勇者と小さな魔王の旅

木元うずき

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運命のイタズラ

旅の記録43 待ち合わせ場所

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一向三人が待ち合わせ場所に歩いていると絶対最初に気づかないと行けないことに気がついた。
そう、それは・・・
「勇者さん。シルヴィさんはどこにいるの?」
「あれ?そういや・・・」
「もう先行っとるんじゃろ。儂らもちゃっちゃと行くぞ」
っと先程までシルヴィの存在を忘れていたのだった・・・。仲間の存在を忘れる仲間って・・・、シルヴィはそこまで影は薄くない。ってか普通に比べると濃い方だった。が、周りがもっと濃いので薄く感じられやすい・・・
「待ち合わせは~、2時間前で~♪♪」
「ちょっ!日向!それ色々とやばいから辞めるんじゃ!それとこのまま呑気に歩いていると2時間前所か5分後になってしまうぞ!」
そう、現在人混みに揉まれている状態だった。魔王は勇者に肩車してもらい、日向は勇者と手を繋いでいたから離れる心配はなかった
「きゃっ!」
「フラグ回収早すぎやしんか!?日向!どこおるんじゃ!」
フラグ回収完了!
日向は誰かとぶつかり勇者と手を離してしまった。
辺りは人がごった返しており、日向の身長じゃ見つけるのは無理難題に等しかった。
「ん?あれじゃないんか?」
いや、簡単に見つけてしまった。黒い大きいとんがり帽子。この辺りで着用しているのは日向ぐらいしかいないと思われる。それで違うからったらそれこそもう、諦めるしか・・・
「勝手に諦めないで!?私はここにいるから!」
っと先程見つけた黒くて大きいとんがり帽子がぴょこぴょこと跳ねていた。よく見ると指先だけがたまに少し見えているぐらいで、帽子が無ければ声をかけられても分からなかっただろう。
「日向、杖乗ってこっちまでこれないのか?」
「これだけ人が多ければ流石に無理!」
と、大声でこんなやりとりしていたら周りからの目は彼らだけに向いていた。
「取り敢えずあの噴水前で集合な!」
「そんな!!ひどい!置いていくなんて!」
日向の声なんか無視して勇者は噴水前まで歩いていった。
「無視は良くないと思うじゃがな・・・」
「あの状況で助けに行くことは可能かもしれんが流石に厳しすぎる」
人混みを抜け、噴水前で一息ついている魔王と勇者。そして、日向はまだ来ていなかった。
「お、日向が来たぞ」
「ん?あ、本当だ」
とぼとぼと歩いてくる日向を見て一瞬魔法を放たれるのではないかと身構えていた勇者だが、日向にある物が足りなかった。日向の大切な物であり魔法使いにとっても大切な物。
「日向・・・杖はどうしたんだ?」
「取られた・・・」
って事です。
「なんじゃと!?ちょ、あぁもう!探しに行くぞ!」
「あ、魔王ちゃん。心当たりあるの?」
「あるわけ無かろう」
そうキッパリと言い張った主張に日向は呆れた。そして、日向はポケットから金色のベルをとりだした。それをチリンチリンと鳴らした・・・が何も起こらなかった。
「何したんじゃ?」
。あ、きたきた」
日向が見た方向には何もない・・・いや、地上を見てない。空を見ていた。
「お待たせー。日向」
「じゃ、頼むね」
っと日向は突然来た魔法使いに手を振った。その魔法使いは日向とは違い黒い大きなとんがり帽子を付けず黒いフードを被っていた。杖は日向の杖より一回り小さかった。
「もぉ、もう少し話さないの?」
「今回は私の方も大事な用事があるからね。じゃ、頼んだよ」
黒いフードを被った魔法使いは一礼をし、来た時と同じように杖に乗って去っていった。

「じゃ、行くよ!」
「ちょっと待った!今何が起きたんだ!!」
「ニナを呼んで杖を探してもらう。それだけよ」
勇者の質問を簡単に答えた日向だが、それを聞いてもまだまだ聞き足りない。
「どうしてあのベル?の音でニナさんが来たんだ?そして、どうやってウェイパ村まで聞こえたんだ。ここからそれなりの距離はあるぞ」
「う~ん、それは私とニナの関係があるからこそ成り立つけど・・・まぁそれを話すと長いからまた今度ね」
日向はコロコロと笑ったような笑顔で日月と月影の待ち合わせ場所に歩いた。


「お、日向はん・・・やな?」
何とか待ち合わせ時間に間に合った・・・っと思いたかった。魔王の宣言通り5分遅れてしまった。
「ごめん・・・。遅れて・・・」
「いやいや、遅れたんとかはどうでもええは。日向はん、杖はどないしたん?」
「取られた」
っと日向は答えるとあんぐりと口を開けた日月。ん?口が見える?
「日月さん。狐のお面は・・・」
「外しただけや」
「そう簡単に言われてもな・・・。月影はまだ付けているのに良いんか?」
日向が日月って言うからそのまま話が流れかけたけどよく見ると金髪で綺麗に整った顔立ち。そして、巫女服ではなく、無地の白ワンピースに青い短パン。目の色は黄色でアニメとかに出てくる狐が人間に化けたような感じになっていた。
「いいんじゃいいんじゃ。あてらのポリシーでな、心を許した者なら顔を見しても良いとな」
月影は後ろで頷いていた。月影は相変わらず巫女服に月が額に描かれた狐のお面だった。でも、会った当初よりかは反応を見せるようになってくれただけでまだ多少心を許してくれたんだと思った。
「月影はなっかなか許してくれんからな。ここまで反応取っていることがあてにとっても驚きやわい」
日月はうんうんと頷きながら話していると後ろにいた月影が日月の肩を叩き耳元で話した。
「ふむふむ。なるほどの。月影が日向はんと魔王はんなら普通に話せるけど勇者はんとシルヴィはんはまだ厳しとの事」
その後日月は月影の両足飛び蹴りで吹き飛んで行ったとさ・・・。
月影は寝転がっている日月を踏みつけて怒りを表していた。言うならば「いつになったら分かるのかな?」みたいな。
「月影さんってあんなキャラでしたの?」
「あ、シルヴィ様!」
「あ、ではないですよ!私を忘れて行こうとして止まったって思ったら人混みで見失ったんですから!日向さんの帽子がなければ私、迷子でしたから!」
「日向の帽子は目印に良いかも知れんな・・・」
「そうだな・・・」
後ろから疲れ果てた顔をしているシルヴィは離れ離れになってからの文句をしばらく言い続けていたのは内緒です!
「そんじゃ~、行くかの」
いつの間にか月影から逃げ切っていた日月は服を整え彼らに言い先導するように前を歩き出した。
「あんな月影。そろそろ機嫌治してくれんか?」
「・・・・・・」
「あぁもうわかったわい。そん変わりあの話は話してくれんか?」
「・・・・・・」
「それでいい。そんじゃ、頼んだよ」
月影は日月の肩の上に座っていた。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
裏話
途中で日向が歌っていた歌の歌詞で一つミスしていました。たぶん気づいていると思いますが解説!
2時間前って事はその待ち合わせの時間から2時間経っていると言うことです。
逆に魔王が言った5分後の言葉は待ち合わせより5分早く着いてしまったっと言う事。なので、言葉の意味を逆で捉えていたのです!それに気づいたのは月影と日月のやりとり付近で気づいたので修正しようにも出来ませんでした。すみません・・・
これからもよろしくお願いします!
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