吸いつかれたりする。

「んんっ――!」

 声を殺すのが辛くなってきた。

 時々鶴本くんが指先を入口に当てるけれど、押し入ってくることはしなかった。

 気持ちいい。

 気持ちいいけれど、それを悟られるのは恥ずかしい。

「膨らんで硬くなってきたね」

「そういうこと……言わないで」

「なんで? 恥ずかしいこと言われて感じたりしない?」



 さっきから思ってたけど、鶴本くんてセックスに慣れてる……?



 別に、おかしなことじゃない。

 モテそうだし、年齢的に何人かの彼女はいたろうし。けれど、やけに慣れてる風で、顔を真っ赤にして私を好きだと言った割には、セックスに関しては余裕なのが、なぜか胸をざわつかせた。

 鶴本くんの人柄はわかっているつもり。不誠実な人じゃない。けれど、私が知っているのは、仕事をしている時の彼の『社会人』の顔であって、『男』の顔じゃない。

 実は女好きで節操がないとか、変態的なプレイが好きだとか、そんなことは知る由もない。



 そうよ。

 鶴本くんは今までの男とは違うなんて、どうしてわかる?

 今までだってそうやって痛い目を見てきたじゃない――。



「麻衣さん?」

 名前を呼ばれて我に返ると、鶴本くんが私を見下ろしていた。

「なに、考えてました?」

「え」

 鶴本くんが私の腕を掴んで、抱き起した。

「すいません」

「なに……が……?」

「急ぎ過ぎました」

 見ると、なぜか鶴本くんは正座をしていた。悪いことをして反省しているよう。

「シャワー使ってください。妹のシャンプーとか色々あるんで、適当に使っていいんで」

「妹?」

「はい。たまに泊まりに来るんです。あ、メイク落としも妹のです」

 なるほど。

「元カノのとか思いました?」

「え? いや……」

 思いました。

 普通は、そう思うでしょう。

「それはないですよ。この部屋に住むようになってから、彼女いたことないんで」



 鶴本くんが引っ越したのって入社した年じゃない……?



 私が何を考えているのか察したらしく、鶴本くんがニヤリと得意気な笑みを浮かべた。

 ずいっと顔を近づける。

「入社してから三年近く、俺は麻衣さん一筋なんで」

「嘘……」

「本当です」

「ゴム、あったじゃない。残り少なかった」

「あれも妹です……」と言って、鶴本くんがため息をついた。

 頭をポリポリと掻く。

 くるっと丸まった前髪が一束、目にかかった。整えている仕事の時とは違い、くせっ毛なのがよく分かる。

 さっき触れた彼の髪の柔らかさを思い出す。

以前まえに妊娠したかもって騒いだことがあって、念のために俺が買っておいたんです。たまに来て、何個かずつ持って行くんですよ」

「仲……いいんだ」

 正直、異性の兄妹でそんなことするのかと驚いた。

「つーか、危なっかしいんですよ。俺だって妹のセックス事情なんて知りたくないですけど、さすがに妊娠は心配なんで」

「そっか……」
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

ヤンデレエリートの執愛婚で懐妊させられます

沖田弥子
恋愛
職場の後輩に恋人を略奪された澪。終業後に堪えきれず泣いていたところを、営業部のエリート社員、天王寺明夜に見つかってしまう。彼に優しく慰められながら居酒屋で事の顛末を話していたが、なぜか明夜と一夜を過ごすことに――!? 明夜は傷心した自分を慰めてくれただけだ、と考える澪だったが、翌朝「責任をとってほしい」と明夜に迫られ、婚姻届にサインしてしまった。突如始まった新婚生活。明夜は澪の心と身体を幸せで満たしてくれていたが、徐々に明夜のヤンデレな一面が見えてきて――執着強めな旦那様との極上溺愛ラブストーリー!

偽装夫婦

詩織
恋愛
付き合って5年になる彼は後輩に横取りされた。 会社も一緒だし行く気がない。 けど、横取りされたからって会社辞めるってアホすぎません?

お酒の席でナンパした相手がまさかの婚約者でした 〜政略結婚のはずだけど、めちゃくちゃ溺愛されてます〜

Adria
恋愛
イタリアに留学し、そのまま就職して楽しい生活を送っていた私は、父からの婚約者を紹介するから帰国しろという言葉を無視し、友人と楽しくお酒を飲んでいた。けれど、そのお酒の場で出会った人はその婚約者で――しかも私を初恋だと言う。 結婚する気のない私と、私を好きすぎて追いかけてきたストーカー気味な彼。 ひょんなことから一緒にイタリアの各地を巡りながら、彼は私が幼少期から抱えていたものを解決してくれた。 気がついた時にはかけがえのない人になっていて―― 表紙絵/灰田様 《エブリスタとムーンにも投稿しています》

溺愛ダーリンと逆シークレットベビー

葉月とに
恋愛
同棲している婚約者のモラハラに悩む優月は、ある日、通院している病院で大学時代の同級生の頼久と再会する。 立派な社会人となっていた彼に見惚れる優月だったが、彼は一児の父になっていた。しかも優月との子どもを一人で育てるシングルファザー。 優月はモラハラから抜け出すことができるのか、そして子どもっていったいどういうことなのか!?

禁断溺愛

流月るる
恋愛
親同士の結婚により、中学三年生の時に湯浅製薬の御曹司・巧と義兄妹になった真尋。新しい家族と一緒に暮らし始めた彼女は、義兄から独占欲を滲ませた態度を取られるようになる。そんな義兄の様子に、真尋の心は揺れ続けて月日は流れ――真尋は、就職を区切りに彼への想いを断ち切るため、義父との養子縁組を解消し、ひっそりと実家を出た。しかし、ほどなくして海外赴任から戻った巧に、その事実を知られてしまう。当然のごとく義兄は大激怒で真尋のマンションに押しかけ、「赤の他人になったのなら、もう遠慮する必要はないな」と、甘く淫らに懐柔してきて……? 切なくて心が甘く疼く大人のエターナル・ラブ。

【ルーズに愛して】指輪を外したら、さようなら

深冬 芽以
恋愛
 インテリアデザイナーの相川千尋《あいかわちひろ》は、よく似た名前の同僚で妻と別居中の有川比呂《ありかわひろ》と不倫関係にある。  ルールは一つ。  二人の関係は、比呂の離婚が成立するまで。  その意味を深く考えずに関係を始めた比呂だったが、今となっては本気で千尋を愛し始めていた。  だが、比呂の気持ちを知っても、頑なにルールを曲げようとしない千尋。  千尋と別れたくない比呂は、もう一つのルールを提案する。  比呂が離婚しない限り、絶対に別れない__。 【ルーズに愛して】シリーズ ~登場人物~  相川千尋《あいかわちひろ》……O大学ルーズサークルOG                 トラスト不動産ホームデザイン部インテリアデザイン課主任                   有川比呂《ありかわひろ》……トラスト不動産ホームデザイン部設計課主任                千尋の同僚                結婚四年、別居一年半の妻がいる  谷龍也《たにたつや》……O大学ルーズサークルOB              |Free Style Production《フリー スタイル プロダクション》営業二課主任  桑畠《くわはた》あきら……O大学ルーズサークルOG               市役所勤務、児童カウンセラー  小笠原陸《おがさわらりく》……O大学ルーズサークルOB                 |Empire HOTEL《エンパイアホテル》支配人    小笠原春奈《おがさわらはるな》……陸の妻                   |Empire HOTEL《エンパイアホテル》のパティシエ  新田大和《にったやまと》……O大学ルーズサークルOB                新田設計事務所副社長                五年前にさなえと結婚  新田《にった》さなえ……O大学ルーズサークルOG  新田大斗《にっただいと》……大和とさなえの息子  亀谷麻衣《かめやまい》……O大学ルーズサークルOG               楠行政書士事務所勤務               婚活中  鶴本駿介《つるもとしゅんすけ》……楠行政書士事務所勤務

エリート課長の脳内は想像の斜め上をいっていた

ピロ子
恋愛
飲み会に参加した後、酔い潰れていた私を押し倒していたのは社内の女子社員が憧れるエリート課長でした。 普段は冷静沈着な課長の脳内は、私には斜め上過ぎて理解不能です。 ※課長の脳内は変態です。 なとみさん主催、「#足フェチ祭り」参加作品です。完結しました。

アダルト漫画家とランジェリー娘

茜色
恋愛
21歳の音原珠里(おとはら・じゅり)は14歳年上のいとこでアダルト漫画家の音原誠也(おとはら・せいや)と二人暮らし。誠也は10年以上前、まだ子供だった珠里を引き取り養い続けてくれた「保護者」だ。 今や社会人となった珠里は、誠也への秘めた想いを胸に、いつまでこの平和な暮らしが許されるのか少し心配な日々を送っていて……。 ☆全22話です。職業等の設定・描写は非常に大雑把で緩いです。ご了承くださいませ。 ☆エピソードによって、ヒロイン視点とヒーロー視点が不定期に入れ替わります。 ☆「ムーンライトノベルズ」様にも投稿しております。

処理中です...