勇者と小さな魔王の旅

木元うずき

文字の大きさ
上 下
7 / 17
ウェイパ村

旅の記録6 演奏会

しおりを挟む
「それでじゃ。何故儂の周りに人があんなに居たのじゃ?」
日向は宿に着くと宿主に「この置物を調べるために暫くここで泊まれるかしら?」っと聞くと宿主はコクリと頷いた。そして、お代を払おうとしたら「研究の為ですのでお代は結構です。いつまでも居てくださいな」と、タダで泊まることになった。それを驚いていた勇者とは対象的に日向はそのまま部屋鍵を持ち歩いていった。後から聞いた話、ここまでが計算通りだったとか。そして、部屋に入るなり魔王は動き出し何が起きたのかを聞いてきた。
「お前が置物化としていたからだ」
「そうね。フィーちゃんが置物化していたからだね」
「ふむ。何故儂は置物化となっとったんじゃろうか。海の水を触っただけなんじゃが・・・」
「それが原因何だよって知らなかったのか!?」
話を聞くと魔王は吸血鬼っと言っても翼を生やしたり血を吸血したりする事が出来るだけで他は何もなかったらしい。だから、
太陽の下でも歩けるんだとか。元々苦手意識があるはずだが、
魔王はそれがない為に触り固まったらしい。
「全く不便じゃの、この体も」
「ハーフなのだから仕方が無いだろ」
魔王は自分の肌をペチペチ叩きながらため息をついた。
「さて、フィーちゃんも回収した事だし観光する?」
「賛成したいんじゃが何か体がだるくての。儂は少しばかりここで休むわい」
魔王はそう言うとフカフカのベッドに飛び込み布団の中に潜って行った。
「僕はどっちでもいいけどどうする?」
「そうね。フィーちゃんは森の音楽には興味無さそうだったしそろそろ始まる時間だから聴きに行く?」
勇者は頷くと日向は部屋の鍵を握り扉を閉めた。
「いや、儂も少しばかり気にはなるんじゃが・・・」
魔王は日向達が出ていった後、布団から出てき一人で寂しく呟いた言葉は誰にも届かなかった。
「あれ?もう始まる時間のはずだけど誰もこっちの方に歩いてこないけど何かあったのかな?」
日向は少し不安な顔になりながら目的地まで歩いた。
「いやいやいや、おかしいだろ。急に森が現れるとか!」
勇者はボーっと歩いていたら急に森が現れたことに驚いていた。見ている限り普通に家が建ち並んでいるが人気が少し少ない感じの道を通っていたら本当に急に現れた。
「え、数ヶ月前から中止になっている!?」
森が出てきたことに驚いている勇者を置いて日向は森の前に置いてある看板の文字を見て驚いていた。
「ニナに何かあったのかな?勇者さん、先に宿へ先帰ってくれる?あ、これ鍵ね。じゃ、私は少し情報集めてくるから!」
日向は勇者に鍵を預けその場を颯爽と去って行った。
「・・・・・・え?」
思考が追いついていない勇者は取り敢えず宿に戻ることにした。
勇者が宿に帰ろうとしている頃、魔王は布団の上でゴロゴロと左右に転がっていた。
「暇・・・じゃ」
上向きの状態で寝転がっている魔王は体を起こし少し体を動かした。
「ふぅ。よし、久々にやるかの」
魔王はそう呟くと近くにある物を全て壁際まで寄せ、手を広げてクルクルと回った。そして、何も当たらないことを確認すると慣れたように小さい翼を背中から生やすと、部屋の中を小さく飛んだ。
「むむ、少しばかり動きが鈍くなっているかの?今度、日向に戦いでも申し込むかの」
地面に着くと次は右手で何かを持つ素振そぶりをした
血の芸術ブラッド・アート
すると魔王の右手に黒光りした赤い槍が創り出された。
魔王は槍を数回小さく振るり手を離すと、槍はそのまま蒸発して無くなった。
「やはり少しばかり鈍っているの」
魔王は首をパキパキと鳴らし翼を折りたたみ元に戻した。
「それにしてもよく見ると年季の入った宿じゃの。じゃが、それでも壊れる気配はない。どうやっておるんじゃろうか?」
魔王は軽く壁を叩いていると割れる音がして一瞬身を引いたが、何事もなく胸を撫で下ろした。
「あれ、魔王起きていたのか?」
「何じゃ、お前さんかいな。威かすでない」
「そんなつもり無かったんだが・・・?」
「まぁよい。それで、日向はどこじゃ?」
勇者が入ってから一向に入る気配がない日向の事が気になった
魔王は勇者に聞いた。
「あぁ、それなら人探しににいった」
「ふむ。それなら良い・・・、って言うか!!何故、あやつを一人にしよった!」
魔王は何かわからない不安に駆られ怒鳴ってしまった。
「一人にしたのじゃなくて置いていかれたって言った方が正確だな。森の音楽が数ヶ月前から中止されていて、それで探しに行ったと思う」
「ニナっというやつをか?」
「たぶん」
魔王は日向が心配でたまらなかった。でも、何故か分からなかった。
「日が落ちても帰ってこぬようなら探しに行くぞ」
「分かった」
魔王と勇者は日が落ちるまでに日向が帰ってくるだろうと思っていた。

「帰ってこぬ・・・」
「そうだな・・・。そろそろ行くか?」
「そうじゃの」
日が落ち村には街灯が灯り始めた頃、日向はまだ帰ってこなかった。魔王は部屋の鍵を持って部屋を最後に出て鍵を閉め、勇者を追いかけた。
「魔王!」
「分かっておる。今探すから待っておれ!」
魔王は日向の魔力を探していた。魔法使いだからと言って全員が同じ魔力の形をしているわけでは無い。だから、魔王は日向の魔力を探す事にした。
「こっちじゃ!」
魔王は見つけた瞬間、その方向に一直線に走っていった。勇者は一瞬だけだが魔王の顔が見えた。その時の顔は少し焦っているようにも見えたから急いでついていった。
「ここじゃ」
「ここって確か・・・」
「なるほどな。演奏会の場所ってわけか」
魔王について止まった場所は先程まで勇者たちがいた唐突に現れた森の前だった。
「この中なのか?」
「そうじゃの。入るがお主、心の準備は出来ておるか?」
その時の魔王の顔はいつになく真面目な顔だった。それを意味するのはこれから何かある事。
「ごめん、無理。僕じゃ足でまといになると思うから」
「そうか。ならついてくるのはやめときな」
魔王は勇者の答えを聞くと少し寂しそうな声で答えた。
「だから、お前達が安全に帰って来れるように準備をする!」
その言葉を聞いた瞬間、魔王の顔に笑みが零れた。
「カカッ!そうかそうか。それは楽しみじゃの。じゃ、行ってくる」
「絶対帰ってこいよ」
「当たり前じゃ!」
魔王はそう言い森の中に走って入っていった。その背中が消えるまで勇者は見ており見えなくなると村の方に向かって歩き出した
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

妻がヌードモデルになる日

矢木羽研
大衆娯楽
男性画家のヌードモデルになりたい。妻にそう切り出された夫の動揺と受容を書いてみました。

隣の人妻としているいけないこと

ヘロディア
恋愛
主人公は、隣人である人妻と浮気している。単なる隣人に過ぎなかったのが、いつからか惹かれ、見事に関係を築いてしまったのだ。 そして、人妻と付き合うスリル、その妖艶な容姿を自分のものにした優越感を得て、彼が自惚れるには十分だった。 しかし、そんな日々もいつかは終わる。ある日、ホテルで彼女と二人きりで行為を進める中、主人公は彼女の着物にGPSを発見する。 彼女の夫がしかけたものと思われ…

隣の席の女の子がエッチだったのでおっぱい揉んでみたら発情されました

ねんごろ
恋愛
隣の女の子がエッチすぎて、思わず授業中に胸を揉んでしまったら…… という、とんでもないお話を書きました。 ぜひ読んでください。

勝負に勝ったので委員長におっぱいを見せてもらった

矢木羽研
青春
優等生の委員長と「勝ったほうが言うことを聞く」という賭けをしたので、「おっぱい見せて」と頼んでみたら……青春寸止めストーリー。

処理中です...