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風と速さの暗殺者
しおりを挟む「さぁ、おいらに勝てるか勝負だ!」
そう叫ぶ風の両腕は刃になっていた。
刃を持っているわけでもない、両腕が刃になっている。
すると急に竜巻の様なものがサトリを襲った。
竜巻を避けてサトリは攻撃の体勢を整えようとした時だった。
「遅い!!」
肩を斬り裂かれるが、サトリは間一髪避けて風に一撃を喰らわす。
だが風は物怖じも何もせずに、またサトリを斬り裂こうとする。
風の攻撃はあまりにも速かった、心が読めるサトリでも間に合わない程に。
だが、それで正体がわかった。
両腕の刃、あまりにも速い攻撃。
かまいたち
それは速さと風を司る妖怪。
暗殺者としてはもってこいの妖だ。
彼はきっと、その両腕で何百ともあろう者を葬って来たのだろう。
その一人にサトリも入れるつもりだろうか。
風は竜巻を巻き起こす。
その風にあたってしまうだけで怪我をしてしまうのはわかっていた。
彼は暗殺者、だからこそサトリはこの姿での能力を使うか悩んでいた。
風は沢山の竜巻を起こす。
それを避けながら風の攻撃も最低限避けていく。
途中で攻撃を見切ったサトリは風に深い切り傷をあたえた。
だがそれでも風は笑っていた。
「もっと、おいらを楽しませてくれよ!!」
彼は外傷なんて気にしない。
そう気づいた瞬間にサトリは笑った。
こいつには、この能力を使うしかないと。
「真の恐怖を味あわせてやるよ」
サトリは風に斬りかかる。
だが風はそれを防ぎながらもう片方の腕でサトリを斬り裂こうとする。
だがサトリもそう簡単には殺られない。
もう片方の腕の攻撃を避けて、それから足に攻撃をする。
大事な足を斬られた風は少し苦痛に顔を歪ませた。
その勢いでサトリはあらかじめ御影から貰っていた呪符を取り出し、風に投げる。
この呪符は強い者しか使いこなせなくて難儀な物だが、今のサトリは強い。
だから使いこなせられる。
呪符を風の足に貼り付けて速さを封じようとする。
けれども風はそれを斬り裂いてやろうと刃を呪符に向ける。
呪符は普通なら刃にあたれば破れる。だがしかし、この呪符は特別製。
逆に風の刃を片方だけ防いでしまった。
左腕が封印されたことに風は怒る。
そんな様子を見てサトリはケラケラ笑った。
「左腕は封じさせてもらったぜ!」
あまりにも酷く笑うサトリに風は怒りを露わにする。
「くそがぁぁぁぁぁぁ!!」
左腕を封じた、だがそれでも風の勢いは止まらなかった。
片腕だけでも竜巻が彼には出せたのだ。
しかも大量に。
部屋中に竜巻が発生したことにより御影にも危険が迫る。
「御影!!危ない!」
「サトリ!!」
サトリは御影を竜巻のない場所へと移動させるかわりに竜巻に身を斬り裂かれる。
「はぁ、はぁ……」
息も絶え絶えなサトリに風は嘲笑を送った。
「馬鹿が!仲間を救う為に自分が犠牲になるなんて!笑えるな!」
風は腹を抱えて笑い始める。
目の前のサトリは倒れていて微動だにしない。
「死んじゃったの?弱かったな」
風は御影の方へと向かう。
だが危険が訪れようとしている御影は如何でも良さそうな顔をしていた。
「何でお前はおいらを怖がらない?」
「だって決着はついてないからのぅ」
決着がついてない?その言葉を聞いた瞬間に後ろから足音が聞こえた。
振り返って見てみれば先ほどまで重症だった筈のサトリが軽傷で立ちはだかっている。
「何で?!」
風は混乱する。確かに自分が起こした竜巻にサトリは突っ込んだ筈だ。
なのに目の前のサトリは竜巻の傷は負っていない。
するとサトリは笑った。
「竜巻に真正面から突っ込んだわけないだろう」
「だがお前は確かに竜巻に突っ込んだ!何故、傷を負ってない?!」
風は現在の状況がわからずに焦る。
それを見透かしてサトリは答えた。
「この姿になると能力が追加されるんだぜ。相手に幻影を見せる能力。俺が死んだかと思って油断しただろう?さあ、真の恐怖を味わいな」
幻影を見せる能力という言葉を聞いた瞬間に風の前に沢山のぐちゃぐちゃの人影が現れる。
どれもこれも恨み言を言っていて見る者を恐怖に陥し入れる。
だが風はより恐怖に陥っていた。
何せ目の前にいるぐちゃぐちゃな物体は自分が殺してきた存在だったからだ。
己の刃で斬り刻まれ、原形のない存在。
彼はそんな殺し方をしてきた、暗殺者も殺人鬼だ。
だからこそ自分が殺した相手が蘇るのが怖い、それがサトリにはわかっていた。
「如何?自分が殺してきた存在が蘇るのって?」
「あっ……ぁぁぁぁぁぁ!!!」
風はもはや戦闘不能だった。
それを見てサトリは静かに笑う。
「本当の恐怖がわかって何よりだぜ」
こうしてサトリは風に勝って颯爽と御影と共に進もうとした。
だが……。
「やっぱり敵は現れるのじゃな!」
「しかも沢山!」
風が蹲る場所に沢山の敵が集まる。
「こうなりゃ共闘だ!御影!」
「そうじゃな!!」
葛葉を救うまであと少し……。
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