気まぐれ

木元うずき

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hope sacrifice. I want to die

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今私は昔将軍が乗っていたとされるカゴによって山奥に運ばれている。悪に働いたわけでもない私が何故運ばれるはめに合ったのか、それは『誰も悲しまない』からだ。だから私も全然悲しくないし怖くもなかった。私が幼い頃姉と両親で平和に暮らしていた。が、姉はある理由によって亡くなった。そのあとを追うように両親共に亡くなっていて行った。そして、一人残された私は親戚のおばあちゃんの家に預けられる事になったが先月亡くなった。誰か友達がいるわけでもないから本当に悲しむ人はいない。逆に嬉しくなる人もいない。そんな人からなんとも思われていない私が何故山奥に運ばれているのか。それはこの村の儀式からなるものだった。
この村の近くにある山には神様が住んでいるとされている。それと共に悪魔も住んでいるとされている。だが、彼らには悪魔が見えずその悪魔は神様が退治しているとされている。そして、一年に一度15になる歳の女の子を神様に捧げなければならないらしい。なんでも、悪魔を倒すのに普段お供えしている食べ物だけじゃ足りないからっと言ったわけも分からない理由で捧げられているらしい。それによって私の姉は殺された。そして数年経って今私がその対象となったわけだ。なんとも笑える話だ。姉妹ともに神様と言う名の悪魔に捧げられるとは。私と違って姉はみんなから好かれており村の中でも人気が高かった。だから、捧げられる日も村のみんなから批判がくらいながらも連れていかれたのだった。これに関しては未だに誰も捧げられたのか分かっていない。それとは逆に私は誰とも遊んでいないし遊ぶ気にもならなかった。そして、私には『悪魔』が見えた。だが、誰に言っても信じてもらえるわけでもないのは幼い頃から分かっていた。なぜなら気持ち悪い悪魔が真横にいても誰も怖がりもしないしましてや、目が合っても叫びもしなかった。この時に私は誰も見えていないとわかった。だから、誰にも言わずに一人悪魔に怯えていた。もし、姉が見えていたとして誰かに言ったら信じてもらえていたりしたのかな。そんな妄想を膨らましているとカゴがノックされる音が聞こえた。
「着いたぞ」
その声と同時に開けられた扉から光が差し込んできて眩しかった。一瞬目眩がしたが関係なかった。空には雲一つない満天。私の最後には似合わない天候だった。
「着替えてからでいいが、この石の上から絶対に立つなよ」
そう指し示された場所には一般の15歳の女の子だったら胡座あぐらをかくと膝が少しはみ出る程度の大きさの石だった。しかし、私にはちょうどいい大きさの石だった。そして、私は着ていた服をその場で脱ぎ用意されていた。男の人がいたけど抵抗はなかった。だって、私にはないし見られたってないものはないままだしもう死ぬのだし。そして、後ろから聞こえるため息に私は少しだけ怒りを覚えたがぶつけてもなにも変わらないから深い溜息をして心を落ち着かせた。そして、言われた石に胡座をかいて座った。それを確認すると後ろの足音は少しずつ遠のいて行った。普通なら逃げないように固定するか見張り付けるはずなのに誰もいない。いや、私だから逃げないだろうと思われたんだろうか。ま、逃げても行くあてもないから結局死には変わりないけど。

何時間経ったのだろうか。座ってろっと言われただけだから私は胡座から正座に変えたり体育座りしたりと色々態勢を変えて体が固まらないようにしていたがそれもついに限界が来てしまった。少し足を動かすと電気が走るような痛みと少しこそばゆい感じが足全体に広がって動かせない状態になってしまった。あぁ、これなら自決用の刃物でも持ってきてさっさと死んだ方がよかった気がしてきた。
「なんや?今年はこんな小さな女の子が捧げられたんか」
足の痺れに悶えていた私の目の前に宙に浮いた神様の格好をした性別が不明な人が浮いていた。それよりも、関西弁?ここ・・・関西とは無縁の村のはずだけど
「まぁええか。お前さんに聞くがな、悪魔を信じるか?」
この神様擬きはなにを言っているのか分からなかった。信じるもなにもあなたが悪魔ではないかですかと。
「お前さんや、聞こえてんやろ?返事せんか」
「・・・っち。あなたが悪魔ではないのですか?」
この神様擬き、最初に『こんな小さな女の子が捧げられたのか』って言ったのが本当に信じられなくて少し機嫌が悪くなっていた。そして、その神様擬きは呆れたように首を振った。
「儂を悪魔と呼ぶとは、なんとも言えんな。それよりもお前さんは儂が見えるっていう珍しい女の子やな?なら、悪魔も見えとるってわけでいいやろ?」
なに、このあく・・・神様。自分が見えるからって勝手に悪魔が見えているって言っくるって。いや、実際に見えていますが。さっきまでの落ち着いた私のテンションを返して欲しいぐらいで頭の整理が追いついていなかった。
「これならを使いこなせるかもしんな」
頭の中にハテナマークしかない私は当然の事ながら言っていることを理解していなかった。
「ほれ、こんな場所じゃなんや。続きは儂ん家に来てから話そうじゃないか」
こうして私はなにも理解出来ないまま現世に別れを告げることになった

「単刀直入に言おう。お前さんには悪魔を倒して欲しい」
やっぱり意味が分からない。単刀直入に言われたからもっと意味が分からない。
「説明するとな、長くなるやが・・・簡単に言うとな。お前さんらが捧げられている理由は悪魔狩りが出来る者が欲しかったからやねん。しかしやな、なっかなか悪魔が見えるっちゅうやつが現れんから死ぬまで儂の家で住ましとったんや。ほれ、そこに仏壇あるやろ?それが全て捧げられた人らや」
そこには綺麗に一つずつ線香が供えられた仏壇が並んでいた。名前も全て彫られており綺麗にされていた。
「姉の・・・名前」
「ん?あいつの事か?あいつは悪魔狩りになりかけたんやがな、これからお前さんにも見えるものの制御が出来んくなって力尽きてしもうたんや・・・」
話を聞くと姉は私よりかは悪魔を見る力が少し薄かったようで今から私に渡される(予定)ものの制御が出来ずに暴走していたところ神様擬きの人が殺したと。他の人はなんの反応もなく不憫なく暮らしていたのに対して私の姉だけは殺された。やっぱりこいつは悪魔だと確信した。それは兎も角、これからそれを扱うことになる私だけどどうなるかは悪魔も分からないらしい。成功したらそのまま悪魔狩りの基礎を教えてくれるらしいが・・・こいつは見た目的には弱そうだけど絶対強いから狩るのは最後になりそうだ。もし、成功したらの場合の話だが。
そして、私は悪魔に案内されるがままにそのものが保管されている部屋まで来た。そこにはゲームとかにある伝説の剣が刺さっている風の無駄な光と真っ白な槍が刺さっていた。
「この槍をとりあえず触るんや。一瞬体が痛くなるかもしれんが我慢してくれ」
ここで死んでも誰も悲しまないから私は躊躇いもなくその槍を触った。いや、逆に死にたくて触りに行ったっと言った方が正しいかもしれない。ここで死ねばまた家族と会えるかもしれないから。
そして、私はその槍に触ると全身に電流が流れるような感覚がした。血流が異常に早くなり呼吸するだけでも精一杯。目は充血をして(いたらしい)口から涎が絶え間なく流れ続け、立っていられなくなった私は片膝を付く形になっていた。その痛みが何時間続いたのだろうか。いや、もしかしたら数分しか経っていないのかもしれない。私はただ必死に痛みに耐えることしか出来なかった。そして、やっと痛みが収まってきた頃にいつの間にかこの部屋から出て行っていた魔王が帰ってきた。本当に拷問どころの痛みではなかったと思う。受けたことないから分からないが絶対と言いきれる自信はあった。
「なんと、耐え切ったとは。この先その槍を制御出来るかにもよるが・・・心配はなさそうやな」
どこからその自信が溢れてくるのか私には分からなかった。そして、分かろうとする気にもならなかった。取り敢えず休みたい。体を横にしたい。そんな願望だけが私を襲った。
そして、魔王に抱えられた私は最初の部屋に連れていかれた。その後は槍の取り扱いを聞かされるのかとばかり思っていた私にとって予想外の展開になった。
「疲れとるやろ?説明とかは明日に回すから休んどきなはれ」
私には願ったり叶ったりの事だった。だが、流石に気持ち悪かった。さっきのさっきまで拷問以上の苦しみを与えていた張本人が休めと言ってくるのはいくらなんでも気持ち悪かった。だから私はすぐに全ての説明をするように申し出た。このまま言われた通りに休めばなにをされることか分からないから。そして、魔王は驚いた表情をしたが私の申し出を受け入れてくれた。それもそれで気持ち悪かったがもう気にしなかった。そして全ての話を聞いて簡単にまとめるとこんな感じの話だった。
さっき触っていた槍は唯一悪魔を倒せるものでこいつが作ったものらしい。そして、その槍はなんでも特別な力がある人にしか扱えないらしいがその適性が私にはあったらしい。で、私はもうこの世にはいない存在としてなるが周りの人には見えるから名前を偽ってこれから悪魔狩りをして欲しいとのこと。それともう1つ大切なことが私がその槍を持った状態で悪魔と戦っている時には他の悪魔が見えない人でも悪魔が見えてしまい被害を受けてしまう恐れがあるとのこと。私は人を守るために悪魔を倒すわけでもないから被害を受けても別にいいとは思うけどそうも行かないらしい。その被害を受けた人はそれから悪魔が見える体質になってしまうからだ。でも私には関係ないと思っていたが大いに関係があった。なぜなら、悪魔の正体は『人の恐怖の心から成り立つもの』だから。最初聞いた時はなにを言っているのか分からなかった私だが説明を聞くとなんとも簡単な事だった。例えば空き巣が多くなると人々は恐怖を感じる。その恐怖が集まると悪魔が出来る、みたいな感じらしい。そうなると悪魔が見えるようになってしまうと悪魔を倒しても倒してもそれ以上に出てしまい私の仕事が一生に終わらなくなる。なんでも、この仕事が終わるまで私は死ねないらしいから。悪魔に殺されることも出来ないと言ったなんとも悲しい事になってしまった。試しに自殺を試みた私は首を刃物で切りつけたが痛みを感じるだけでなんにもなかった。どんなに深く切っても早かれ遅かれ再生をしてまた元通りになる。だから、私は諦めてこの仕事をしなければならない。
無理矢理だが、悪魔狩りをする事になった私だが、まだ偽名を付けてもらってなかった。それを魔王に聞くと適当に
「サクリファイアスでいいか?」
と言われた
サクリファイアス。確か生贄みたいな感じの意味を持つ英語だったはず。なるほどね、私にはぴったりなわけですと。それよりもなんで私、こんな単語の意味知っているのだろうか。どうでもいいか。それよりも早く仕事を終わらして家族に会いたい。
こうして私、サクリファイアスは死ぬためにに悪魔を狩ることになった。『絶対に死ぬ』そう誓って私は夜の村に向かって走り出したのだった。
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