地獄の日常は悲劇か喜劇か?〜誰も悪くない、だけど私たちは争いあう。それが運命だから!〜

紅芋

文字の大きさ
上 下
109 / 167

彼女の過去

しおりを挟む

 昔、私は環境の悪い孤児院で暮らしておりました。
 少ない食事、不衛生な部屋、職員の虐待……。
 私は絶望していました。

 いつも何もせず自堕落な生活を送っていました。
 だって何かをしたらお腹が減って動けなくなるんですもの。
 何もしない生活はとてもつまらなくて自分が嫌になっていきました。

 何で自分はこんな生活を送っているのだろう。
 周りの幸せな奴らが憎い。
 その思いは孤児院にいる者たち全てが抱いていたもので何も珍しくありませんでした。
 だけれどもこんなことを考えている自分が嫌い。
 そう思って生きていました。

 ある日のことでした。
 私は空腹による栄養失調の所為でよろけて唯一の食事のスープの皿を落としてを零してしまいました。
 勿論のことですが皿も割れました。

 そのことに怒り狂った職員が私を殴ろうとしたときでした。

「おやめなさい」

 職員の手は誰かに強い力で掴まれていて私の頬を殴ることはありませんでした。
 私はゆっくりと目を開けてみました。
 するとそこには長い銀髪を揺らしている見目麗しい女性が立っていたのです。
 そう、これが私と秦広王様の出会いでした。

 秦広王様は如何やら違法なことをしている孤児院があるとの情報を聞き、自らやって来たらしかったのです。
 私は秦広王様にお礼を言いました。
 すると秦広王様はここの孤児院の子を別の環境の良い孤児院に移すと言ってきました。

 私は嬉しかったです。
 これで生活が変わる、自堕落で何もない生活が終わる。
 そう思って幸せでした。
 それが態度に出ていたのでしょう。

 秦広王様は少し笑いました。
 笑ってあることを提案してきました。

「貴方、うちで働きませんか?」

 働く、それは自堕落な生活を送っていた私には魅力的な言葉でした。
 私はすぐに「はい!」と返事をしました。

「では決まりですね」

 そう秦広王様に手をひかれて歩く私の足はとても軽かったです。


~~~~


 秦広王様に引き取られてから私の生活は一変しました。
 豪華な食事、ふかふかの布団、誰もが優しい環境……。
 痩せ細っていた身体もみるみる普通の体型になっていって健康を手に入れました。

 そうして思いました。
 いつかあの方、秦広王様の隣に立ちたいと。
 それから私は秦広王様の役に立つ為に努力を重ねました。

 いつも秦広王様は努力する私を見て笑顔を浮かべてくれていました。

 だけれども、ある時に秦広王様は私に命令してきます。

「全ての女性を、陽という死神を殺しなさい」

 初めてでした。
 私を頼ってくる秦広王様を見るのは初めてでした。
 私は秦広王様の役に立ちたい。
 だからこそ女性殺し、死神殺しの頼みを受けました。

 でも何ででしょうか?
 今、私のお腹には秦広王様の刃が突き刺さっています。
 ずるりと内臓が引き出される。
 嗚呼、痛い。

 秦広王様は私の内臓を食べています。
 きっと己が力を増幅させるつもりなのでしょう。

 嗚呼、最期に役に立てた。
 私はそう思うと同時にこう思いました。

 私の人生は何だったのでしょうか?


~~~~


 意識が遠のいていく。
 嗚呼、毒も注入されたんだ。
 私はいったい何の為に?
 何の為に死んでいくのでしょうか?

 嗚呼、この世界は理不尽だ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

俺だけ毎日チュートリアルで報酬無双だけどもしかしたら世界の敵になったかもしれない

亮亮
ファンタジー
朝起きたら『チュートリアル 起床』という謎の画面が出現。怪訝に思いながらもチュートリアルをクリアしていき、報酬を貰う。そして近い未来、世界が一新する出来事が起こり、主人公・花房 萌(はなぶさ はじめ)の人生の歯車が狂いだす。 不意に開かれるダンジョンへのゲート。その奥には常人では決して踏破できない存在が待ち受け、萌の体は凶刃によって裂かれた。 そしてチュートリアルが発動し、復活。殺される。復活。殺される。気が狂いそうになる輪廻の果て、萌は光明を見出し、存在を継承する事になった。 帰還した後、急速に馴染んでいく新世界。新しい学園への編入。試験。新たなダンジョン。 そして邂逅する謎の組織。 萌の物語が始まる。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

うちの冷蔵庫がダンジョンになった

空志戸レミ
ファンタジー
一二三大賞3:コミカライズ賞受賞 ある日の事、突然世界中にモンスターの跋扈するダンジョンが現れたことで人々は戦慄。 そんななかしがないサラリーマンの住むアパートに置かれた古びた2ドア冷蔵庫もまた、なぜかダンジョンと繋がってしまう。部屋の借主である男は酷く困惑しつつもその魔性に惹かれ、このひとりしか知らないダンジョンの攻略に乗り出すのだった…。

処理中です...