【ルーズに愛して】私の身体を濡らせたら

深冬 芽以

文字の大きさ
上 下
10 / 179
2.OLC

しおりを挟む

「大丈夫。レストランを出たところで陸に助けてもらったから」

「――ってか、なんでホテルで食事なんかしたのよ。下心ありありじゃない」

「人目があるし……。陸のホテルだったから、大丈夫かなと思って」

「いや、大丈夫じゃないだろ」と、大和が言った。

「そうだぞ。俺がいない時だったらどうすんだよ」と、陸も続ける。

「そうなんだけどね?」



 わかってたんだけど……。



「なんかあったの?」と、あきらが聞いた。

「麻衣がそんなあからさまな誘いに乗るなんて、珍しいね」



 そうなんだよね……。



「……後輩の……挑発に乗っちゃった感じ?」

 適当に誤魔化しても良かったのだけれど、そんな必要もないかと、正直に話した。

「後輩?」

「前に言ってた、教育係してやってる奴?」と、大和が言った。

 憶えていたことに、少し驚いた。

「そ。生意気なこと言うから、つい……」

「つい、じゃねーだろ。そんな挑発に乗って何かあっても自己責任だぞ」と、陸が子供を叱るように言った。

 こんな風に言ってもらえるのが、嬉しい。心配してくれてるって、実感できるから。

「とにかく! あの男とはもう会うなよ? ここだけの話、あいつはうちの常連だけど、女はいつも違うし、プロを呼んでることもあるらしい」

「プロ?」

「デリヘル嬢とか?」と、あきらも聞く。

「らしい」



 マジで……?



 背筋がゾッとする。

 飲まずにはいられない。



 その子は制服を着せられたのだろうか……。



 私はジョッキ半分のビールを、半分口に入れた。

「うわ、最低!」と、さなえが嫌悪を込めて言った。

「麻衣、ダメだよ。二人きりになっちゃ」と、千尋。

「うん……」

 もう、泣きたい。

「なんで……私には変な男ばっか……」

 私は右手にジョッキ、左手は拳を握った。

「整形する! 顔を変えて、胸を小さくする!」

 それから、ビールを飲み干した。

 タイミングよく店員が追加のビールを運んできて、私はすかさず空のジョッキと交換した。

「変態じゃない男に好かれたい……」

 毎回、言っている気がする。

 冷えたビールを一口飲むと、身体がポカポカしてきた。

「結婚相談所……でも登録しようかな」

「結婚したいの?」と、千尋。

「したい。結婚して子供を産めば、変態も寄って来ないでしょ」

「まぁ……、確かに?」

「けど、変態じゃない恋人より、変態じゃない結婚相手の方が、ハードル高くない?」と、、あきらが言った。

「だから! そこはプロにお任せするの」

「相談所に提出するプロフィールに、性癖まで書く奴はいないだろ」と、大和がエイヒレを銜えて言った。

「それに、変態じゃなきゃ誰でもいいわけでもないだろ」

「麻衣さんの後輩は?」

 黙って聞いていた龍也が言った。



 ん? 鶴本くん!?




「若くて、何年も一緒に働いてるけど、変態じゃないんでしょ?」

「やめてよ! 七歳も年下だよ? 軽いし!」

 必死で拒絶している自分に、驚いた。それを誤魔化すように、ビールを飲む。

「その子に挑発されたって、具体的に何を言われたの?」と、千尋が鶏串を銜えながら言った。

 私はポテトを一本摘まみ、口に入れた。

「……私なんか、モテる高井さんが本気で相手するはずない……って」
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

ヤンデレエリートの執愛婚で懐妊させられます

沖田弥子
恋愛
職場の後輩に恋人を略奪された澪。終業後に堪えきれず泣いていたところを、営業部のエリート社員、天王寺明夜に見つかってしまう。彼に優しく慰められながら居酒屋で事の顛末を話していたが、なぜか明夜と一夜を過ごすことに――!? 明夜は傷心した自分を慰めてくれただけだ、と考える澪だったが、翌朝「責任をとってほしい」と明夜に迫られ、婚姻届にサインしてしまった。突如始まった新婚生活。明夜は澪の心と身体を幸せで満たしてくれていたが、徐々に明夜のヤンデレな一面が見えてきて――執着強めな旦那様との極上溺愛ラブストーリー!

お酒の席でナンパした相手がまさかの婚約者でした 〜政略結婚のはずだけど、めちゃくちゃ溺愛されてます〜

Adria
恋愛
イタリアに留学し、そのまま就職して楽しい生活を送っていた私は、父からの婚約者を紹介するから帰国しろという言葉を無視し、友人と楽しくお酒を飲んでいた。けれど、そのお酒の場で出会った人はその婚約者で――しかも私を初恋だと言う。 結婚する気のない私と、私を好きすぎて追いかけてきたストーカー気味な彼。 ひょんなことから一緒にイタリアの各地を巡りながら、彼は私が幼少期から抱えていたものを解決してくれた。 気がついた時にはかけがえのない人になっていて―― 表紙絵/灰田様 《エブリスタとムーンにも投稿しています》

溺愛ダーリンと逆シークレットベビー

葉月とに
恋愛
同棲している婚約者のモラハラに悩む優月は、ある日、通院している病院で大学時代の同級生の頼久と再会する。 立派な社会人となっていた彼に見惚れる優月だったが、彼は一児の父になっていた。しかも優月との子どもを一人で育てるシングルファザー。 優月はモラハラから抜け出すことができるのか、そして子どもっていったいどういうことなのか!?

偽装夫婦

詩織
恋愛
付き合って5年になる彼は後輩に横取りされた。 会社も一緒だし行く気がない。 けど、横取りされたからって会社辞めるってアホすぎません?

禁断溺愛

流月るる
恋愛
親同士の結婚により、中学三年生の時に湯浅製薬の御曹司・巧と義兄妹になった真尋。新しい家族と一緒に暮らし始めた彼女は、義兄から独占欲を滲ませた態度を取られるようになる。そんな義兄の様子に、真尋の心は揺れ続けて月日は流れ――真尋は、就職を区切りに彼への想いを断ち切るため、義父との養子縁組を解消し、ひっそりと実家を出た。しかし、ほどなくして海外赴任から戻った巧に、その事実を知られてしまう。当然のごとく義兄は大激怒で真尋のマンションに押しかけ、「赤の他人になったのなら、もう遠慮する必要はないな」と、甘く淫らに懐柔してきて……? 切なくて心が甘く疼く大人のエターナル・ラブ。

【ルーズに愛して】指輪を外したら、さようなら

深冬 芽以
恋愛
 インテリアデザイナーの相川千尋《あいかわちひろ》は、よく似た名前の同僚で妻と別居中の有川比呂《ありかわひろ》と不倫関係にある。  ルールは一つ。  二人の関係は、比呂の離婚が成立するまで。  その意味を深く考えずに関係を始めた比呂だったが、今となっては本気で千尋を愛し始めていた。  だが、比呂の気持ちを知っても、頑なにルールを曲げようとしない千尋。  千尋と別れたくない比呂は、もう一つのルールを提案する。  比呂が離婚しない限り、絶対に別れない__。 【ルーズに愛して】シリーズ ~登場人物~  相川千尋《あいかわちひろ》……O大学ルーズサークルOG                 トラスト不動産ホームデザイン部インテリアデザイン課主任                   有川比呂《ありかわひろ》……トラスト不動産ホームデザイン部設計課主任                千尋の同僚                結婚四年、別居一年半の妻がいる  谷龍也《たにたつや》……O大学ルーズサークルOB              |Free Style Production《フリー スタイル プロダクション》営業二課主任  桑畠《くわはた》あきら……O大学ルーズサークルOG               市役所勤務、児童カウンセラー  小笠原陸《おがさわらりく》……O大学ルーズサークルOB                 |Empire HOTEL《エンパイアホテル》支配人    小笠原春奈《おがさわらはるな》……陸の妻                   |Empire HOTEL《エンパイアホテル》のパティシエ  新田大和《にったやまと》……O大学ルーズサークルOB                新田設計事務所副社長                五年前にさなえと結婚  新田《にった》さなえ……O大学ルーズサークルOG  新田大斗《にっただいと》……大和とさなえの息子  亀谷麻衣《かめやまい》……O大学ルーズサークルOG               楠行政書士事務所勤務               婚活中  鶴本駿介《つるもとしゅんすけ》……楠行政書士事務所勤務

エリート課長の脳内は想像の斜め上をいっていた

ピロ子
恋愛
飲み会に参加した後、酔い潰れていた私を押し倒していたのは社内の女子社員が憧れるエリート課長でした。 普段は冷静沈着な課長の脳内は、私には斜め上過ぎて理解不能です。 ※課長の脳内は変態です。 なとみさん主催、「#足フェチ祭り」参加作品です。完結しました。

睡蓮

樫野 珠代
恋愛
入社して3か月、いきなり異動を命じられたなぎさ。 そこにいたのは、出来れば会いたくなかった、会うなんて二度とないはずだった人。 どうしてこんな形の再会なの?

処理中です...