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ラグラ+ネム+メメ編
神対応。
しおりを挟むラグラとメメに謝罪し、やっぱり生きていて欲しいと話した。
〈ネムがそう思う様に俺たちだってネムに生きていて欲しい。自分のやらかした事の尻拭いを別の誰かの寿命削ってまでするなんて嫌に決まってんだろ。〉
「うっ・・・。」
「ネムさんの気持ちは嬉しいけど、こればっかりはね。」
アーシェリアに力を貰っても時間が足りない。
自分の寿命を分けるのもダメ。
騎士の血に混じったお母様の力は魔物を人に戻す事は出来そうだけど寿命は無理そう。
アタシじゃない創造の力を持つ誰かが居たら土下座してでも頼むのに。
考える事に集中しながら特に意味もなくソファから立ち、数歩前に出ると何かが漏れて太ももを伝う。さっきの情事の証である白い体液。
「1つ可能性あるじゃん!!」
考え込んでたアタシが急に声を出すからラグラが驚いている。
「ラグラ、メメ。私達の子供作ったら可能性が有るじゃん!!」
〈どうしてそうなった。子作りには乗り気だが。〉
「えっと・・・詳しく話を聞いても?」
テンションの上がったアタシに聞く姿勢を見せてくれる二人。
「アタシの種族は寿命伸ばすのは勿論、魂や生きる物を作り出す事ができるんだけど、今の私はアーシェリアから力を分けて貰わないと自分の力を回復出来ないんだよね。
でもアーシェリアから貰う力だけだとラグラの寿命まで時間が足りない。
だったら私の力を引き継いだ者が現れればいいんだよ。それが私達の子供って事。」
〈魂や生きる物を作れる魔物なんて聞いた事ないが。〉
「アタシ今は魔物じゃないから。お母様に魔物に変えられてただけでソレ無くなったから。」
〈クソ親じゃねーか。〉
「うちの種族じゃそんなんは日常茶飯事じゃん。」
「ネムさん、苦労してきたんだね。」
ラグラに父親スイッチが入ったみたいで抱き締めてくれた。嬉しい。
「今の私が無理でも、能力を引き継いだ子供なら可能って事。」
「とは言っても、寿命はさっきので8日に増えただけで新しい命が育つのを待つには短すぎるんじゃないか?」
「私達の種族は相性の良い強い種さえ届けば1日で力を持って成長するから。運が良ければ間に合う。」
〈運が良ければ、ね。良いんじゃない?試してみても。〉
「もし成功したとして、その子に何か悪い事は無いんだね?」
「無い。この世界の人間が魔力を使うのと同じで休めばすぐ回復する。だけど、相当優秀じゃないと命が芽生えたばかりで寿命回復は出来ないんだけどさ。」
ラグラがうーんと悩む。
「何が不満じゃん。」
「いや、寿命の為に我が子を望むのは気が引けるなと感じてね。」
〈お前は頭かてーな。ネムとの子供なら欲しいだろ。例え寿命回復の素養が無くても嬉しいじゃんか。〉
「だけど、その場合私は居ないんだ。子供やネムさんの負担が増すだけじゃないか。
メメだって育児は大変だと身を持って知っているだろ?」
〈そーだけど。俺らが居なくてもルナスやアーシェリアだってネムの力になってくれるんじゃないか?〉
「最初から人を当てにしたらダメだ。子供が可愛いからこそ環境を整えるのは親の仕事さ。」
ラグラは多くの人を見てきたからこそ言っているのだと思う。だけど諦める訳にはいかない。
「アタシはこの事が無くてもラグラとメメの子供欲しい。
アタシ一人ででも育てる覚悟はしてる。それに奇跡が起こるかもしれないじゃん。」
〈何だかんだ言っといて中に出してたしな。〉
「あれは人形に憑いてるだけだと思っていたからで・・・。」
少し頬を赤らめて視線を逸らしてから、はぁ、とため息をつき真剣な表情でこちらを見た。
「本気なんだね?」
「本気。結果どうなったとしても絶対に子供を幸せにする。ラグラに後悔させない。」
「・・・分かった。私も努力しよう。」
ラグラはアタシの体を抱き寄せると額にキスをしてくれた。
新たに生まれた希望に願いを込めて。
◆◆◆◆
ラグラに残された寿命が残り2日となった日。
この日はルナスが第一王子に奪われない様にとアーシェリアに頼まれた日だった。
そんな事はあり得ないだろうけどルナスとアーシェリアは大切な存在なのでアタシもメメも協力はした。
騒がしく物事が過ぎて行き、アーシェリアが倒れたのが心配だったけどラグラが付いて行ったから仕方なく第一王子の見張りをする。
見れば見る程お母様の拘りを感じる奴だ。
コイツと新人騎士はどんなに殺そうとしても寿命以外で殺なない運命を持っている。
コイツらとの戦闘だけは避けないといけない。
必ず負けるのだから。まぁ戦う機会なんて無いだろうけど・・・。
「ネムさん、今戻りました。殿下連れて行きますね。」
そう言うルナスはフワフワ笑顔で幸せです!って顔をしている。
「その顔、アーシェリアは大丈夫だったって事?」
「はい、初期の悪阻とストレスで倒れたみたいです。だからストレスの元を取り除こうと思って。ちょっと行って来ますね。」
待て待て待て!!
そのまま担いで行ったら完全に城の奴らに囲まれるし!!戦いになるし!!
城には第一王子同様にお母様の拘り溢れる人物多いんだって!!
少しはお母様の気配があるとは言え戦いになったら死ぬって。
「はぁ、アタシも行くじゃん。」
その言葉も聞こえないかの様に上の空でフワフワのルナス。
死んだらアーシェリアもラグラとメメも悲しむんだぞ。仕方ないから守ってあげるよ。
そのルナスの表情を見ながら、子供が出来たらラグラとメメもこんなに喜んでくれるのだろうかと不安と期待でいっぱいになった。
だけど、そんな気持ちを押し込め戦闘に発展しないように周辺の騎士や魔術師を眠らせて回る。
傀儡師だけは唯一戦闘に発展し、冷や汗が出たけどなんとかなった。
本当に危なっかしい奴だ。
◆◆◆
疲れたから動けなくなる前に人形を置いてアーシェリアの所に戻った。
相変わらず温かい。そして今まで気にしてなかったけど耳を澄ませると確かに小さな心音が聞こえた。
「君はアーシェリアを選ぶなんて見る目あるじゃん。」
トクトクトクと可愛らしい心音。
「アタシには・・・」
何かを言おうと思ってたけど言葉が続かなかった。
だけど出る言葉はきっと自分を傷つける言葉だと思って言わない事にする。
頭を左右にブンブン振ってからはぁ、と息を吐く。
「君の父親。やたら強いけど少し危なっかしいね。だけど守ってやったから安心して元気に育つじゃん。」
小さくて元気な心音に安心しながらオヤスミーと寝ると、何か暖かい手が頭を撫でてくれた気がした。
◆◆◆
朝目覚めると、一目散にラグラとメメの元に向かう。今日で寿命が尽きる。一秒でも長く一緒に、そして何か打開策を考えたい。
最後の一秒まで諦めたくない。
研究室のドアを開けるとそこには早朝から何やら出かける準備をする姿があった。
「もう仕事?早いじゃん。」
「あぁ、アーシェリアさんの所にね。ルナスが付きっきりで看病しているから、安心させる為にも具合を見に行こうと思ってね。」
「ふーん・・・そっか。」
「あぁ。」
「・・・ラグラ、メメ。」
「なんだい?」
〈何だよ。湿っぽい顔すんな。〉
何も言えず、ただ胸に顔を埋めて抱き締める。
温かい。
ラグラの落ち着く香り。
大きな手が優しく背を撫でた。
「ネムさん、大丈夫だよ。」
「大丈夫じゃない。」
〈可愛い顔が見えないんだけど?〉
「今の顔は可愛くない。」
〈今日が最後かも知れないのに見せてくれないなんて意地悪だな?〉
「メメ、そう言うな。可愛い事に変わらないだろ?」
〈まーな。〉
「ぅ・・・バカ。」
頭をポンポンと触れる手が、息遣いが。何もかもがもうダメだった。
今からでもお母様に土下座しようか。
でもあのお母様の前に姿を見せたら即消されるだろう。そもそも行く手段がない。
誰か、誰でも良いからラグラとメメを助けて欲しい。元の寿命に戻して欲しい。
「・・・もっと生きたかったと思える人生を歩めたのは幸せな事だよ。」
〈そうだな。自慢の息子は結婚。孫に可愛い恋人もいるし?〉
「きっと、きっとアタシ達の子供にも会えたじゃん。」
「・・・そうだね。」
〈・・・〉
「診察が終わったらすぐにネムの所に戻るよ。それからはずっと一緒に居よう。」
ポンポンと優しく頭を撫でてくれる手。
ラグラとメメの顔が見れなかった。だけど見なければ後悔する。
震える指先になんとか力を入れて見上げる。
するとそこにはメメが居た。
「ネム、愛してる。」
「・・・私の方が愛してるし。」
メメの瞳からは涙が溢れていた。
ホント、メメはすぐ泣くんだから。
アタシが言えた事じゃないけど。
〈おとーさま泣いてる、イタイイタイ?〉
幼い声に二人でバッと顔を上げた。
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