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参加出来ない話し合い。
しおりを挟む妖精王に指定されたのは腹黒王子の宿泊する部屋。宿泊先は私達の居た所から少し離れた栄えた街にあり、当たり前だけれど最高ランクの部屋で警備も厳重。部屋へと続く廊下には近衛騎士達が立っている。そんな空間をスヴァインさんの後ろを歩けばすんなり通して貰えた。
(一瞬、私は見えないから、と思ったけど今は見えるんですよね?)
そして一人、見覚えのある人物が出てきた。
「よぉ、スヴァイン・・・あれ?後ろに居るのは?・・・マーリットちゃん!?」
「ご無沙汰しております。」
私が彼の後ろから顔を出して国の作法で礼をすると驚きつつも嬉しそうに表情を緩めてくれる。この人には見えない時にも腹黒王子の婚約者だった時にもチラッと会った事がある。
「そうか!そうか!急いで飛び出したかと思えば、良かったなスヴァイン!本当にすごいぞ、お前は!」
「あぁ。」
「抱っこしている子供は?もしかして・・・」
「・・・」
もしかして?と嬉しそうに聞く団長だけれど、スヴァインさんは何も言わない。何で自分の子供だと言わないのだろう?そんな彼の反応を見て団長がもしかすると、まずい事を聞いたか!?と表情を曇らせる。
(そういえば、彼に貴方の子だよ!とか話していなかった!!いやいや誤解されては困る!婚約者居るのに他人と子供を作る人とか思われたら困る!)
団長とスヴァインさん二人の会話だけれど焦りからつい口を挟んでしまった。
「スヴァインさんと私の子です。2才の男の子でヴァンリットと言います。」
「そうかそうか!良かった。まずい事を聞いたかと思ったじゃないか。髪色も綺麗な顔立ちもスヴァインそっくりだ。・・・それで、何をそんな不機嫌なんだ。せっかく見つけられたと言うのに。」
・・・
暫くの沈黙の後に彼が重い口を開いた。
「我が子を見守ってきた貴方なら分かるはずだ。2才になる我が子の存在すら知らなかった事が、どうしようもなく悔しい。」
「あー、そういう事か。まぁ、分かるが今はその事より再会したマーリットちゃんにそんな顔させてどうすんだって思うんだが?」
・・・
私、どんな顔してるのだろう?と顔をペタリと触るけれど自分では分からなかった。彼らを見れば私に視線を向けていていて、急に緊張してハハッと笑って見せる。
「すまない、マーリット。」
「いえ、私は大丈夫ですよ?」
これはいけない、ぎこちなく返してしまった。すると、殿下の部屋を目前にしてヴァンリットをこちらに寄越して来た。慌てて眠る息子を受けとる。
「疲れているだろう、部屋を用意させるから二人は寝ているといい。明日、オパールの処罰について伝えよう。」
明日・・・
それは、私はオパールの処罰を決める話し合いには参加できないと言う事。眠るヴァンリットを抱えるのを確認すると、私を残して殿下の部屋に入室許可を得ようとノックする形をとる。
「スヴァインさん・・・。」
やっと一言絞り出し、顔色を伺うと案の定視線は冷たい。私が何を言おうとしているか分かっているのかも知れない。
(こ、こわぁ。)
「おい、スヴァイン?」
「何だ。」
騎士団長さんが話掛けて視線が私から団長さんへ移り、やっとの思いで言葉を続けた。
「お、オパールは・・・昔の私に似ている、と、思ったんです。」
「・・・」
「確かに悪い事をしました。だけど・・・もし、居なくなってしまったらヴァンリットも・・・悲しみます。」
その言葉に目を細め、眼光が鋭くなる。
「い、いま、は。本当に。良い子に、なったと信じていて・・・い、生きて償える、方法を、わた、私は、き、希望。します。」
震えながらヴァンリットを抱き締めて頭を下げた。すると重いずっしりとした足取りで誰かが前に立った事に気がつき、顔を上げると団長さんが居た。
「大丈夫、言いたいことは伝わったよ。今から部屋に案内させる。ゆっくり休むと良い。」
「・・・はい。」
伝わっただろうか。だけど、スヴァインさんが許せないとする事を改めてしてしまった。この3年間、オパールは見えない私の代わりに力になってくれた。このまま味方の居ない中でオパールが処刑されたら・・・そう思うと言わなければと思った。
だけど、その選択はスヴァインさんの気持ちを無視するものだ。
(嫌われたでしょうか。)
さっきの甘い再会と冷たい視線が脳裏に焼き付く。他の騎士に案内されて広い部屋のふかふかベッドにヴァンリットを寝かせると、寝顔を見ながらサラサラの髪を撫でた。
「ヴァンリット、今日は凄い日ですね。」
小さな声で呟けば、撫でる手に頬をすり寄せる様に寝返りをうつ。
可愛い。
もし、ヴァンリットを取り上げられてしまったら・・・そう考えるとどれだけ辛いか想像がつく。
もし、スヴァインさんが3年も女性と旅に出ていたとしたら・・・それを後から知ったら・・・嫉妬でどうにかなりそうだ。そして彼女が彼を愛してるとしたら。
もし、生きてるか死ぬかも分からず彼がいなくなってしまったら。
同様の事をオパールはスヴァインさんにして・・・。
「あぁ~。私は最低だ。どうしたら・・・。」
頭の中は、スヴァインさんの気持ちに寄り添えなかった罪悪感と、それでも生まれ変わり良いドラゴンとなった家族の様な存在がどうなってしまうのか・・・という不安でぐちゃぐちゃになっていた。
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