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やっと会えた。
しおりを挟む転移魔法を使い、エミルの幻覚を抱き締め自室のベッドにダイブすると幻覚が持ってたであろうギルドの依頼書が周辺に散乱する。
我ながら想像力が逞しい。芸が細かい幻覚である。
「エミル、エミルゥ~。うわぁぁぁ、っく・・・ぅぅぅ、エミルゥ。」
胸に抱き締めたエミルの幻覚がムグムグと胸元で声を上げる。離れたいと言わんばかりにお腹を押されるけれど離すなんて出来ない。
泣きながら彼を抱き締めていると胸に埋めた顔をプハっと出し、暴れるのを止めてくれた。
ポロポロと溢れる涙を止められなくて。
幻覚でも会えて嬉しくて、とても嬉しくて。
幻覚を見るほど疲れでヤバいのかもしれないけれど、今の状況には素直に喜びしかない。
きっと幻覚も馬車馬の如く頑張った自分へのご褒美だ。
そんな私をエミルの幻覚が無言で見つめる。幻覚もビックリの泣き顔を披露しているのだろう。だけど泣くなと言われて止められるものでもない。
「・・・失恋、したのですか?」
静かな落ち着いた声が耳に届く。
その音が届いただけで幸せで胸がいっぱいになりそうだ。泣いていて声が思うように出なくて、コクコクと頷くだけにとどまった。
するとエミルは私の涙を指で拭ってくれる。サービスが充実している。
「辛い・・・ですよね?」
少しだけ体を離すと頷きエミルの胸元に顔を埋める。さっきまで居たギルドの香りがした。
沢山の依頼が記される紙とインクの匂い。冒険者へ売る為の薬品や香草の香り。その中に忘れかけていたエミルの香りも感じ取れてドキドキと鼓動が加速していく。
そう、確かにこんな香りだった気がする。
依頼書を一緒に見て、この依頼主は信用出来ないとか、書類の矛盾点とか話して肩のぶつかるほどの距離で座ったあの時感じた香り。
そして、その香りの隣でドクドクと響く自分のものではない早い鼓動。
「僕でも、貴方を慰めて差し上げられるでしょうか。」
幻覚は本当に都合の良い事を言う。疲労から来たものなのか、それとも討伐してきた魔物の何かしらの毒が効いて来たのか・・・。そんなのどうでも良い。
「貴方しか慰めにならないわ。」
泣きながら訴えると彼の目が驚いた様に見開き、スッと細められる。
これは初めて見る仕草だ。だけどそうか、彼の事なんて知らない事ばかりなのだから。妄想にも限界というものがある。これらの仕草は偽物だろうけど、今はそれを本物と思えば良い。
彼の頬に指先を滑らせると少しカサついた彼の唇に自分の唇を押し付けた。
柔らかい。押し付けただけだから甘酸っぱい味とかしないのだけど体が痺れる様なフワフワするような。
ゆっくりと唇を離すとほんのり頬を赤くして眉間にシワの寄る彼の顔。
「エミル」
「はい。」
名前を呼べば返事をしてくれる。これがどれ程嬉しい事か。
そして案の定、私の欲求が素直に顔を出す。
「貴方の全てを感じたい。」
少し丸みのある輪郭に指先を滑らせて首筋に流れる。
彼の服に手をかけ、ボタンをプツリと外していくけど、無抵抗な所がやはり幻覚なのかと実感して悲しくなる。急にこんな所へ連れて来られて、衣服を脱がされるのに抵抗しないなんて現実味が無い。
だけど今の私はそれにすがらないと壊れてしまいそうなんだ。そう言い訳して衣服の奥から現れた彼の白い肌にキスを落とす。
時折食むように、吸い付く様に。鎖骨の窪みから思っていたよりは厚い胸板へ。
「ちゅっ、ん・・・ちゅっ。エミル。」
「っ、ルシ、ア。ふふ、くすぐったいです。」
エミルが少し笑った。
可愛い。
ほどほどの筋肉でしなやかに作られたその体に手を這わせ、唇で感じる。最高。そのまま腹筋の溝を撫で、可愛いおへそから下へ。
ベルトに手をかけると今まで無抵抗だったエミルに手を捕まれた。
「ま、待って下さい。仕事からそのままでお風呂に入って無くて・・・。」
体臭を気にするエミル。ショタコンの妄想力をなめてた。いや、自分の無限の可能性をなめていたと言うべきか。なんていじらしいエミル。
確かに私も討伐が終わってすぐにギルドへ来たんだった。それならばとエミルを抱き衣服をベッドに置き去りにして浴室へ魔法で移動した。
「うわぁ!」
一糸纏わぬ姿の私達は浴槽へポチャンと落ちる。ちょうど良い湯加減でお湯の張られたそこに突然落ちるのだからとても驚いただろう。
だけど溺れないように私が下で受け止め抱き込んでいるから安心して欲しい。
瞬間的に人物のみ移動し、湯船にお湯を出現させる、これもS級冒険者の成せる技である。全裸で彼を抱え込むと肌の温かさを直に全身で感じ幸せな気分だ。
「エミル、私が全部洗って上げるわ。」
「一人で洗えますから!」
ちゃぷん、と少しの動作でも音が響く浴槽で大量の泡を作りお互いを覆っていく。
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