【ルーズに愛して】私の身体を濡らせたら

深冬 芽以

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2.OLC

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「あ! 麻衣ちゃん」

 店に入り、「いらっしゃいませ。おひとりですか?」と店員さんに声をかけられた時、奥からさなえの声がした。

 正面、奥の座敷の襖が空いていて、首を伸ばした陸が見えた。

 私は店員さんに、「席、わかりました」と言って、奥に進んだ。

「龍也とあきらはまだ?」

「ああ」と、陸が答える。

「今日、寒いね」と言いながら、私はジャケットをハンガーに掛け、壁のフックに引っ掛けた。

 バッグから財布を出す。

「麻衣ちゃん、先週は大斗がごめんね」と、さなえが言った。

「ううん、大丈夫だよ」

 私は会費を千尋に渡した。

「ん? 大斗?」

 陸と話していた大和が、息子の名前に反応した。

「ほら! 勝手に私のスマホ弄って、麻衣ちゃんに電話しちゃったって言ったじゃない」

「ああ、言ってたな」

「大斗くんがスマホ弄るの?」と、千尋が私の会費を封筒に入れながら、聞いた。

「そうなんだよ。動画見たくて」

「今時の二歳児って、みんなそうなの?」と私は聞いた。

 さなえの隣に座る。正面には、陸。

「うちはあんまり見せないようにしてたんだけどさ」と、大和がため息交じりに言った。

「あ、また私のせいにしようとしてる」と、さなえが少しムッとする。

「大和だって――」

「龍也! あきら!」

 店に入ってきた二人を見て、陸が呼んだ。二人は店員が駆け寄るより先に、奥に進んだ。

「なに、二人で来たのか?」と、陸が聞く。

「いや、そこで会った」と、龍也が答えた。

 大学時代、龍也はあきらが好きだった。再会して、こうして集まるようになって、龍也のあきらへの気持ちは復活したと思う。

 時々、あきらのことをすごく優しい表情で見ているから。

 あきらが龍也の気持ちに気付いているかはわからないけれど、二人はお似合いだと思う。

 いつからだったか、あきらは雰囲気が変わった。

 もともと、年上の私より大人っぽくて、面倒見が良くて、さなえと揃ってしっかり者のあきらだけれど、陽気さがなくなってきている気がする。

 再会した頃のあきらは、大学時代のまま、よく笑っていた。けれど、最近は少し違う。

 集まりにも、来たり来なかったり。

 みんなそれぞれに仕事を持って、次第に責任のある立場になっていけば、ずっと変わらずにいられるはずはないとわかっているけれど、私にとってOLCのみんなは心の拠り所だったりするから、この集まりを大切にしていた。

 千尋が二人から会費を受け取る。

「まずはビールでいいか?」と、陸が聞いた。

「私、ウーロン茶で」と、さなえ。

「飲まないの?」と、あきらが聞く。

「うん。大斗が風邪気味で先に帰るかもしれなくて」と、さなえが言った。

「最近寒いもんね」

「私もさっき、同じこと言った」と、千尋が笑った。

「んじゃ、ビール六つにウーロン茶一つな」

 陸が部屋から顔を出し、店員さんに注文した。開けておいた襖を閉める。

 店内が混みあってきて、乾杯から盛り上がる学生らしき若者の笑い声が響いた。
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