19 / 44
エッチな人形計画
しおりを挟む入室してからのココはとても上機嫌。視界に入った人形の虜になった様子だった。
「絶対売れる!!人形を売る為の良い脚本を書いて見せる!」
ココはローエンスコット様が作られた作品を高値で売る構想を練っている。
というのも、ローエンスコット様は傀儡が得意な魔術師で人形も作れるけど、仕事が総じて少ない為に人形を作る資金繰りが難しいそうだ。お金の無い若い芸術家という感じだろうか。
人がやると危ない仕事を傀儡師が人形を使って行うのが基本的な仕事だそうだけど、結局ローエンスコット様自身も人形が見える範囲に居なくてはいけないから仕事一つ一つの危険度も高い。必要とされる仕事はあれど、仕事量は少なく状況で王城勤務にしてはお給料も少なめ、衣食住には困らないけど作品を作る素材を買うのが難しいと。
そこでココがこんなに美しいのに勿体無い!!と舞台のグッズとして等身大の美しい男女の人形を売りだそうと提案したのだ。
「貴族が奮発するくらいの価格にしよう。」
「・・・売れるのか?」
「売れる!貴族は高価な物を所有する事もステータス。
そして人形を買った人はどこまで作られているのか?って気になり服の隙間から中を覗くじゃない?もう覗いたら最後よ!!
息を飲むほどの美しい体に男女問わず欲にまみれた狼にしてしまう。
きっと裏では噂で一気に広まる。部屋に飾って置いてもこの舞台が好きだからって言えば妻や夫にはバレない。口実も完璧なラブドール計画。」
言っちゃったよ。ラブドールって言っちゃったよ。
「舞台のグッズなら一体あれば同様の物を簡単に量産出来る魔術式を用意しておきましょう。素材はその分必要ですが。」
「ウォルズマー様ありがとうございます。」
どんどん話が進んでいる。
皆、私を置いて話を進めすぎじゃない?
「そうか、分かった。」
ローエンスコット様が頷いた。これが成功して報酬が入ったら好きな作品沢山作れるといいね。
「ウォルズマー様、引き続き素材を・・・。」
「勿論。こちらの依頼にも関わりますから。」
ここで一旦話は終わり、仕事の話に入るからと私とココは外へ出た。
「やっぱりアーシェリアも転生者なんだね。ウォルズマー様を助けるつもりで近づいたの?」
私の研究室に着きドアを閉めた途端にココに聞かれる。
「転生者?ルナスを助けるって・・・?」
「あれ?私が使う用語とかアッサリ受け入れるものだから私と一緒で前世の記憶が有るのかと思ったけど違うの?」
そういえば、移動中もオタとか推しとかいうワードが出てたけど何となく意味は分かった。ルナスやローエンスコット様は「それはどういう意味の言葉ですか?」と聞き返していた気がする。
「確かにその言葉がどんな事を指すかは分かります。美醜の感覚も何となく前世のものだとは思うのですが・・・だけど何か覚えてるかと言われるとそうではありません。」
「そうなの、じゃあ私とは違うのね。いや、薔薇アマって聞いたら思い出したりするのかな?『薔薇と甘い蜜のエデン』ってこの国が舞台の作品なんだけど。」
お茶の用意をしながら、うーんと考えてみて見るけど何も思い浮かばない。
「分かりません、どんなお話なんですか?」
「いーよ!!話しちゃうよ!大好きなBLゲーだったんだー」
BL・・・B、L。
・・・BL!?
「ま、まさかルナスが攻略対象に!?」
「あ、その辺の用語も分かるなら話しやすいなー!でもウォルズマー様は攻略対象じゃなくて、脇役的なキャラクターだったけど、第一王子のせいで人生狂わされる1人なのよ。」
「え!?第一!?ちょっ、え!?」
紅茶を持つ手がカタカタと震えた。
「第一王子は未来の国王としては聡明で完璧だけど男女お構い無しに手を出すって設定でね。
酔うと誰かれ構わず愛を囁いて、ベッドインよ。そんなクズが新人騎士の主人公に会って一途になるってのが見所なの。」
「王子はさておき、ルナスは!?まさか酔った勢いで襲われてしまうの!?」
「そう!一度王子が酔った勢いで彼の研究室に行くのよ、恋人の様に愛される事を知ってしまった彼は、自分をまた愛してくれと王子にすがるのだけど、その時には主人公に惹かれはじめていてね。誰かれ構わずな王子が初めて誘いを断るの。その場面を主人公が目撃してねー。キュンとするのよ!!」
なんて当て馬だ!!!!
「だけど断られたウォルズマー様は心がひどく乱れてしまって、魔力暴走を起こしてしまうの。その暴走に王子が巻き込まれそうになった所を主人公が助ける!」
二人の愛を深める障害の1つにされてる!!
「その後、彼は出てこないんだけど魔力暴走を起こして大きな被害を出した人の末路は良いものじゃないって想像つくよね。」
「どうしましょう!?助けなきゃ!!」
「いや、もうアーシェリアの愛で満たされてるし・・・アーシェリア?」
ココが私の様子を伺っているけど私はそれどころじゃない。カタカタと震える手を抑えながら、雰囲気を悪くしたくないので話題を変える事に。
「えっと、ココはその薔薇アマ?の事を知って誰かを助けに?」
「いーや、誰かを助けるつもりはなかったの。誰か死ぬような物語でも無いし、他人の恋路をどーこーしようとは思わないからね。主人公に転生した訳でもないし。だけどさ、今日ねローエンスコット様に会って少し気持ちが変わったかな。」
それは好きと言うやつで!?
「あの人の作品もっと見たいからパトロンになるわ。神クリエイターに貢ぐわ。」
そういう好きだった。イケメンなら好きになるなんて安直な事は無いか。
だけど誰かを助けるかっていう流れで彼の名前が出るからには何か起こるのかもしれない。それはプライベートな事だから詳しくは聞かないでおこう。
◆◆◆◆◆
それから私達は『傾国の美女と醜い魔術師』の脚本と美男美女人形を発売出来そうな物語を雑談程度にワイワイ話して解散したのだった。
昼食を準備して皆を待つ。
だけど1人になると余計に考えてしまう。
第一王子とルナスが・・・。
婚約候補と上手く行かず、ストレスでうっかり飲み過ぎて研究室へ行き、ルナスを襲うという流れだとかココが言っていた。終始、アーシェリアが居るから大丈夫って慰めてくれたけど。
よく考えれば、赤子の時に命を救われ自分の醜さを気にせず長年接してくれた第一王子。
一方で、思い出と言えばケーキ両手に泣く間抜けだった私。
王子に迫られた時、ルナスの心がどっちに傾くって聞かれたら勝てる気がしない。
そろそろ第一王子の名前呼んでやろうかと思ってたけど私は止めた。
「はぁ・・・」
ライバルは王子。
格が違いすぎる。
その後、平常心を装い無事に皆の昼食準備と配膳を終え、ルナスの人形作りの手伝いへ向かう。
ノックし、返事を聞いてから研究室に入れば椅子が用意されていて「ここに座って下さい」と誘導される。お医者さんに診察して貰う時みたいだ。
これから何を手伝うのだろうと真剣に向き合い座ると・・・
「少しお体触らせて頂きますね。」
ルナスからアッサリそう言われるのだった。
10
お気に入りに追加
138
あなたにおすすめの小説
美醜逆転異世界で、非モテなのに前向きな騎士様が素敵です
花野はる
恋愛
先祖返りで醜い容貌に生まれてしまったセドリック・ローランド、18歳は非モテの騎士副団長。
けれども曽祖父が同じ醜さでありながら、愛する人と幸せな一生を送ったと祖父から聞いて育ったセドリックは、顔を隠すことなく前向きに希望を持って生きている。けれどやはりこの世界の女性からは忌み嫌われ、中身を見ようとしてくれる人はいない。
そんな中、セドリックの元に異世界の稀人がやって来た!外見はこんなでも、中身で勝負し、専属護衛になりたいと頑張るセドリックだが……。
醜いイケメン騎士とぽっちゃり喪女のラブストーリーです。
多分短い話になると思われます。
サクサク読めるように、一話ずつを短めにしてみました。
今夜は帰さない~憧れの騎士団長と濃厚な一夜を
澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ラウニは騎士団で働く事務官である。
そんな彼女が仕事で第五騎士団団長であるオリベルの執務室を訪ねると、彼の姿はなかった。
だが隣の部屋からは、彼が苦しそうに呻いている声が聞こえてきた。
そんな彼を助けようと隣室へと続く扉を開けたラウニが目にしたのは――。
お腹の子と一緒に逃げたところ、結局お腹の子の父親に捕まりました。
下菊みこと
恋愛
逃げたけど逃げ切れなかったお話。
またはチャラ男だと思ってたらヤンデレだったお話。
あるいは今度こそ幸せ家族になるお話。
ご都合主義の多分ハッピーエンド?
小説家になろう様でも投稿しています。
愛する殿下の為に身を引いたのに…なぜかヤンデレ化した殿下に囚われてしまいました
Karamimi
恋愛
公爵令嬢のレティシアは、愛する婚約者で王太子のリアムとの結婚を約1年後に控え、毎日幸せな生活を送っていた。
そんな幸せ絶頂の中、両親が馬車の事故で命を落としてしまう。大好きな両親を失い、悲しみに暮れるレティシアを心配したリアムによって、王宮で生活する事になる。
相変わらず自分を大切にしてくれるリアムによって、少しずつ元気を取り戻していくレティシア。そんな中、たまたま王宮で貴族たちが話をしているのを聞いてしまう。その内容と言うのが、そもそもリアムはレティシアの父からの結婚の申し出を断る事が出来ず、仕方なくレティシアと婚約したという事。
トンプソン公爵がいなくなった今、本来婚約する予定だったガルシア侯爵家の、ミランダとの婚約を考えていると言う事。でも心優しいリアムは、その事をレティシアに言い出せずに悩んでいると言う、レティシアにとって衝撃的な内容だった。
あまりのショックに、フラフラと歩くレティシアの目に飛び込んできたのは、楽しそうにお茶をする、リアムとミランダの姿だった。ミランダの髪を優しく撫でるリアムを見た瞬間、先ほど貴族が話していた事が本当だったと理解する。
ずっと自分を支えてくれたリアム。大好きなリアムの為、身を引く事を決意。それと同時に、国を出る準備を始めるレティシア。
そして1ヶ月後、大好きなリアムの為、自ら王宮を後にしたレティシアだったが…
追記:ヒーローが物凄く気持ち悪いです。
今更ですが、閲覧の際はご注意ください。
イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?
すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。
翔馬「俺、チャーハン。」
宏斗「俺もー。」
航平「俺、から揚げつけてー。」
優弥「俺はスープ付き。」
みんなガタイがよく、男前。
ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」
慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。
終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。
ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」
保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。
私は子供と一緒に・・・暮らしてる。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
翔馬「おいおい嘘だろ?」
宏斗「子供・・・いたんだ・・。」
航平「いくつん時の子だよ・・・・。」
優弥「マジか・・・。」
消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。
太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。
「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」
「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」
※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。
※感想やコメントは受け付けることができません。
メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。
楽しんでいただけたら嬉しく思います。
ただ貴方の傍にいたい〜醜いイケメン騎士と異世界の稀人
花野はる
恋愛
日本で暮らす相川花純は、成人の思い出として、振袖姿を残そうと写真館へやって来た。
そこで着飾り、いざ撮影室へ足を踏み入れたら異世界へ転移した。
森の中で困っていると、仮面の騎士が助けてくれた。その騎士は騎士団の団長様で、すごく素敵なのに醜くて仮面を被っていると言う。
孤独な騎士と異世界でひとりぼっちになった花純の一途な恋愛ストーリー。
初投稿です。よろしくお願いします。
婚約者が巨乳好きだと知ったので、お義兄様に胸を大きくしてもらいます。
鯖
恋愛
可憐な見た目とは裏腹に、突っ走りがちな令嬢のパトリシア。婚約者のフィリップが、巨乳じゃないと女として見れない、と話しているのを聞いてしまう。
パトリシアは、小さい頃に両親を亡くし、母の弟である伯爵家で、本当の娘の様に育てられた。お世話になった家族の為にも、幸せな結婚生活を送らねばならないと、兄の様に慕っているアレックスに、あるお願いをしに行く。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる