地獄の日常は悲劇か喜劇か?〜誰も悪くない、だけど私たちは争いあう。それが運命だから!〜

紅芋

文字の大きさ
上 下
60 / 167

肉喰い

しおりを挟む

 今日も男は新たなご馳走を頬張り満足気にニタリと笑う。
 目の前に残っているのは骨の欠片だけ。
 積み重なって様々な悲壮の表情を浮かべる死を迎えたそれはもう何も感じない。
 そうだ、しょせんは死を迎えたら何もないのだ。
 それを自分は実演しているだけだ、それ以外の他はない。
 偏食家の自分は同族を喰らうことで力を手に入れた。
 さあ、自分は何処まで力を手に入れて何処まで力を知らしめれるのか?
 それが楽しみだ。
 さあ、始まる、力を懸けた勝負が……。



~~~~



「はぁぁぁぁぁぁぁぁ……」

 殺は顔を顰めて盛大に溜め息をつく。
 度重なる連続失踪事件、それまでなら仕事は人殺し課に回らない。
 だが今回は人殺し課に挑戦状が届き犯人しか知り得ない情報が書かれていたのだ。
 これは悪戯ではないと判断が下され無視が出来ない状況になった次第である。

「それで挑戦状とやらには何が書かれているんだ?」

「溜め息が出る程に頭の悪い内容ですよ」

 頭の悪い内容という言葉に陽は首を傾げて疑問符を上げる。
 三馬鹿の御影とサトリとMは不謹慎にも挑戦状の内容が気になり騒いでいる。
 早く読み上げろよとサトリが囃せば殺は余計に頭を悩ませてしまう。

「では読みますよ」

「おー!!」

「……同族を喰らい力を手に入れた俺にお前等は立ち向かえるか?誰が強いか力勝負をしよう。敗者に待ってる定めは死のみ」

「シンプルな内容だな……」

 殺が頭が悪い内容と言っただけはあると陽は納得してしまう。
 だがこの内容で失踪者がどんな結末を迎えたのかが嫌と言う程わかってしまう。
 同族食い……失踪者は結局は無残に食い荒らされて犯人の胃袋に入って綺麗に消化されたのだ。

 なんて残酷なことか……何の罪もない普通の人生を歩んできた者がいきなり殺されて食べられるなんて、残酷としか言い様がない。
 被害者はどんな思いで挑戦状を送ってきた頭の悪い犯人に殺されて食べられたのか……それはもう誰にもわからない感情であることは確かなのだろう。

 殺は犯人に怒りを覚えながらも早く解決することを心に決めて手紙に書いてある、おそらく犯人が居る場所に行くことを決意した。
 それにしても自分の居場所まで手紙に書くとはなんと自信のある犯人なのか……。

「しっつれいしまーす!」

 聴き慣れた声が人殺し課に響き渡る。
 その声に殺は条件反射で敬意を示す体勢をとる。
 殺がこんなに敬意を示す者は一人しかいない。

「閻魔大王……如何しました?」

「ふっふーん!手紙のことで来たんだ!」

 挑戦状のことで閻魔は心配で来たというのが明らかにわかってしまう。
 落ち着いてないのか先程から辺りを見回したり殺と目を合わせたり逸らしたりで挙動不審だ。
 やはり職場の皆は家族と考える閻魔からしたら今回の事件で、人殺し課の皆が怪我をしたりするのが心配なのだろう。
 閻魔大王はそういう方だ、だからこそ彼を大将として皆は慕うのだ。

「手紙のこととは?」

「それは……」

 ……特に意味はなく人殺し課にきたということなのだろう。
 心配性と言えばそこまでだが命が関わるとなると当たり前だ。
 この王は優し過ぎる。

「きっと無事に帰ってみせます」

「……!うん!」

 無事に帰るという言葉に閻魔大王は安心する。
 心配性だが仲間の強い言葉を信じない程に信頼関係が無いわけではないからだ。
 閻魔大王は笑顔で「無理をしないでね」と笑う。
 この笑顔を、皆の笑顔を大切に守りたいが為に戦いに出る。

「今回も絶対的に大丈夫じゃ!」

「さっさと終わらそうぜ」

 そうやって戦いの準備をする彼らの目は真剣で闘志に満ち溢れていた。
 普通の日常を取り戻すが為に戦いに挑む。

「さあ、行きましょう」

「「「「了解!!」」」」

 日常は取り戻されるのか?
 それは彼ら次第。



~~~~



 肉が食べたい。
 新鮮で活きがいい肉が。
 肉を食べて力を得た俺は最強?
 力を手に入れた俺に敵は無い。
 だから世界も俺が手に入れるんだ。
 それが定め。
 運命の定め。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

リヴァイアトラウトの背の上で

結局は俗物( ◠‿◠ )
ファンタジー
巨大な魚とクリスタル、そして大陸の絵は一体何を示すのか。ある日、王城が襲撃される。その犯人は昔死んだ友人だった―… 王都で穏やかに暮らしていたアルスは、王城襲撃と王子の昏睡状態を機に王子に成り代わるよう告げられる。王子としての学も教養もないアルスはこれを撥ね退けるため観光都市ロレンツァの市長で名医のセルーティア氏を頼る。しかし融通の利かないセルーティア氏は王子救済そっちのけで道草ばかり食う。 ▽カクヨム・自サイト先行掲載。

性転のへきれき

廣瀬純一
ファンタジー
高校生の男女の入れ替わり

処理中です...